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紅茶とサヴァランをあなたに 【改訂版】  作者: もちづき裕
第三章  イザベルデ編
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第三十二話  公爵と第二王子とグレタの兄

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 カールとヴィアンカは幼い時から決められた婚約者同士であり、二人は長い年月をかけてひっそりと深い愛情を育てて来た。ヴィアンカの母を恨む側妃エリザベートを警戒して、決して仲が良い素振りは見せないようにしたものの、最後の最後で、イザベルデの我儘によって二人の仲は引き裂かれることになったのだ。


 婚姻後もカールはエリザベートとイザベルデ親子を警戒していた為、自分の愛するヴィアンカを二人が亡き者にしようとしていることにもすぐに気が付くことになった。親よりも年上となるハインリヒ・ゲッティンゲル公爵の後妻として輿入れをする途中、ヴィアンカを暗殺することで、迎え入れるハインリヒ側の不手際として陥れようと考えたのだ。


 建国の時から王家を支え続けるゲッティンゲル公爵家はハプランスの王にとっては目の上のたん瘤のような存在だったのは間違いない。隣国の姫君を無事に守りきれなかった咎を作るためにハプランス王国に入国後に襲撃が出来るよう、王家自らが手まわしをしている。その事からも分かる通り、ヴィアンカもハインリヒも一緒に潰そうと考えたのだろう。


 それを阻止しようとカールは動いたが、一歩遅く、ヴィアンカは命を失うことはなかったものの、二度と歩けないほどの大怪我を負うこととなったのだ。


 以降、公爵は離れ屋をヴィアンカの為に用意して、カール殿下がいつ訪問しても良いように手配をした。元々公爵は新しい妻など娶るつもりはなかったのだ、書類上の妻が離れ屋で何をしようが今までは黙認し続けた。


「君が出発するのと同時に、ヴィアンカは本邸の方へ移動させよう。それから、孫のブランドンがここにやって来ると言うので、この離れ家を使わせようと考えているのだが・・」


 ブランドンはハインリヒの娘アウレリアの息子であり、ヴァールベリ王国アンデルバリ公爵家の嫡男である。

「しばらくの間は、彼らをゲッティンゲル公爵家に預ける形で問題ありません。私の方もヴィアンカをお預けしている身、なるべく公爵の望むような形に進めていきたいと思います」

「まことに・・我が娘が申し訳ないことを・・」

「アウレリア様が悪いというよりも、それを裏で操っていた輩が問題なのですよ」


 カールが苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていると、話を聞いていたストーン商会の会頭ヨエルが、暗くなった空気を明るく変えるようにして言い出した。


「何にせよ、全ては敵が思う通りには運ばずに済みそうではありますけどね」


 ヨエルの妹グレタはヴァルストロム侯爵の元へと嫁いでいるのだが、彼女の価値は計り知れないものであることを兄のヨエルは知っている。


「ポルトゥーナ王国には我が商会も深く潜り込んでいるため、新聞社を秘密裏に一社買い上げて、我が国で話題の『秘密』を毎日連載したのです」

「その『秘密』は、貴殿の妹が執筆しているものなのだろう?」


「そうです、そうです。妹執筆のエロと陰謀満載の小説をですね、毎日、毎日連載したところ『伯爵夫人の夜の楽しみ』と同じように、ポルトゥーナでも大人気となったのです」

「では、王家の面々もお読みになったのか?」

「それはもちろんです!」


 王家の人間が下賎な読み物を堂々と読むことをあまり良しとしないのは何処の国でも同じようなものの『伯爵夫人の夜の楽しみ』の作者が執筆する新作となれば、話は大分変わってくることになる。


 貴族の内情を緻密に描き出した物語の中には、過去に実際にあった策略、謀略が含まれているため、読み物としても面白いし、流行を捉えるのにも丁度良い。ここ最近の下々の貴族が何を考え、どのような策を描いているのかなど、参考にするのにも丁度良い読み物として、高位身分の人間にも人気がある。 


 そんな『秘密』で語られるのは、赤裸々な貴婦人たちの秘め事。それは、ロトワ中央では当たり前に知られたことであっても、ロトワ西方諸国に住み暮らす貴族たちにとってはセンセーショナルな内容だったのは間違いない。


「噂によると、ポルトゥーナの国王は側妃であるエリザベート様の蟄居をお命じになったそうですよ」

「なんと・・そうか・・」

 ハインリヒは思わず拳を握り締めた。


 エリザベートはハプランスの国王が溺愛する姫君でもあり、姫の輿入れ先となったポルトゥーナ王国では、エリザベートの所為で過去二度ほど、ハプランスからの穀物輸入を停止され、国内が大騒ぎとなっている。


 自分の意にそまぬことを嫌うエリザベートは、すぐさま、隣国の王に告げ口をする。そうして穀物をすぐに引き合いに出して我儘を通そうとするため、エリザベートはポルトゥーナ王国内で非常に人気が低いのだ。


「あの物語は、側妃エリザベートとその娘イザベルデの物語であると分かるように作られております」


 輿入れしたエリザベートがなかなか身籠らなかったのは有名な話であるし、エリザベートが産んだ王子と王女が、国王に全く似ていないというのも知られた話。ただ、正妃や側妃は浮気をしないように完全に管理されて生活をしている為、他の男の子供を産んでいるという疑惑が持たれることはなかったのだ。


 だがしかし、毎日連載される『秘密』で、たとえ行為がなくても妊娠できるという事実が暴かれた。実際に、ヴァールベリ王国に輿入れしたアウレリア夫人は、ハプランス人の男の子種を利用して、ヴァールベリ王国の公爵夫人でありながら、生粋のハプランス人の子供を産み落としているのである。


 長男を麻薬中毒で廃してハプランス人である次男を公爵家当主に据えようとしていたという話はすでにポルトゥーナの王家にも伝えているし、ハプランスの姫であるエリザベート妃には気をつけろと警告文も送っている。


 最近、エリザベートは自分の生んだ王子こそ次の王位に相応しいとして、地道なロビー活動を繰り返しているという。ハプランス人の地道なロビー活動には麻薬が絡んでいるということは間違いない。そのことも加えて忠告をしたところ、エリザベートは蟄居することになったのだ。


「小説ひとつで、王家を動かすだなんて・・」

 ハインリヒが思わず呆れた声をあげると、

「もっと、もっと動かしていくつもりですよ」

 と、グレタの兄であるヨエルが皮肉な笑みを浮かべながら言い出した。


「何せ、未だに連合軍は結成したままですし、両国はヴァールベリ王国を属国としたくて仕方がないんですからね」


 ポルトゥーナの王はエリザベートを蟄居させたものの、上陸作戦のための兵士の集結を中止にはしていない。ハプランス、ポルトゥーナ両国の王はヴァールベリ王国を決して諦めてはいないのだ。


サヴァランと紅茶をあなたに』の改訂版ですが、読んでいただきありがとうございます!イザベルデ編となり、これから国の駆け引きと女のドロドロを混えながら話がどんどん進んでいきますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです!!


モチベーションの維持にも繋がります。

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