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第70話 転生者達への対処

 イリアとアルベールが苦情という名のお礼参りをした後も、転生者関係の騒動は続いていた。

 流石のサフィラも怒った様で、彼女の手により今回使われていたルートでの異世界転生は遮断された。

 神としての格はサフィラの方がエヴァより数倍高いので、一方的に遮断してしまう事が可能だった。


 それによりこれ以上は増えないと思われるが、遮断前にどれだけの魂が紛れ込んだかが不明だった。

 そして対処出来る者には限りがあるので、当然イリアとアルベールも動かざるを得ない。【スキル】と称して付与された異能は、様々な効果に分かれている。

 ただ精神干渉系の異能が効かないだけでは、対処出来ない転生者も中には居るのだ。


「全く、呆れますわね。虫の様にあちこちに沸いて出て」


「あの女神、相当送り込んでくれたらしい」


「反対の腕も斬り落としておけば良かったかしら」


 本日もサフィラによる能力剥奪に従わない転生者の、その対処に2人は向かっていた。最初はイリアなりに同情していたが、それも今では全く無い。

 好き勝手に我儘を並べて立て、ただ迷惑を掛けて来る相手でしか無かった。何故別の世界に行けば無法が働けると思ったのか。

 それがイリアには全く理解が及ばない。無法を行ったのならば、無法で返されても文句は言えない。

 そんな当たり前の覚悟も無しに、何故か権利と自身の正当性を主張される。そんな事を数度繰り返せば、イリアとて飽きるというもの。


「今度は何でしたか?」


「炎を操る者らしい」


「なるほど、それは加護では防げませんね」


 あくまで洗脳の様な精神干渉や、呪いの類を防ぐのが加護の効果だ。物理的なダメージまでは防げない。

 それに厄介なのは【スキル】というモノは腐っても神に与えられた力だ。付与したのが弱小の神であっても、その事実は変わらない。

 優秀な騎士でも、流石に神の力に対抗するのは厳しい。相手の能力次第では、イリアやミアの領域にいる者で無ければ手に余るのだ。

 イリアとアルベールからすれば、本当にただ迷惑でしかない。予定は大幅に狂ったままだ。

 最低でも数ヶ月、下手をすれば半年程は転生者の対処に追われる可能性が出て来た。


「あれですか」


「随分と派手にやっているな」


「さっさと終わらせましょう」


 アルベールに横抱きで抱えられた状態で空を飛んでいたイリアの視界に、派手な炎の柱が飛び込んで来た。

 そこでは草原で戦闘をしている集団が見える。30人ほどの騎士と、10人程の平民らしき装いの者達。その中の1人が、派手に炎を操っていた。

 明らかに魔法とは違う動きをしており、異能だと一目で分かる。炎が鳥の形になったり、ドラゴンの様に変化したりしている。

 この世界にはそんな魔法はない。そもそも魔法に生き物の形を取らせる意味がないからだ。

 それらの炎に向かって、イリアが炎弾を、アルベールが漆黒の矢を放って消滅させる。


「交代しましょう。貴方達は引きなさい」


「あ、貴女達は!?」


「サフィラから聞いているだろう? ここは(わたし)達が預かる」


 転生者達のグループと交戦していたのは、聖王国サリアの騎士達だった。イリア達と面識のない者達であったが、その特徴的な外見で誰なのかはすぐ分かったらしい。

 隊長格と思われる壮年の男の指示で、騎士達は素早く後退して行く。そして転生者達のグループは、派手に登場した2人を警戒していた。

 彼らもこの世界で生きた記憶は持っている。そして娯楽として作られた、エヴァに捏造されたこの世界の情報も。

 イリアの見た目を見れば、相手が誰なのかは彼らにもすぐに見当がついた。


「お、お前は!?」


「【げーむ】の話なら聞き飽きましたわ。女神の嘘も見抜けず騙された愚か者達、従うなら命までは取りません。大人しく投降なさい」


「はぁ!? お断りだ! 俺の好きにさせて貰う!」


「警告はしましたわよ?」


 イリアからすれば、転生者など平民以上に不要で興味が無い存在だ。いちいち気を遣ってやる必要はない。

 一応はサフィラの意思に反していないという、その名目が必要なだけだ。正直な気持ちを言えば、全員さっさと焼き払ってしまいたいというのがイリアの本音だ。

 こんな面倒な事に時間を割きたくはない。しかし無視するのも危険である。いつどんなイレギュラーを起こされるか分からない。

 本当にどこまでも腹立たしい存在であった。そんなイリア達に向けて、転生者グループのリーダーと思われる男が炎の塊を放つ。


「へっ、どうだ!」


「この程度では話にならんな」


「面倒です、1人ぐらい構わないでしょう」


「え」


 それなりに自身があったらしい転生者の一撃は、アルベールに手によって簡単に防がれた。

 そして返すイリアの放った火炎により、リーダー格の男は消し炭となった。文字通り骨も残らないその炎は、的確に男だけを焼き尽くした。

 ほんの一瞬の攻防だけでリーダー格があっさり殺され、残された9人の転生者達に動揺が走る。


 自分達は世界最強クラスの力を与えられたと思っていただけに、これほどあっさりと1人死んでしまった事実をすぐには受け止められない。

 イリアはサフィラとの早期敵対を基本的には回避するが、しかし相手にするのも面倒な存在が歯向かうならば容赦なく叩き潰す。

 呆気に取られている残りのメンバーに向かって、イリアは問いかける。


「どうなさいますか? 別に全員殺すのも捕まえるのも、労力的には変わらないのですが?」


「…………」


 絶句する転生者達が、投降を申し出るまでそう時間は掛からなかった。残った9人はアルベールの力によって聖王国サリアに送還された。

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