おでかけ
テスト1週間前、自分の勉強にも涼香の勉強にも追い込みをかけないといけない、、のだが、、
「美味しいわねこれ」
「それな〜!」
「確かに美味しい、、じゃなくてなんでこうなってるんだ??」
家庭教師の日のはずなのだが何故か近くのデパートのフードコートに来ていた。
「しょうがないじゃん!涼香っちの家今日偉い人が沢山来るから家に入れないらしいよ!」
「それは聞いたんだけど、、なんでフードコートなんだよ、、もうちょい図書館とかなんかあっただろ」
「いや〜涼香っちがどうしてもWバーガーを食べたいって言うからさ!仕方なくって感じ?」
「言ってないわ」
とてもキラキラした顔の真凜を、涼香は軽くあしらった。
「食うのはいいけどちゃんと勉強もしてくれよ」
なんせテスト1週間前なので、ここで畳み込みをかけないとまずいのだ。しっかりと叩き込んでできる限り成績を上げないといけない。
「私はしっかりやってるわよ?」
「ほんとか?」
「はい!涼香っち、あ〜ん」
「、、、美味しいわね」
「やってねえじゃねえか」
「うるさいわね、そんなガミガミしてるとモテないわよ」
「いいわ別にモテなくて早く勉強してくれ」
涼香が刺さる言葉をかけてくるが、柊人はそれを回避した。
「あれ、柊人っち彼女いない感じ?」
「逆にいると思ったか??」
「いや〜だってこんなに可愛い涼香っちとずっと2人きりで勉強してるのに全然涼香っちに恋に落ちないな〜って、だから彼女でもいるのかなって!」
「俺は涼香に勉強を教えに行ってるんだ、いくらこいつが可愛くても、俺はこいつの成績をあげないといけないからな」
柊人は勉強に恋愛は不必要だと考えている。不純なことを考えていると勉強に集中出来ないし、邪魔な感情だと思ったからだ。
「か、可愛い!?」
柊人の突然の言葉に涼香は少し大きな声を出してしまった。
「今更だろ、それに可愛いは他の人からも言われてるから慣れてるだろ」
クラスの女子はその可愛さを羨ましがる人ばかりだし、それに惚れた男子がこぞって告白しに来るが、全て一刀両断されている。
「うるさいわね、、別に慣れてはないわ」
「柊人っちも涼香っちのこと可愛いって思うんだ!」
「まあそうだな、最初はクソ冷たいやつかと思ったが、意外と素直なやつでとてもギャップがあったな」
「それな!柊人っちも涼香っちの良さがわかってきたね!」
「あんた達うるさい!」
褒められすぎて顔を真っ赤にした涼香であった。
フードコートで軽く勉強(?)したあとは、今度はゲームセンターに来ていた。
「、、、、」
「、、、?何やってるんだ?」
涼香がクレーンゲームとにらめっこしていた。そこにあったのは可愛いクマのぬいぐるみだった。
「欲しいのか?」
「いや別に欲しくは、、」
「よし任せろ」
「柊人っち頑張れ〜」
柊人は100円を取り出しクレーンゲームを始めた。
(クレーンゲームは小さい頃に無限にやったからな)
小中で数々のクレーンゲームを荒らして来た柊人にとって、こんなのイージーゲームだった。
「ほらよ、やるよこれ」
そしてあっという間にクマのぬいぐるみをゲットした。
「すごいね柊人っち!ほんとに取っちゃった!」
「わ、悪いわ柊人が取ったのに、」
「お前のために取ったんだから俺が持っても意味ないだろ」
「わ、私のために、?」
「そりゃそうだろ」
「、、、、じゃあありがたくちょうだいするわ、」
「ん」
そうして涼香はぬいぐるみを大事に抱えたまま歩き出した。
「あ、涼香っち私トイレ行ってくるね!」
「おれも自販機で飲み物買いに行こうかな」
「じゃあ私ここで座って待ってるわね」
「おっけ〜」
そうしてそれぞれ3人別行動を始めた。
(それにしてもなんでこうなったんだ?)
今でも状況がいまいちよく分からなかった。
(本当は普通に勉強してたはずなんだけど)
本当は涼香の家でみっちり勉強を叩き込む予定だったのだが、狂わされてしまった。
(まあたまにはこういうのもいいか)
そう思った柊人は3人分の飲み物を買って、涼香の方へと戻った。しかし戻るとそこには不穏な空気が流れていた。
「へいかわい子ちゃん俺らと遊ばない?」
「俺らと楽しい遊びしようよ」
「キモイです離れてください」
涼香が男2人組にナンパされていた。
(まずい、早く助けないと)
柊人は急いで涼香のところへ向かった。
「それ俺の連れなんで離してもらっていいですか?」
「柊人、!?」
「お〜なんだお前、もしかしてこいつの彼氏かなんかか〜?」
「ああそうだ、俺はこいつの彼氏だ、だからいいから離せ」
「っち、つまんねえの、おいずらかるぞ」
「ああ」
何とか間一髪男達を退治することに成功した。
「おい涼香大丈夫か、、?」
「こ、怖かった、、」
涼香はほぼ半泣き状態だった。
「ご、ごめんな1人にして、一緒に居てあげれば良かったわ」
さすがに少しの時間なら大丈夫かと思ったが、どうやらそうでもなかったようだ。
「今度は1人にしないようにする、すまんな」
「別に柊人は悪くないわ、、、でも、ありがと」
「お、おう」
急に素直になる涼香に、慣れないばかりか少しドキっとしてしまった。
「ただいま〜、、って柊人っち涼香っちのこと泣かせたの!?」
そこにトイレから戻ってきた真凜がきた。
「違うわ!涼香が男達に絡まれてたんだよ」
「あ〜ナンパか、よくされるんだよね〜」
「そうなのか?」
確かに涼香は傍から見てもとても美人なので納得である。
「いつもは私が退治するんだけどね〜、涼香思ったより怖がりだから、私が居ない時は柊人っちがちゃんと守ってあげてね?」
「ああ、気をつけるよ」
「ごめんね涼香っち、今度は一緒にトイレ入ろうね」
「一緒には入らないわ、、」
真凜の言葉に呆れる涼香であった。
すっかり満喫し3人はデパートを出た。
「は〜楽しかった!」
「勉強するために来たんだけどな?」
結局ほとんど勉強せずに出てきてしまった。
「私も収穫取れたし良かったわ」
涼香は今もクマのぬいぐるみをぎっちりと抱えていた。
「喜んでくれたなら良かったよ、、」
「あ、じゃあ私こっちだから!じゃあね涼香っち!柊人っち!」
そうして真凜はそそくさと帰って行った。
「さて、俺も帰ろうかな」
「あんた今日夜ご飯どうするつもりなの?またコンビニ?」
「まあそうだな」
「せっかくならうちで食べて行きなさいよ、今日助けてくれたお礼も込めて」
「いや悪いよわざわざそれだけのためにお邪魔するの」
「悪いも何も、もう林さんに言っちゃったから、拒否権はないわ」
「いやなんでだよ」
そうして2人は東条家へと向かった。
「ただいま」
「おかえりなさい涼香様、そして小野様、夕飯の用意が出来ていますよ」
「ん、ありがと」
「あ、ありがとうございます」
そうして2人は夕食を食べ始めた。
「あら、涼香様を助けてくださったのですか?」
「助けたっていうか、別にそこまでのことしてないですけどね、」
「それでも助かります、涼香様は素直じゃなく強情を張る時がございますが、その時はだいたい無理をしている時なのでその時は助けてくださるとありがたいです」
「林さん、うるさいわ」
「やっぱり素直じゃないですね涼香様は、いつもはずっと喋ってないと気が済まないのに、」
「ほんとにうるさいわ、、」
林さんの言葉に呆れる涼香であった。
夕飯を食べ終わり柊人は涼香の部屋に来ていた。
「せっかくなら少しゲームしていったら?」
「していったら?って、、涼香がやりたいだけだろ」
「柊人がゲームしたいかなって」
「いや別に俺はこのまま帰ってもいいけど」
「、、、、」
涼香がとても哀しそうな目でこちらを見てくる。
「ごめんごめん!やろう!いますぐやろう!」
「最初からそういえば良いのよ」
「こいつめ、、」
そうして2人はゲームにのめり込み始めるのであった。