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始まり

「あんた家に居ても邪魔なんだから一人暮らししなさい、毎月3万とバイトも紹介するから足りないお金は自分で何とかして」

「あっそ、わかったよ」


「んだこのクソでけえお屋敷は」

目の前に現れたとてつもなくでかい家に呆気を取られている男子高校生、小野柊人(おのしゅうと)はそのお屋敷を前に立ちすくんでいた。

「俺の新しい住処は家賃4万のアパートだってのに、、それにしてもどうしてこうなったんだまじで」

柊人は先日いきなり母親から一人暮らしをしろと命令された。今はそのための資金を調達するための「バイト」にきている。

「まあどう考えても3万じゃ家賃も学費も払えねえからな」

柊人は母親ととても仲が悪く家でも口を聞かずご飯も別々に食べたりするなどほぼ崩壊状態だった。

「これどっから入るんだ?」

入口っぽいのが何個もあるため右往左往してると、中から人が出てきた。

「小野柊人様でしょうか?」

「あ、はいそうです」

中から出てきたのは20代ぐらいの女性だった。

「わたくし「東条家」の家政婦を努めさせて頂いております、こちらから中へご案内致します。」

「あ、ありがとうございます」

(いや家政婦とか漫画の世界しか見たことねえよ)

そうして家政婦さんの案内で家の中を進んで行った。

(それにしてもなにやらされんだ?)

母親からはここの住所に行けとしか言われてないので業務内容なども何も知らされていない。

「こちらの部屋にお入りください」

「はい」

柊人はノックをして恐る恐る扉を開けた。

「入っていいですよ、、、って誰?」

「え?は?」

部屋に入るととても綺麗な黒髪ロングで顔立ちがとても整ったクールな雰囲気の「見たことある」女子が座っていた。

「東条家って言われて少し感じてたけどもしかしてここ東条さんの家?」

「そうだけど、んであんた誰?」

この女子は同じクラスにいる東条涼香(とうじょうすずか)という女子だ。噂によると社長令嬢でとんでもないお金持ちなんだとか。

「俺同じクラスの小野だよ、さすがに分かるでしょ?」

「ふーん、私他人に興味無いからクラスの人の名前とか顔覚えてないよ」

「そ、そうなんだ」

この東条涼香という女子は顔立ちがとても整っており、さらにとてもクールなことからクラスから一目置かれている。おまけに社長令嬢である。

「んで、何しに来たの、用がないなら帰って」

「いやそれが俺もまだ何するか分からないんだよな」

何せほんとに何も伝えられてないので今から何をするのかまるで分からない。なので後ろにいる家政婦さんに聞いてみることにした。

「俺ここで何すればいいんですか?家事のお手伝いとか?」

「あなたにはここで涼香様の家庭教師をなさって欲しいのです」

「「は?」」

2人は声を揃えた。

「わたくしは前々から涼香様の家庭教師を探しておりました。しかし中々見つかなかったのですが先日涼香様のお母様からご連絡があり、小野様は勉学に優れているとお聞きして、家庭教師をお願いさせてもらう事になりました」

「いやごめん家政婦さん全く意味がわからないんだけど」

「涼香様は勉学が少し疎かになっておりこのままだと進級も怪しくなってしまうので、どうか涼花様をよろしくお願いします」

「待って林さん、私別に家庭教師なんていらない」

林さんとはこの家政婦さんのことらしい。東条さんのことはあまり深くは知らないが、どうやらかなり勉強が出来ないようだ。

「涼香様、このままでは大学に行くどころか高校卒業すら出来なくなってしまいます、どうかご理解お願いします」

「そうだけど、、自分でできるから、大丈夫」

「いやまず俺やるとは言ってないんだけど」

「東条様は一人暮らしの為金銭に困っているとお聞きしました。家庭教師を引き受けて下されば1日2万円お支払い致します。」

「に、にまん、、?10日働いて20万、、?」

「はい、もし成績の上がりがよろしいようでしたら金額を上げさせてもらうことも視野に入れております。」

「まあ、家賃も学費も払わないといけないしやるしかないのか、、」

1ヶ月で20万も貰えれば家賃も学費も払えるため、気は進まないが柊人にとっては好条件だった。

「いや待って私はやらない、自分でなんとかする」

「涼香様、お母様が心配になられております。勉学を疎かにされてはならないと」

「余計な心配しなくていいから」

「お母様からの伝言で、次の定期テストで赤点を取ったらそれ相応の対処をすると仰られております」

「対処って?何するの?」

「ゲームの禁止、お菓子の禁止などだそうです」

「え、、?それは困るんだけど、、」

部屋の周りをよく見渡すと確かにゲーム機はいっぱいある。どうやら東条さんはゲームが好きらしい。

(意外だな、そういうのやんないもんかと思ってた)

クラスではそういう話も聞かないのでゲームなどはしないのかと思っていた。

「それなら赤点を取らないように勉強すべきです。わたくしも涼香様の成績は少しばかり心配です」

「そうだけどやっぱり家庭教師はいらない」

「家庭教師をつけて勉強して成績をあげることが出来ればご褒美なども考えられているそうです」

「ご褒美ってなに?」

「新しいゲームや欲しいものなどを買って頂けるそうです」

「うっ、、しょうがないわね、そこまで言うなら家庭教師をつけることにするわ」

「ありがとうございます涼花様、それでは早速お願い致します小野様」

「え?いまから?」

「それではわたくしは失礼致します」

そうして家政婦さんは部屋を後にした。

「えっと、、これからよろしくね東条さん」

「ええ、言っとくけど勉強を教えてもらうだけ、仲良くしようとかそういう気はないから」

東条さんは柊人を睨みつけながらそう言った。

「あ、ああそうか、一応自己紹介だけ、俺は小野柊人だ、よろしくな」

「ええ、よろしく」

「じゃあ早速だけどやって行こうか、なんの教科が苦手?」

「数学」

「じゃあ数学からやろうか」

「ええ」

(ふぅ、疲れるなこれ)

だいぶ空気が重いが反抗されると思ったので意外にも素直に受け入れてくれて一安心した。

「じゃあとりあえず今やってる範囲のとこやってみようか」

「わかったわ」

今やってる範囲なら多少はわかるはずなのでそこをやってみることにした。

「これ解ける?」

「、、、」

「おーい」

「わからないわ、、」

「いやこれこの範囲の基礎の基礎なんだけど」

「人間誰しもわからないことだってあるでしょ」

「じゃ、じゃあこれは?」

「だからわからないって言ってるでしょ」

「そ、そうか」

(こりゃ想像以上にできないな)

さすがに苦手科目とはいえ少しはできると思ったのだが、涼花は一番最初の基礎のところすら解くことが出来なかった。

「ここはこの公式を使って解くんだ、この例と同じようにこの問題を解いてみて」

「こういうこと?」

「そう!あってるよ!」

「ふん、なんだこんなの簡単じゃない」

「いやさっき解けてなかったけど、、」

「なに?」

「なんでもないです」

そうしてまだ基礎のとこではあるが、着実に教え込むことができた。

「よし、やり方は覚えれたからあとは問題集で練習すれば赤点は回避できると思うよ」

「そう、ありがと」

「全然勉強出来ないのかと思ったけど飲み込みが案外早くて助かったよ」

「普段授業聞いてもよくわかんないし、あんたの教え方は分かりやすくていいわ」

「そ、そう?」

予想外にも褒められて柊人は少しびっくりした。

「今日はここら辺で終わりにしとこうか、いきなり一気にやっても疲れるだろうし」

「わかったわ」

「さっき家政婦さんから渡された日程表を見ると明日もあるっぽいからまた明日勉強しよう」

先程去り際に家政婦さんから家庭教師の入る日が書いてある日程表を渡された。基本的に平日週に3回入ることになっているらしい。

「わかったわ、あと学校では話しかけて来ないで欲しいわ」

「なんで?」

「さっきも言ったでしょ、仲良くする気はないって、めんどくさいからわざわざ話しかけてきたりしないで」

「ああ、、うんわかったよ」

「じゃあまた明日」

そうして柊人は初の家庭教師の仕事を終え、東条家を後にした。

「それにしてもクソ疲れたな、、」

家庭教師というなれないことをする+東条さんに気を使いながら話しているのでとても神経を使ってしまい疲労がとてつもなく溜まった。

「まあでもあのクソ親と過ごすよりかはマシか」

そんなことを言っていると今度は柊人の新しい住処に着いた。

「家賃が安めだから狭いかと思ったけど案外そんなこともないな」

家賃4万と安いので暮らしづらいかと思ったが割とちゃんと住めそうな広さの部屋で少し安心した。

「俺、これからどうなるんだろうな」

安心と共に今後の不安も出てきて気持ちが落ち着かない柊人であった。















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