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第42話 愚かな男の末路

「報告は以上です」


「ありがとうリーシェ」


 サーランド王国から訪れた暗殺者達は、瞬く間に制圧された。最後のデニスだけは念には念を入れた為に、他の3人よりも確保されるのが遅くなったが。

 既に先に確保された3人は、記憶を魔道具に転写され廃人となっている。残虐非道な行いをして来た者達であり、この結末を憐れむ者は居ないだろう。

 もしあるとすれば仇討ちを狙っていた者達が、突然仇が消えた事を不思議に思う事だろうか。

 最後の1人であるデニスも、そう遠くない内に同様の措置が取られる事が決定している。

 既にサーランドの王、ベイルの計画など筒抜けであったが決定的な証拠が3件手に入った事になる。

 抜き取られた記憶からは、ベイルとの会話がしっかりと残されているのだから。


「随分呆気ない終わりでしたわね」


「あの程度の者しか居ないとは、東方も落ちぶれたものです」


「その点、貴女は良い拾い物でしたわ」


 王城の庭園にて、優雅なお茶の時間を過ごすイリア。美しい花々に囲まれながら、しかし話の内容は物騒である。

 対面にはアルベールが座り、背後にはリーシェが常に控えている。王城で生活する様になってから、定期的にこうして外で過ごしている。

 イリアは城の中より外に居る方が好きだった。どうしても城内は息が詰まってしまうのだ。

 高級品に囲まれて室内に籠もるより、外で伸び伸びと過ごす方が性に合う。それはハーミット家の血によるものか、それともメアリの魂を継ぐ為か。ただ自然の中で暮らして来たと言うだけでは無い何かがあった。


「しかし、イリアに暗殺者を差し向けておいてお咎めなしとは行かないだろう?」


「もちろんそんなつもりはございません」


「反国王派、だったかしら?」


 元々東方出身であるリーシェの手引きにより、既にサーランド王国の反国王派は手中に収められていた。

 順調にクーデターの準備は進められており、後はいつでも行動を起こす事が出来る状態であった。

 反国王派のリーダーは、ベイルによって蹴落とされた弟であった。瀕死の重症を負いながらも、命からがら逃げ延びて今日まで生きて来た。

 肉親すらも平気で手に掛けるやり方に、弟は強い憎しみを抱いている。その弟に、ここ最近はリーシェを経由して様々な支援が行われている。

 その恩もあって、次の王はアニス王国に対して友好的だ。友好国として見るか、傀儡と見るかは価値観次第だろう。


「サーランドには価値があるのですか?」


「鉱山が豊富な国ですので、それなりにはあるかと」


「ああ、確かに大陸の東側は鉱山が多かったね」


「そうですか、ならば良いでしょう」


 アルベールが生きた時代から、東側は鉱脈が出来やすい地域だった。地質の関係か、それとも何か他の要因があるのか。

 昔から色々と議論されて来たが、明確な答えは出ていない。流石に女神であるサフィラであれば知っていると思われるが、アルベールはそんな事に興味が無く確認していない。

 ハルワート大陸の東側に比べると、西側は作物が育ち易い傾向にある代わりに鉱山が東側より少ない。


 それを思えばサーランド王国が友好的になれば明確なメリットと成り得る。特に最近のアニス王国は、どんどん発展している。

 その関係で金属の需要は年々高まっている。どこかのタイミングで、金属が豊富な国を手に入れる必要があった。

 そこに鴨がネギを背負ってやって来てくれたのだ、アニス王国としてはこれ以上ない程に良いタイミングだった。


「それでイリア様には少々お願いがございまして」


「何かしら?」


「1つ景気づけに、花火をお願いして頂けないかと」


「あぁ、それぐらい構いませんわよ」


 それを聞いていたアルベールにより、空中に映像が映し出される。アニス王国とはまた違った造りの王城と、城下町が広がっていた。

 その映像は遠く離れた異国の地、サーランド王国の王都を空中から見下ろした映像だった。神としての力を持つアルベールにとって、これぐらいは簡単に出来る。

 2000km程も離れた土地の、正確な座標を捉えるぐらいは簡単だ。あまり世界に干渉し過ぎるとサフィラに邪魔をされてしまうが、この程度ならば何の問題もない。

 何故ならアルベールは遠く離れた国の映像と座標を見せているだけだ。例えその映像を見て、アニス王国の王城からイリアが爆撃したとしてもアルベールの力ではない。

 それは人として生きているイリアの力に過ぎない。サフィラの言う様な人類への干渉には当たらない。


「それではサーランドの皆様へ、(わたくし)からのプレゼントですわ」


 その日、突然サーランド王国の王城を巨大な爆発が襲った。どこから使われた魔法なのか、王城に居た者達には分からない。

 何よりそれどころでは無かったからだ。反国王派を名乗る者達が大挙して押し寄せ、次々と要所が制圧されて行く。

 そもそも最初の爆発に巻き込まれた騎士達が多く、城の守りは滅茶苦茶な状態だった。そしてその爆発は、国王の寝室も巻き込んでいた。

 昼間からメイドを呼びつけ、好き放題しようとしていたベイルごと。ベイルは右半身をイリアの魔法で吹き飛ばされて、瀕死の重症を負っていた。

 誰か助けを呼べば、その命は助かったかも知れない。しかし彼の近くに居たのはメイドただ1人。

 散々な目に遭わされて来たそのメイドは、無様に助けを求め続けるベイルを見て嗤っていた。

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