現場パニック!「ハムスター走り」でセット崩壊
ちくわの二つ目の仕事は、子ども向けバラエティ番組の収録だった。
テーマは「いろんな動物とふれあおう」。
いや、ちくわはもう動物じゃなくて人間なんだけど、どうしても動物扱いされがち。
スタジオに着くなり、ディレクターが明るく言った。
「今日は子どもたちと一緒に、簡単な障害物コースを走ってもらいます!」
「はしる?わたし、走れる!」
ちくわ、やたらとやる気。
ただ、私はもう知っている。
ちくわが走る=何か起きる。
リハーサルが始まり、コースを説明される。
トンネルをくぐり、ミニハードルを越え、最後にゴールで笑顔のポーズ。
簡単。誰がやっても安全そうだった。
……普通の人間なら。
「ちくわさん、軽く走ってみてください」
スタッフが声をかける。
ちくわは胸を張り、
「まかせて!」
と言うと――
次の瞬間。
四つん這いになった。
「ち、ちくわ!?なんで四つん這い!?」
「はむすたー、はしるとき、このかたち!」
やめろ、スーツ破れる。
だが止める間もなく――
ちくわ、爆走。
めちゃくちゃ速い。
床をカカカカッとすごい音を立てて駆けていく。
完全にハムスター時代の全力疾走。
ディレクターが叫ぶ。
「待って待って!速い速い速い!!」
スタッフが網みたいなものを持って追いかける。
(なぜ網がある?)
そして問題はその先。
トンネルの入り口に頭から突っ込んだちくわは、
勢いのまま中を滑り抜け――
出口でセットに直撃。
ガンッ!!
トンネルの裏側のパネルが倒れ、
上に乗っていた小道具の木がバサァッと崩れ、
カメラマンが「うわっ!?」と飛び退く。
子どもたち「キャー!」
スタッフ「セットー!!」
ディレクター「止めてぇ!!」
混乱する現場の中で、ちくわがトンネルから顔を出した。
「ごーる……した……?」
全然してない。
私は頭を抱え、ディレクターは崩れた木を拾いながら深いため息。
しかし子どもたちの反応は意外にもポジティブだった。
「ちくわくん、はやーい!」
「ひとじゃないみたい!」
「もう一回やって!」
完全に“珍獣扱い”で人気。
ディレクターも苦笑しながら言った。
「……まあ、使える…っちゃ使える、かも?」
そしてその日の夜、SNSでは動画が流れた。
『四つん這いで猛ダッシュするスーツの男』
『人間やめてる動き』
『セット破壊してて草』
再生数は、ものすごい勢いで伸びていた。
ちくわ本人は、
「わたし、はしるの上手でよかった」
と満足げ。
いや、そうじゃない。
上手いけど違う。




