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第74話 少年と少女の旅

 イリアとミアが転生者の対応に追われていた頃、アクセルは謎の少女と共に旅に出ていた。

 少女はアクセルを強くしてくれると言い、旅を続けながら2人で魔物と戦って来た。少女はエレナ・メリアスという15歳の男爵家令嬢だった。

 正確には元男爵家であり、彼女の両親はイリアが王位に就いた後に処刑されている。彼女は別の男爵家に引き取られたが、そこでは疎まれていた。


 そんな日々を過ごしていたある日、彼女は前世の記憶を思い出した。普通のOLとして暮らしていたが事故で死亡し、女神の手によりこの世界へと転生したのだと。

 彼女が女神から貰ったのはゲームの様に生活出来る能力で、この世界では唯一エレナだけが【レベル】という概念を確認する事が出来る。

 また他人をパーティーに登録する事が可能で、参加した人間には様々なボーナス効果が付与される。


「なあエレナさん、俺って強くなれているのか?」


「んーまだレベル30だからねぇ、(わたし)の半分ぐらいかな」


「れべるってのは良く分からないけど、前よりは強いって事?」


「そう思って良いよー」


 エレナの異能を使えば、パーティー内の人間に経験値ボーナスという効果が付与出来る。それにより成長速度を加速させる事が可能となる。

 エレナの言うレベルや経験値という概念は、言ってしまえば戦闘経験を数値化したモノ。

 この世界には元々レベルという概念は存在しないし、経験値などと言うモノも一切無い。


 彼女の与えられた【スキル】が干渉する事で可視化したり、ボーナスを付与したり出来ているのだ。

 パーティー内で経験値を分配する効果もあり、それも【スキル】による本来存在しない現象である。

 彼女はこの効果を使い2年ほど自分を鍛え、15歳にして平凡な騎士相当の戦闘力を得ていた。


「うわ、流石魔の森がある領地だ。騎士のレベル高いわねー」


「エレナさんより強いの?」


「強いわよ、皆150を超えているし」


 ハーミット領に入ったエレナとアクセルは、中央都市ファニスから一番近い街であるべレムに到着していた。

 そこに駐留している騎士達のレベルを見たエレナは、その高さに驚いていた。エレナは自分が居る世界を、ゲームの世界だと思い込んでいるタイプの転生者だ。

 最初こそ知っている情報と一部が食い違っていたが、数年後の世界だと判断し行動している。


 そう考えればゲームの世界よりも、騎士達が強いという事も有り得る話だとエレナは結論付けた。

 中央都市ファニスに居る下級騎士達は、ハーミット領の騎士達と比べれば戦闘力がやや劣る。

 イリアがスパルタ教育を最初に行った領地なので、ある程度差があるのは仕方がない。しかしそんな事情をエレナが知る由もない。


「とりあえず一旦今日はここで宿を取りましょう」


「分かりました」


「部屋は一緒で良いよね」


「は、はい」


 アクセルはお金を出して貰う側であるので、彼女の方針に逆らえない。その立場を利用して、エレナは私欲を満たしていた。

 彼女は前世で年下のキャラクターが好きなタイプの女性であった。彼女の認識している記憶では、アクセルは後輩ポジションのキャラクターである。

 それを幼い頃から自分が面倒を見るという行為に出ているつもりでいる。そうやって自分に好意を持たせて、アクセルが成人したら自分のモノにするつもりだ。

 地球の法と実年齢で考えれば十分に犯罪行為だが、そんな事をエレナは気にしていない。


「宿を取ったらご飯にしょうね」


「いつもごめんなさい」


「良いの良いの、お金ならあるから!」


 エレナの持つ【スキル】により、魔物を倒すとお金と素材が手に入る。その能力により金銭面は既に潤沢である。

 素材からは装備類を作り出すクラフト能力もある為、衣類や武器等も買う必要がないのだ。むしろ作った装備を売ってお金にすらしている。

 転生者の中ではかなり優秀な能力を得ている方で、エレナは成功出来ている側の人間である。

 ただしそれは、あくまでもエレナの側から見た場合だ。上手くやれていると思っているだけであり、ずっと監視されている事に気付いていなかった。


「リーシェ様、対象はべレムの街に滞在する模様」


『そのまま監視を続けなさい』


「はっ!」


 エレナの存在は既にアルベールによって捕捉されている。別件で行動中のイリアに変わって、リーシェが主導で監視を続けて来た。

 彼女が指揮を執る諜報員達を使って、エレナの行動方針や人間性の確認を行っているのだ。

 現状ではやたら少年と共に魔物を倒している事以外は怪しい所は見られていない。ただし少年の成長速度が、少々奇妙ではある事が確認されている。

 魔の森でのスパルタ教育程ではないが、どちらかと言えばそちら寄りである。その点だけは特筆事項として既にリーシェも把握している。


『それで、何か変わった所は?』


「いえ、以前と同様ですね」


『おかしいわね、少女の方が転生者の筈ですが……』


 アルベールから知らされた内容は、少女が転生者だと言う情報だ。しかし異常が見られるのは少年の方である。

 少女の方も確かに歳のわりには強いといえる。しかしそれは非常識という領域ではない。

 ゲームという概念と、エレナの能力についてこの時点では詳しく知られていなかった。それ故にリーシェ達が困惑するのも無理は無かった。

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