第68話 その後の処理について
イリアとアルベールによって確保された、別世界の魂を持つ者達。本人達が言う異世界転生者という存在については、早急に調べられる事となった。
女王に精神操作を仕掛けた罪で、1名は既にその記憶を魔道具に移されている。それにより様々な事が判明した。
地球と呼ばれる世界の、日本という名の国の文明レベルや基本的な価値観など。また転生時にその世界の女神により【スキル】と呼ばれる能力を得ている事。
概念としては神の加護に近い能力で、神やその眷属には効果が正常に働かない。つまり人類ではイリアとミアだけが完全な耐性を有している。
またリーシェの様に、ある程度の影響を受けている者でも若干の耐性がある事も分かった。これらはすぐ各国にも情報が伝達され、対策が行われる事となった。
先ずは聖王国サリアの騎士達にはサフィラの力で、アニス王国の騎士達にはアルベールの力により一時的な加護が与えられた。
これにより【スキル】に耐性が出来た両国の騎士達を各国に派遣し、異世界転生者達の確保が始まった。
対策にある程度の区切りがついた所で、イリアとミアが再びアニス王国の庭園で会談をしていた。
「まさかこんな事が起きていたなんて、思いもよりませんでした」
「けれども、中々興味深い話ではなくて?」
「それは……そうですけど」
今回の事件により、この世界とは全く別の世界があると判明した。これについてはサフィラも知っていて秘匿していた。
この世界で生きていく上で、知る必要のない事柄だからだ。知ったとて好き勝手に移動する事は出来ない。それこそ、今回の様に神でも絡まなければ。
その点については早期にサフィラから説明があり、イリアやミア達も一旦は納得している。事実として別の世界に行こうとは思わなかったからだ。
特に地球は魔法が存在しない。そんな不便な世界に旅行でも行きたいとは思えなかった。だが地球の知識はそれなりに参考になる事も多々あったのは事実だ。
火が燃える理由だとか、重力という概念の存在だとか。それらについてはイリアも評価していた。だがしかし、全てが参考になった訳では無い。
「科学というのは悪くありませんが、何故あの程度で自分達の世界の方が優れていると考えるのでしょう? 私には理解出来ませんわ」
「それは確かに、変ですよね? 何故か皆さんそう考えていた様ですし」
「あちらの女神が変な入れ知恵でもしていたのかしら?」
地球の科学から学ぶ事は確かにあったが、イリア達からすれば全て魔法で解決出来る事ばかりだ。仮に魔法が使えない者でも、魔道具で代用出来る。
燃料は殆ど必要ないし、電力など一切不要だ。そんな物をいちいち用意せねばならない世界は、この世界基準で言えば不便としか言い様がない。
国民達の生活水準で言えば、こちらの世界の方がやや高い。法などについても、それほど格差は無かった。
様々な国の在り方や主義思考も確認されたが、王政を捨てる程のメリットは感じられない。
総じてこの世界よりも高度あるとは言えなかった。しかし何故か、転生者達はほぼ全員が地球の方が優れていると思い込んでいた。
「まあそれは良いとして、そちらは順調なのですか?」
「はい、サフィラ様が確実に対処を進めていらっしゃいます」
「特に洗脳系の力は厄介ですからね。さっさと奪うべきですわ」
転生者が所持する【スキル】については、サフィラが自らの力を使って彼らから消去している。
魂に直接付与された力である為、サフィラにしか処置は施せない。それは繊細な作業でもある為、確保された転生者は一度聖王国サリアに集められている。
結構な人数がこの世界へと渡っていたらしく、その処置には暫くの時間が掛かりそうだ。またそれと同時に、元の世界への帰還を求めるかも尋ねている。
その際にはこの世界で死ねば、輪廻転生の輪から外れ消滅してしまうという事も教えている。
実質追放である事に彼らはショックを受けていたそうだが、そんな事をする神の支配下に戻る気にもなれず残留を願う者が大半だった。
「彼らもある意味では、被害者と言えます」
「ですが犯罪行為は犯罪行為ですわよ?」
「それは、そうなのですけど」
イリアを洗脳しようとしたカリスを筆頭に、既に重罪を犯してしまっている者も一部居る。
洗脳等の認識操作や意思を奪う様な行為から、違法な薬物の製造などその内容は様々だ。例え神に騙されていたとしても、その罪が無かった事にはならない。
何らかの被害に遭った者達が居る以上は、無罪放免とはいかない。そう言った者達には【スキル】剥奪の後、適正な処罰を与える事になっている。
酷い者はカリスの様に、不敬罪やそれ以上の行為に手を染めている。何名かは極刑や終身刑が確定していた。
その全能感から犯してしまった失敗であろうが、イリアにしてみれば見知らぬ他者を信用したのが悪いとしか思わない。
強者が力を振るう事自体にはイリアも反対はしない。だが悪として生きる覚悟も無しに、好き勝手に振る舞うのは話が別だ。
それに見ようによっては、侵略の為の尖兵を送られたとも言える。これはもうこの世界へと売られた喧嘩だと、イリアは考えていた。
そして彼女は、それで黙っている様な女王様ではない。手を出して来た以上は、それなりの返礼を送らねばならない。
「サフィラは暫く動けませんし、ちょっと一言苦情でも言いに行きましょうか」
「あの……本当に苦情だけですよね?」
「ええ、もちろん苦情ですわ」
既にアルベールの調査によって、地球の神がいる凡その位置は発覚している。後はイリアをそこまで連れて行ける存在さえ居れば問題はない。
この世界で面倒事を起こしてくれた、そのお礼参りにイリアは向かう事を決めていた。




