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第63話 国内のインフラについて

 海洋国家ルウィーネから帰還したイリアは、通常の生活に戻った。いつも通り書類の確認に謁見や視察、国内の情勢についての確認など。

 もちろんルウィーネでの滞在期間中に得た情報や交渉の成果については既にミルド公爵に報告済みだ。

 女王ミランダとの取引が良い結果に終わり、ミルド公爵も満足気だった。これまではモーランを挟む関係上、そこに税が上乗せされていた。


 今ではそれらの品々が以前より安く取引出来ている。特に海に生息している魔物の素材などは重要度が高い。

 一部の魔道具製作には外せない素材であるからだ。特にアニス王国の発展と、居住地域の整備が進む現在は需要が非常に高い。

 交換条件として魔の森で取れた素材の輸出を提示した事で、かなりの量の海洋資源が入手出来る算段がついた。それにより各領地を整備する日程が決まり始めた。

 それもありミルド公爵を始めとした、国の運営を担う者達による会議が行われている。アニス王国の会議室では、20人ほどの上級貴族達が集まっていた。


「イリア様、こちらが各領地の施工計画書です」


「ええ、ありがとう」


「既にイリア様の手によりハーミット領は先行しておりますので、追随する形で重要度の高い領地から順に取り掛かる予定です」


 サーランド王国からは様々な金属類が、ルウィーネからは海洋資源が届く予定が決まった。

 到着までは暫くの時間を要するが、既に手配されている以上はただ待ち惚けをする必要はない。現状の在庫のある限り、工事を進めてしまえば良い。

 先ずは第1弾として各領地に水路を整備する予定となっている。既に中央都市ファニスでは整備済みの、イリアにより齎された最新技術を用いた水路だ。

 少量の魔力で十分稼働し、冬場でも水が凍る事は無い。魔法で加工した金属で囲う為、従来の水路と違って土壌汚染の影響も受けない。

 イリアが暮らしていたロッジと似た技術が使われており、魔法により常に清潔な水路が保たれる様になっている。


「水は農耕に直結しますし、農村部はあまり遅くなり過ぎない様にお願いしますわ」


「もちろんです。辺境伯領のついでに、南部と東部の農村部も整備を進めます」


「この計画書通りなら、2ヶ月後ぐらいに着工かしら?」


「はい。その頃にはサーランド王国から追加分の金属が届く予定です」


 イリアと騎士団により、早期に決着をつけたと言ってもモーランに盗まれた食料は100%戻って来た訳ではない。そして返還も弁償もする余力はない。

 だからこそ、実質国ごと吸収に近い扱いになっているわけだ。しかしそのマイナス分をすぐに補填させるのは難しい。

 ない袖を振らせた所で意味はない。その為、冬季に向けてなるべく早く食料備蓄を元に戻す必要がある。

 イリアが女王になってから、アニス王国は発展し続けているので窮地には陥っていない。だが今余裕があるからと、ここで胡坐をかくのは無能のやる事。

 何があっても良い様にと、イリアは先を見据えて早期解決を目指している。イリアの目算では、計画書通りに進めば大きな問題にはならないだろうと判断した。


「余裕のある東部のエルロード辺境伯領より、南部のパーミル辺境伯領を先にした方が良いのではないですか?」


「いいえ、このままで良いでしょう。モーラン同様に不作の傾向があった南部より、東部の方が期待値は上ですわ」


「確かに、言われてみればそうですな」


 そもそもの発端となった不作問題。それは大陸のど真ん中を真横に横切る様に、悪天候が続いた事に原因がある。

 アニス王国はあまり影響を受けていないが、南部だけは無縁とはいかなかった。それでも収穫量は例年の7割程度、その数字は国全体で見れば致命的とは言えない。

 ただ生育状況の良かった東部と比べると、結構な差が出ているので無理に南部に拘る必要はない。

 何より収穫量の減少に窃盗騒ぎまで起きた南部の農村に、これ以上の無理をさせても期待値は高くはない。

 その判断は優しさではなく、単なる効率に関する話だ。入りは他人などただの駒としか思っていないが、指揮を執る者として無能な訳では無い。


「そもそもの話、オーレルから徴収してしまえば良いのでは?」


「あの国はそれほど農業が盛んではないだろう」


「品質にも不安がありますぞ」


 とある貴族が提案した様に、傀儡となったオーレル帝国への更なる制裁という形で徴収は出来なくもない。

 ただ他の者から出た様な問題があった。オーレル帝国が侵略に踏み切った理由はそこにある。肥沃な大地を持つアニス王国東部を欲しがった故だ。

 元々周辺国への侵略行為で大きくなった国であり、取り込んだ小国群は戦争を繰り返していた国ばかり。

 その歴史の中で失った農耕技術も数多くある。その為あまりその方向で期待は出来ないのだ。

 ならば盗みを働いた大元の元凶であるモーランはと言えば、結局元の話に戻ってしまう。だったら結局自国で何とかしてしまう方が早いという答えに辿り着くのだ。


「食料についてはこの計画で問題はないのです。無意味な労力を割く必要はありませんわよ」


「まあ、そう仰るあれば構いませんが」


「それよりも次の問題へと移りましょう」


 イリアの主導により会議は進んで行く。この時点では国内に起きている変化について、重鎮達はまだ気づいていなかった。初めてその変化に注目されるのは工事が始まってからになる。

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