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嵐が来る

『……大体ですね~』


 ナビの文句を聞きながらキッチンと食糧庫を見て回った俺は、階段を上がってデッキに上がっていく。


『あの~聞いてます? マスター』


「うるさい」


『ぎゃぼーん!』


 ナビの文句を一刀両断した俺は、ぐるりとデッキを見渡した。


「ここがメインデッキ……錨と………舵輪はここにあるのか」


 そう言って俺が舵輪を回すと、それと連動して舵が動く感覚があった。


「……おうっ……なんかすごいゾクゾクした。勝手に自分の体を動かされてるというか……なんというか。とにかく、変な感覚だ」


 俺はそう思いながら、舵輪から離れていく。


「後見てないのは船長室だけか」


『ん? あの、マスター』


「どうしたの?」


『なんか、周りが凄い静かじゃありません?』


 そう言われて周りを見てみると……確かに。

 さっきまであんなにうるさかった波の音が静かになっている。


「……それに」


 海から顔を上げ、遠くに目をやるとそこには巨大な積乱雲があるのが見える。


 積乱雲は、少しづつではあるが、間違いなく俺たちのいる方へと向かってきているのが見える。


『マスター、あれ見えますよね?』


「見えるね」


『なんか、明かにヤバそうですよね』


「そうだね」


『嵐、きそうですよね』


「来るだろうね」


 そう、俺とナビは少しの間沈黙すると、爆発したように焦り始めた。


「やばい、ヤバいって! 普通に嵐が来たら俺みたいな船沈没するって!」


『そうですよ! 貴方みたいなボロ船なんかすぐに壊れちゃいますよ!』


「どうしよ……」


 そう言って俺は思わず頭を抱える。


『……とりあえず、嵐の影響を少なくできる場所に停泊しましょう。こんな海のど真ん中じゃ、普通に高波に襲われて転覆しちゃいますから』


「そう言われても、嵐の影響が少ない場所ってどこさ?」


『例えば、島影とか……とりあえず、陸地付近を探して停泊して、それで……』


「でも陸地なんて見えないぞ?」


 そう言って改めて周りを見渡すが、見渡す限りの海でさっきから景色が全く変わっていなかった。


 もちろん、島なんて影も形も見当たらない。


「……でも、どうにかして島を見つけなきゃヤバいよな」


 ……ってか、もし仮に転覆したりしたらどうなるんだろうな?

 やっぱ、死ぬのか?


 いや、でも俺って沈没してた訳だろ?


 だったら水の中でも平気なんじゃ?


「あれ? そう考えるとなんだかんだ大丈夫な気がしてきたぞ?」


『へ? どういうことです?』


「ほら、俺って元々沈没船じゃん。だったら仮に沈没したとしても、何とかなるかなって」


『言われて見れば確かに……むしろ、無理な要素が見当たらない気がしますね』


「そうだろ?」


 俺がナビにそう言うと、ナビも同じく同意を示した。


『マスターの言う通り沈没しても死ぬ可能性は……おそらくないと思います。そもそも、水の中でおぼれ死ぬのは息してるからですし。マスターは物ですし……死ぬことは無いはずです』


 改めて、ナビにそう言われ、俺は頷く。

 確かに、物がおぼれ死ぬとか前代未聞だからな。


『だから、最悪死ぬことは回避できる可能性が非常に高いですね。ただ……』


「ただ?」


『嵐が来れば、船体に結構なダメージが入る可能性があります。最悪死ぬことが無かったとしても、少しでもダメージを少なくするためにやっぱり陸地を探して近くで停泊した方がいいと思います』


「なるほどね」


 俺はナビの指摘に頷いた。

 確かにナビの言う通り、少しでもダメージは少なくした方がいいよな。


「でも陸地なんてどこにも……あ」


 そう言ってふと上を見上げた俺の目に、一羽のカモメが飛んでいるのが見えた。


「カモメ、か」


『マスター、カモメがどうかしましたか?』


 そう言えばカモメがいる場所って陸が近いんじゃなかったっけ?


 おそらくカモメも、嵐が来るのが分かってるはずだから……


「よし、あのカモメを追うぞ!」


『ほへ? カモメですか?』


「ああ、カモメがいる場所に陸地在り。カモメだってずっと飛んでいられるわけじゃないんだ、近くに休憩できる島があるはず……ほら、見えてきた!」


『おお、本当に島がありましたね。あ、しかも見てください。丁度いい感じに入り江がありますよ』


「本当だ」


『入り江の中は、嵐の影響も少ないでしょうし……とりあえず、あそこに入りましょう』


「ああ!」


 こうして、カモメを追いかけた俺たちは、嵐が来る前に入り江のある小さな島を見つけることができたのだった。

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