東条涼香
「はぁ、疲れたわね」
自室でゲームにのめり込んでいた彼女「東条涼香」は、ゲームをやめ、机へと向かった。
「勉強ってなんでこんなにも面白くないのかしらね」
1人でやる勉強程面白くないものはないのだ。しかし、家庭教師から帰り際に宿題のようなものを渡されるのでそれをやらなければならない。
「はぁ、これもわかんないし」
自分一人の力じゃ勉強は何もかも分からない。
「柊人ってなんであんなに頭いいのかしら」
涼香の家庭教師「小野柊人」は俗に言う天才らしい。勉強もでき、涼香の好きなゲームもでき、噂によるとどうやらスポーツもできるらしい。そんな人間と仲良くできるとは到底思っていなかったのだが
「あいつがいないと楽しくないわね、」
どうやらそうでもなかったらしい。文字通りなんでも出来るし、なんでも知っているので、どんな事でも話が合う。なので話していてとても楽しいのだ。さらに涼香はクールなオーラのせいで元々友達も少ないので遊び相手が増えるのは嬉しかった。
「おーい涼香っちー」
「!?!?」
そんなことを考えていると突如後ろから真凜が登場した。
「ちゃんとノックしてよ!びっくりしたわよ!」
「ごめんごめん笑それにしてもなんか考え事?」
「この問題がわからないのよ、」
「あー、だから柊人っちの手が借りたいと」
「別にそうとは言ってないわ」
「別に呼べばいいじゃん?どうせ向こうも勉強してるだろうし」
「呼ぶって言われても、どうやって?」
「え?連絡先交換してないの?」
「え?」
「この前私Lime交換したけど、涼香交換してなかったの?」
そういえば今まで連絡先の交換などは一切していなかった。
「してないというか、別にする気がなかったというか」
「も〜!素直じゃないな〜涼香っちは〜、私が呼んだげる」
「いや迷惑でしょいきなり、」
「あ、来るって!」
「早いわね、、」
涼香の遠慮を無に返すように柊人は一瞬で涼香の家に来た。
「ほら、ここはこうなるぞ」
「ほんとだわ、ありがとう、助かったわ」
「おう」
何はともあれ分からないところは解決したのでそこはよかった。
「てか2人って連絡先交換してないの?」
「ん、ああそういえばしてなかったんだっけか」
「なんで真凜とは交換してて私と交換してないのよ、、」
「いやなんも言われてなかったし、」
「涼香っち嫉妬してて可愛い〜」
「し、嫉妬はしてないわ、ただなんか、えっと、、複雑なのよ!」
「それを嫉妬って言うんじゃない?」
「ち、違うわよ」
そう、嫉妬じゃなくてただ複雑なだけなのだ。しかし何故複雑なのかは自分でもよくわからなかった。
「ほら、これ」
「あ、、ええ、ありがとう」
柊人が見せてきたQRコードを読み込んだ。
「良かったね涼香っち交換できて」
「あんたはとりあえずうるさいわ、、」
真凜に呆れる涼香であった。
2人が帰ったあと、涼香は柊人の連絡先を眺めていた。
「最初になんか送っといた方がいいのかしらね、?」
クラスの人間ともほとんど連絡先を交換していないため、あまりどうすればいいのかわからなかった。
「スタンプでも送っとこうかしら」
とりあえず初めに「おはよう」と書かれたスタンプを送った。そうすると5秒ほどで既読がつき、返信がきた。
『どうした?』
「いや別にどうかした訳じゃないのだけれど、、」
ただスタンプを送っただけなのでどうしたもこうしたもないのだが、せっかくなので分からない問題を聞いてみることにした。
『この問題が分からないのだけれど』
写真と一緒にメッセージを送った。
『ああなるほど、ちょっとまってな』
『わかったわ』
返信が返ってきて、数分待つと、写真が送られてきた。
『これを参考にしてくれ』
そこにあったのは柊人の手書きの解説があった。
『こんなに丁寧に書いてくれたのね、ありがとう』
『おう』
そうして会話がおわり、涼香はその解説を見ながら問題を解き始めた。
(これ結構便利ね)
意外と使い勝手がよく、涼香はとても満足だった。
そんなことを考えていると別の人からメッセージが届いた。
『柊人っちになんかメッセージ送った?』
(なんでこの子はこんなに勘がいいのよ、、)
タイムリーにそう聞かれたため涼香は少々ビビった。
『スタンプを送って分からないところを聞いたまでよ』
『お!じゃあ結構話してんじゃん?』
『別にそんなでしょ、業務連絡みたいなものよ』
『じゃあ次はもっとプライベートな話を出来たらいいね!』
『別にわざわざ話をする気はないわ』
『確かに!話すなら直接話せばいいもんね!』
『ブロックするわね』
『ああ!ごめんごめん涼香っち!ゆるちて!!』
(メッセージでも騒がしいわねこの子は、、)
メッセージでも変わらない真凜のうるささに呆れる涼香だった。
「東条さん可愛いよな」
「それな」
涼香が学校の廊下を歩いているとひそひそと話し声が聞こえた。
(はぁ、きも)
直接言ってくるのなら別になんとも思わないのだが、陰口のような感じで言われるとなんだか気味が悪い。まあでも涼香にとってはそれも慣れたものだった。
「柊人っちも涼香っち超可愛いと思うよね!?」
「んー、、まあ可愛いとは思うよ」
「う、うるさいわあんたたち!そんな話大声でしなくていいから!」
でも直接言われたら言われたらでなんだか恥ずかしい。
「うわ、照れてる涼香っちも可愛い〜」
「ほんとにうるさいわね、、」
真凜は基本的に声がでかいのですごく恥ずかしいのだ。だが真凜は涼香の大切な親友のため憎めない存在である。
「ねぇねぇ涼香っち」
「なに?」
涼香と真凜は2人でファミレスに行っていた。
「柊人っちのことどう思ってる?」
「どう思ってるって?なにが?」
突然の質問に困惑した。
「いや〜涼香って男子嫌いじゃん、だから家庭教師本当は嫌だったりしないのかな〜って」
真凜はいつもおちゃらけているがこういう心配をいつもしてくれるのでとても信頼している。
「別に柊人のことを嫌だとは思わないわね、良くも悪くも女として見てなさそうっていうか」
「ふ〜ん」
「だから別に家庭教師が嫌とかはないし、それに結構助かってるからありがたいわ」
成績が上がったおかげで新しいゲームなども買って貰えたし家庭教師制度は結構涼香にとっては良かったのだ。
「もし柊人っちが涼香っちに対して好意を持ってたらどうする?」
「うーん、、」
そんなことは考えたこともなかった。そもそも柊人は自分の意思で涼香の家庭教師になると決めたわけでもないのでそういうことはまずありえないと思っていた。
「まあその時は涼香っちが甘んじて受け入れればいいか!!」
「いやなんでそうなるのよ!」
「いや〜あの人いい人だし!柊人っちなら私も安心でっせ!」
「なんの話をしてるのよ、、」
勢い任せに喋って変な口調になる真凜に呆れる涼香であった。