第四十七話 苛烈な王妃様
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ルイーズ王妃様の口癖といえば、
「そんなこともあるわよね〜」
「そんな考えもあるわよね〜」
といった類のもので、争いを好まず、大概のことは鷹揚に構えてスルーするといった技術を駆使する人だと思っていたのだけれど・・
「帝国に行くのなら、私が行きますと何度も言いましたよね!その言葉を貴女は忘れたのですか!」
と言って怒り狂った王妃様は怖かった。私ことグレタはビビリまくりましたとも。
私が出発する夫を港まで見送りに行ったということで、実家であるストーメア家も人を港に飛ばしていたし、出かけて行った夫も私のことは全く信用していなかったので、密かに人員を配置。更には、全く信用していない王妃様まで王家を陰から支える人員を用意して、私が逃げ出したら即座に捕まえるためにと動いていたって訳ですよ。
港で見送ったら私は王宮に一旦戻る予定だったらしいんだけど、戻らずにカーディフ港に向かったようだという報告を受けた王妃様は、
「あらそうなの・・」
と言ってため息を吐き出すと、すぐさま騎士服に着替えてしまったというわけです。そう、港に突如現れた王妃様は騎士服を身に纏っていらっしゃったのです。
王家御用達の大商会を動かしたのは、私が気がついて他の港に逃げることを阻止するため。野砲を用意したのは、私にお灸を据えるための手段としたそうです。怖い!怖すぎる!そうして、炎の魔法を爆裂させて船を一隻沈めた王妃様の元に現れたオスカル殿下が、
「母上、ストレス発散をしたいのなら、このままこれからお知らせする船、三隻なのですが、母上の魔力で沈めて来てください」
と、言い出したのだった。
「グレタ夫人、敵側の船だと思うものは良い機会だから燃やして沈めてしまおう」
オスカル殿下は大胆なことを言うと、
「夫人は氷の壁が作れるだろう?だったら母上に付き添って、炎の被害が広がらないように差配してくれたまえ」
と言って、ヘレナとヘレナが用意した書類を持って王宮へと戻って行ってしまったのだった。
「船を三隻、沈めるって言ったって〜」
戦争を大々的にふっかけようとしているハプランス・ポルトゥーナ王国船籍の入国は禁止しているんだけど、他の国の船を利用して悪巧みをするなんてことは十分にやりそうなことなのです。麻薬の蔓延が発覚して以降、入港には厳しい審査が入るようになったんだけど、やっぱり怪しい船はいるわけで、王国からの監視対象となっていたんですよね。
「まあ!イフラバ公国の船まで燃やして良いと言うのね!オスカルったら大胆だわ〜!」
私が殿下から渡された紙を上から覗き見た王妃様は、
「それじゃあ、まずは野砲を動かしましょう!」
と、魔法と野砲の二刀流を使う王妃様は、ウキウキした様子で言い出したのだった。
「なるべく死人が出ないようにするって、なかなかスリリングでエキサイティングな発想ね!」
帝国で軍を率いていたルイーズ王妃にはなかった考えだったようで、
「そうよね〜、捕虜として捕らえればお金になったりするものね〜、全部一気に殲滅してしまえなんて、乱暴にも程があるわよね!私たちは女として、母として、母性を炸裂させなくちゃいけないわよね〜!」
と、意味不明なことを言い出しながらも、なるべく人が死なないように海に落っことしながら船を沈めていったのです。
港で待ち構えていた私たちは、海に落ちた敵側の人間をどんどん拿捕していくことになったんですけれども、
「炎で燃やされたくなければ言うことを聞きなさ〜い!」
頭上に炎の屋根を作られた状態で王妃様に脅されれば、誰しも戦意をすぐさま喪失することになったってわけです。
慌ててやってきた新聞記者をまとめて、取材の受付もしましたとも。今まで危篤状態だと言われていた王妃様が奇跡の復活。各社、号外をばら撒くようにと指示を出しました。
『炎の遣い手であるルイーズ王妃陛下復活!ヴァールベリの守護神は隠れていた敵船を見つけて海に沈めた!我々の炎の女神がいる限り!ヴァールベリ王国が負けることなどあり得ない!』
三つの港で船がボーボー燃え上がる事態となったので、庶民はまるで花火大会を観覧する観客のように港に押し寄せて来たのですよ。数多の国々が王国を狙っているようだけれど、島国ヴァールベリ王国が敗れるわけがない!
「「「「王妃様!ばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!」」」」
やっぱりこの世界にも万歳三唱ってあったんだな。
王妃様の炎の力が強すぎて、途中から国王陛下が炎が広がらないよう調整のために参戦。魔力を出し切った私は国王と交代する形で王宮へと戻ったんだけど、
「ふははははははははっ!」
船を燃やしながら王妃様はまだ笑っていた、そんな王妃様をうっとりした顔で見ているうちの国王はちょっと頭がおかしいのかもしれない。
「グレタ様、完全に不敬ですよ」
「あら?アンネ、またまた私ったら心の声を口から言っていたかしら?」
馬車の中で二人きりとなった為、アンネが私に向かって注意をして来たんだけど、
「あんまりにも声が小さくてあちら様には聞こえていないとは思いますけど、不敬罪で捕まりたくなかったら弁えてくださいませ!」
と、真っ青な顔で言い出した。アンネは巻き込まれ処刑を何処までも恐れているらしい。
私が王宮に到着した時には、すでに夕暮れ時となっていたのだけれど、
「グレタ様!ご無事で何よりです!」
ルドルフ王子を連れたマデレーン妃が私をわざわざ出迎えてくれたのです。
オスカル殿下の妃であるマデレーン様は現在妊娠中でして、大分目立つようになってきたお腹をおさえながら、私の耳元で囁くように言い出したのだった。
「イザベルデが逃亡をしたのよ」
「はい?」
「貴女の誘拐が失敗したと知ったのでしょうね、ジャービス子爵に助けられる形で王宮から抜け出そうとしたのよ」
ジャービス子爵とは、オスカル殿下を次の王にと推している派閥のメンバーなんだけど、イザベルデ妃はオスカル殿下の腹心の部下を、次々と自分の陣営に誘い込むようなことを続けていたっていうことなのだろうね。
ここからラストまで(可能な限り)毎日二話更新でいきます!!16時17時に更新していきますので、お読み頂ければ幸いです!サヴァランと紅茶をあなたに』を読んでいただきありがとうございます!
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