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第65話 邂逅 前編

※四肢欠損系の暴力表現があります

 最近の問題となっている不思議な魂を持つ者達。彼らがアニス王国内でも見つかったと言う報告が上がって来た。

 それはアルベールとリーシェの両方から齎された情報であり、報告の内容を疑う余地はない。

 一体何が切っ掛けだったのかは分からないが、本当にいつの間にか、複数箇所で発見されていた。

 ちょうど領地の整備に合わせて下見が行われた事、そしてアルベールによる国内の再確認が重なり発覚した。


「念の為、二手に分かれましょうか」


「その方が良いだろう」


「南の農村は私が、東はアルにお任せしますわ」


 今回発見されたのは、南の農村に1人と東に2人。そして西のハーミット領に向かっているのが1人だ。

 西側は移動中であり、ハーミット領に向かうならば後回しでも問題なし。イリアは領地の者に該当者の行動を監視させておき、残る3人の確認に向かう。

 騎士団に調べさせるのも手ではあるが、速効性も確実性も不確かだ。この国に居る最高戦力で、瞬間的に終わらせた方が早い。

 もし役に立つ存在なら利用し、敵対するなら一旦は捕縛する。殺しさえしなければ、サフィラも文句を言えないだろうとの判断だ。

 流れとしてはアルベールの転移能力を使い、同時に現場へと向かい短時間で終わらせる計画だ。


「あまり無茶はしないでくれ」


「分かっておりますわ」


「すぐに終わらせて迎えに行く」


 アルベールが出した転移門を、イリアとリーシェが潜る。己の目で判断出来るアルベールとは違い、イリアには案内役が必要だった。

 2人は騎士団から上がって来た報告にある村へと転移した。リーシェが村の入り口で番をしていた男に声を掛け、村長への取り次ぎを求めた。

 当然ながら男は突然やって来た女王に目を剥いて驚き、大慌てで村長を連れて戻って来た。

 それほど大きくない平凡な片田舎の農村に、突然の女王到来。当然ながら大騒ぎに発展した。


「こ、これは女王陛下。ようこそお越し下さいました」


「面倒な手間は結構です。この村に変わった者が居るらしいですね?」


「へ? あ、ああ! カリスならばあちらに」


 汗を流しながら入り口までやって来た中年の男は、村の中央辺りを指差す。頭髪が心許ないその男が指差した先には、村の少年少女達が集まっていた。

 複数人の少女達に囲まれている1人の少年。ごく平凡な顔立ちに、この国では珍しくない茶色い頭髪。

 田舎暮らしの若者としては、何ら特徴のない15歳ぐらいの男の子だ。見た目だけでは特別な何かを感じさせる様な印象はない。

 敢えて挙げるならば、そんな平凡な少年が何故か少女達に囲まれていると言う事ぐらいだ。


「イリア様、あれが例の」


「その様ね。村長、彼と何処かで話をしたいのですが」


「え、えぇ。もちろん構いませんが」


 この村で一番造りが良い建物は村長の家ぐらいだ。他に選択肢がないので、イリアとリーシェを村長は自宅へと案内する。

 遅れてやって来たカリスと呼ばれた少年が続く。一般的な木造住宅である村長の家に通された3人だけを残し、他の者は全員外へと追いやられた。

 暫く誰も近づかない様にと言われてしまい、村長達はただ困惑するのみ。戸惑う彼を放置して、イリアはカリスと対峙した。

 聞き耳を立てる不埒者対策として、リーシェが防音の魔道具を起動する。これで外に会話が漏れる事はない。


「ええっと、僕に何か?」


「貴方が最近随分と変わったと聞きまして、話を聞きに参りました」


「そ、そうですか」


 警戒心を隠そうともしないリーシェと、非常に圧のある笑顔を浮かべたイリア。ごく普通の少年ならば、とても耐えられない緊張感。

 リーシェの刺す様な鋭い視線がカリスに突き刺さるが、彼はどうにか耐えているらしい。

 この時点でもう詰みび近いのだが、カリスはこれを機会だと考えている。何やら警戒されている様だが、自分の力さえあれば問題ないと。

 そんな風に考えた時点で、大きな過ちを犯したとは気付け無かった。事態を把握出来ていないカリスの両目が金色に輝く。


「僕に従え!」


「…………」


「ふふふ、やったぞ! 流石チートスキルだ! これで悪役令嬢イリアは僕のもの……へ?」


「気安く触れないで下さる?」


 イリアの胸元に向かって伸ばされたカリスの右腕。その肘から先が綺麗に無くなっていた。

 風の刃により斬り飛ばされた彼の腕が、音を立てて床を転がった。切り口から鮮血が飛び散るが、その一切がイリアを汚す事はない。

 不可視の壁に阻まれて、イリアの肌もドレスも綺麗なままだ。遅れて絶叫を上げるカリスを、イリアは冷やかな目で見下ろしていた。

 彼女は耳障りだと感じたので、炎を操りカリスの傷口を焼いた。今度はその熱により、カリスは意識を失い掛ける程の激痛に襲われていた。


「はっ!? イリア様、今のは一体? 私は何を?」


「……ふぅん。精神に作用する魔法かしら?」


「あが…………………」


「リーシェ」


 激痛で声にならない叫びを上げるカリスを、リーシェが引き摺りイリアの前に転がす。人畜無害に見えた少年は、今では罪人の様に扱われていた。

 やった事を思えば斬首刑でもおかしくはないので、かなり温情のある措置ではある。しかしそれはイリアから見た場合だ。

 絶対の自信があったカリスからすれば、全く理解不能で理不尽な状況だった。


「さぁ、貴方の事を教えて貰いましょうか」

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