墓参りに行ってほしい
まず初めに、私は小説を制作するのが初心者なため、誤字脱字や言葉遣いが変な場面が多く目立ってしまうかもしれません。それに加え、まだ人生の多くを歩んでいないため、不適切な発言もあるかもしれません。そのことを、まず初めに謝罪しておきます。知識不足ですが、少し頑張って書いてみましたので、是非第1話、お読みくだされば幸いです!
いつもの夏休みになるはずだったのに。そう思いながら、照り輝く太陽を睨み、蝉の鳴き声が響く。目も耳もうるさい。
まるで、〇〇〇〇を否定しているかのように。
ここから、少年少女の普通でない夏休みが始まる。
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「暑いし、ここどこなのかわかんねぇし…もうまじサイアク!ほんとなんなんだよぉぉー!!」
茶髪で少し幼稚な少年―高橋遥斗は途方に暮れていた。
彼は迷子になっており、その場所は山であった。
そうこれは、――遭難というものだ。
彼は夏休み前の休みを利用して友人とその家族、そして自分の家族と山にキャンプに来ていた。
遥斗はあまり訪れることの無い山に興味深々で、色々なものを観察し、体験し、走り回り、その結果がこれだ。
「あんなに走り回るんじゃなかった…こんなんもう詰みだろぉー。泣いていい?てかもうないてるけどぉぉー!!」
高校生の男子とは思えないほど幼稚な彼は、その孤独さと過酷な状況に耐えきれず涙を流した。彼は家族達がいるであろうキャンプ場を目指し進んでいたが、携帯は使えず、右も左も分からないような彼は為す術がなかった。
「キャンプ場どこだよぉぉーー!!」
涙じみた声で必死に助けを求める。だがそれは無意味な行為であった。彼のいる場所は家族のいるキャンプ場からはだいぶ離れていた。キャンプ場を求め歩いていたが、逆方向に歩みを進めていたようだ。更に近くには急流の川があり、大声を出しても川音に遮られてしまう。まさに絶体絶命。下山する、という手もあるが、彼はキャンプ場に車で訪れており、そもそもの帰りの経路を知らないのであった。更に下山は疲労により、転倒や滑落などの事故が起こりやすいため、登り以上に注意が必要であると言えるだろう。だが彼はこれらの情報を一切知らない。登山に対し未知が多い彼は、愚かな行動も厭わなかった。
だが彼にも彼なりの勘というものが存在した。自分がキャンプ場を出て、迷子になるまでにかかった時間より、こうしてさまよっている時間の方が長いということに気がついたのだ。彼も逆の方向に歩みを進めているという疑念は抱いていた。だが、マイナスなことを考えながら足を進めるのは精神的にも体力的にも負担が大きい。そのため、不安を紛らわすための大声と、単純な知性が必要だった。
「はぁ…これ、逆じゃん…?」
その言葉は、声に出したくなかったものだ。これで選択肢は1つ減ったと思えば楽なのだが、現実は厳しく、自然の時間には制限があった。夏とは言えど、夜になればあたりは暗くなり、足元が見えなくなる。そうすれば進むことは困難となり、断念するしかなくなる。だが単純思考な彼でも山になんの生物がいるかぐらいは知っているはずだ。もし万が一、それらの生物に、ましてや夜に遭遇してしまったら、無傷で朝日は拝めないであろう。最悪、朝日すら拝めない。それに、最小限の荷物で飛び出してきた彼には、食料はもちろんのこと、水もあまりなかった。
携帯の時計が正常に動いていれば、日が沈み、当たりが見えなくなるまであと約3時間ほどだろうか。3時間で残り3つの選択肢のうち勘で1つを選び、足場の悪い山道を猛ダッシュで駆け巡るというものは、中々に決意が必要であった。下手をすれば転落死か獣に食われて死ぬか、3時間をドブに捨てることにもなる。いくら単純思考な彼でも、そんなリスクを犯してまでキャンプ場に戻ろうとは思わなかった。それに、彼の勘はあまりあてにならない。彼のとった行動は1つーー
「あと3時間ぐらいか…運が良ければ、無事に山の麓まで行ける、か?」
彼は下山を始めた。足場によく注意し、残り少ない時間を無駄にしないために、極力最短ルートを選び、体力を無駄に使わないよう努力しながら下山した。彼はひどく冷静であった。先程泣きわめいていた青年とは別人のように、落ち着いていた。そう。落ち着いていたのだ。遭難しながらも、自分の気持ちを上手く落ち着かせ、冷静に物事を考え行動していたのに…。彼は、相当運が悪かった。
「あぇっ…?!」
前日、雨でも降っていたのだろうか。地面がぬかるんでおり、足が滑った。瞬間、彼の身体には激痛が走った。
「い"っ!!?!っあ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁっっ!」
傷からじわりと生暖かい液体が溢れ出てくるのが分かる。彼は今までに感じたことの無い痛みに、悶え、苦しみ、抵抗をする。地面に広がる液体を見て、遥斗は察する。この出血量じゃ、下山は愚か、生きて帰れるかも怪しいところだ。傷を必死に抑えようとするが、それでもなお、液体の放出は止まらない。手には、生暖かい液体と、臓器の一部を触れているような感覚があって…
「あ"あ"ぁぁっ!ぐっぅ…っな、なん…」
その瞬間に、彼の命は途絶えた。
彼はただ、キャンプ場に帰りたかっただけだったのに。彼は何も悪くない。何も、悪くなかった。だから、運命は残酷なのだ。
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「はぁぁ?!なんで今回線落ちんだよ!めっちゃくちゃいいとこだったのに〜〜!!」
黒髪で、低いツインテールをした少し強気な少女―米盛そらはクーラーの効いた涼しい部屋で、テレビを睨んでいた。
彼女は自身の趣味の1つであるゲームを利用し、休日を過ごしていた。
だがその至福の時間は無念にも終わりを迎えてしまったようだ。
「はぁ〜ほんっとサイアク!あとワンゲームで終わるって言っちゃったのに〜!! 」
彼女は割と真面目らしく、母親との約束はちゃんと守るようだ。
ゲームを終え、やることが無くなったそらは何をするか少し考え、学校で使うノートが切れていた事を思い出し、買いに出かけた。
休日の午後だったため、とても混雑していた。彼女は少し寄り道をしながらも文房具が売っている場所へ向かった。向かっている最中に洋服屋の前を通った時に、ふと1つの服が目に止まった。それは、白いTシャツにバスケットボールのイラストが印刷されているものだった。そこでそらはふと思い出した。
(確か、もうすぐ遥斗誕生日だよな。練習用のTシャツ?が欲しいとかなんとか言ってたっけ。)
遥斗とそらは家が近く、親同士も仲が良かったので昔からよく遊んでいて、それは今も変わらぬことだった。仲のいい友達として、誕生日プレゼントの1つや2つ買ってあげるのがそらの中のポリシーだった。
(家近いから誕プレなんて何時でも渡せるし、どうせなら当日にでもあげようかな。夏休み中だし、ちょうどいいし。)
そう思い、誕生日プレゼントのTシャツとお目当てのノートを買い、そらは予定より少し遅く帰宅をした。
夜ご飯を食べ終わり、お風呂に入り、あとは寝るだけでのそらはベットに転がりながら携帯を眺めていると、ふと流れてきたニュースが気になった。
「森でキャンプをしていたら男子高校生が遭難し、行方不明に…熊に襲われた可能性もあるため、警察は引き続き調査を行っている…ってあれ、遥斗も確かキャンプしに行ってなかったっけか…?」
そのニュースの記事はやけに見覚えのある単語が多かった。少し不安な気持ちを抱えながらも記事を読み進めると…
「ふ〜ん…意外と遠いとこじゃん。なぁーんだ。多分、知らない人だよ。」
と、自分に言いかけた。記事に書いてあった場所と、そらが住んでいる場所とは、だいぶ距離があったのだ。事件の被害者が身内でないとわかった途端、そらは安堵した。
明日は1学期の修了式で午前中だけ学校があるため、そのままそらは眠りについた。
―翌朝、いってきますという声とともに、そらは家を出た。本来ならば学校に向かう途中、そらより少し遅れて家を出た遥斗が走って来るのだが、今日は学校につくまで姿を見なかった。その事に少々疑問を抱きながらも、そらは自分の教室に入り、席に座った。朝のホームルームになっても遥斗は現れなかった。
結局、その日遥斗は学校に来なかった。
遥斗は今まで学校を休むことがほとんどなかったため、遥斗が学校を休んだことに少し疑問を抱き、母親なら何か知っているかもと思い、そらは母親に遥斗について問いかけてみることにした。
「おかーさーん?今日遥斗学校来なかったんだけど、まだ帰ってきてないの?プリント渡しに行きたくないんだけどー。」
「……」
「?おかーさん?」
母はその問いかけの返答に窮する。
「そら。このことは遅かれ早かれ、言うつもりだったんだけど、遥斗くんとそらは昔からよく遊んでいたから、その…だいぶ、ショックを受けると思うの。それでも、ちゃんと聞いてくれる?」
その言葉を聞き、嫌な予感がした。
ニュースを見てしまった。
学校に遥斗が来なかった。
そして、今の母の言葉で確信した。
薄々気付いてはいたが、気付きたくなかった。
マイナスなことを考えていては、人生はうまく進まないのだから。
「…ちゃんと聞くよ。そんなに改まって、何?」
恐る恐る問いかけ、聞きたくない答えを求める。
「遥斗くん、キャンプ中に遭難しちゃったらしくて、まだ行方不明なんだって。」
「…ははっ!遭難とか、子供かよ…!」
「そら」
優しい母の、真剣な顔を見て、肩に力が入る。
「…あ、でもでも、山で遭難って言っても、死んじゃった訳じゃないでしょ?まだ見つかってないだけで、もしかしたらもう下山してるかも!たぶん、遥斗だし、無事だよ!」
「そうね。お母さんも…無事であると、祈っているわ。」
そこで母が"思っている"と口にしなかったのは、山で1人遭難することがどれほど辛く、苦しいものかを知っていたからであろう。
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人生を変える出来事というものは、なんの前触れもなく突然起こる。
彼女―米盛そらも、その被害者の1人である。
幼馴染が行方不明になり、生死は確認されていない。昔からの付き合いなのに、何も出来なく歯痒い思いをしているようだ。遥斗の為に、何かしてやりたい。一刻も早く、見つけてやりたい。そう思う彼女の祈りに答えるように、神様は高校生には重すぎる課題を課した。
夏休みに入り、年齢のせいで遥斗の捜索を断られたそらは、暇を持て余していた。日差しが強いのも気にせず、公園でアイスを頬張っていた。
その時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「そんなに勢いよく食ったら腹壊すってばー。つっても聞こえねーんだもんなー。あー暇暇ー。」
「…うぇっ?!」
一瞬思考が止まりつつも、勢いよく振り返った。なにせ、ここ最近聞きたかった声が急に聞こえたのだから。
「うわぁ、びっくりした。どした急に?不穏な風でも感じたかよ。」
少しいたずらに笑うその姿に、今まで入っていた肩の力が抜ける。
「はっ…なんだよ、いつ帰ってきてたの?行方不明になったーなんて聞いたから、心配しちゃったじゃん。」
緊張がほぐれ、そっと笑い返し、いつものように返答する。顔には見せないが、この何気ない会話にさえ幸せを感じることが出来るほど、そらは安堵していた。
「何言ってんだこいつ?暑さで狂ったんじゃね?かっわいそーに。死んだら俺が相手してやるからなー。」
「何言ってんだよ。死なないし、狂ってないし、てかほんと、いつ帰ってきたの?びっくりしたよ。」
「…あれ?俺、に言ってる?」
「お前以外誰がいんだよ。そっちこそ暑さで狂ったか?」
変な回答をする遥斗に対し、そらはまた笑いながらちょっかいをかける。
「は、?何お前、俺のこと見えてんの?声聞こえてんの??」
意味のわからないことを言う遥斗に困惑する。見えるも何も、目の前にいるし、聞こえるも何も、今こうして会話をしているのに。
「?ほんとに何言ってんの?見えるし聞こえるわ。」
「えっ、だって、俺…」
その声は震えていた。涙目になりながらも、遥斗はそこで黙った。ずっと真実を伝えたくてたまらなかったのに。
この先は、遥斗以外誰も知らない真実だ。親も、警察も知らないことだ。そんなことを高校生の女の子に伝えてしまっては、何かとても重いものを背負わせてしまう気がしたから。
「だって、なに?そこまで言って言わないのはなしじゃない?」
相変わらずへらへらとしているそらに、なぜか胸が痛くなった。前はこうした会話が日常だったのに。
彼女に真実を伝えてしまっては、この何気ない会話が、生活が終わってしまう気がして…
「…言っても、引かない?態度、変えたりしない?俺のこと、恨まない?」
「引かないし変えないし恨まない。ほら、早くっ早くっ!」
「……」
女の子に悲しい思いをさせたくない。傷付いてほしくない。それも、"好きな女の子"なら、尚更。でも、それを上回るほどに、最後の最後まで彼女と過ごしたい。ずっと一緒に居たい。彼女に見送られて死にたい。
"彼女に見つけてほしい"
その思いの方が、もっとずっと大きかった。
「じゃあ、誰にも言わないでね。絶対に。色々抱え込ませることになると思うけど、それでも本当にいい?」
「いいってば。しつこい!何回も聞くなよ、もー。はーやーく!」
「あのな、俺ね、…多分死んでんの。」
その瞬間、今まで然程気にならなかった強い日差しと、響く蝉の鳴き声が一気に存在感を醸し出してきた。
第1話をお読み頂き、誠にありがとうございました!
たくさんの方にご満足いただける作品を制作できるよう頑張りますので、次回も期待していただければと思います!よろしくお願い致します。
※不快な思いをされた方がいらっしゃいましたら、遠慮なくお申し付けください。