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紅茶とサヴァランをあなたに 【改訂版】  作者: もちづき裕
第三章  イザベルデ編
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第十九話  イザベルデ妃の陰謀

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 安陽国の紅茶を愛した王妃は麻薬入りとは知りもせずに、毎日毎朝愛飲した。ルイーザ王妃に古くから仕える専属侍女が麻薬ミディの管理をしているため、王妃は全く気が付かないうちに麻薬中毒となっている。


 イザベルデと一緒にお茶をする時には上物を紅茶の中に混ぜ込むようにしている為、無意識のうちに王妃はイザベルデの言うことなら何でも鵜呑みにするようになっていた。王妃が麻薬中毒であるとバレたとしても、まずは王妃に仕える専属侍女たちが疑われることになるだろう。


 イザベルデが密かに利用をしている帝国から来た侍女は王妃の乳母の娘であり、王妃とは姉妹のように仲が良いのは有名な話だ。王妃が王国に嫁ぐということになって輿入れ先までついてきた人でもある。


 忠義の人ではあったものの、未婚である自分の境遇に寂しさを感じるところはあったようで、そんな心の隙を突くような形でこちら側へと取り込んだ。侍女は舞台を観覧することが好きだったから、お気に入りの役者を利用して夢中にさせたのだ。


 のんびりとした性格のルイーザ王妃は姉妹のように仲の良い侍女の意見を尊重するようなところがある。そこからは、王妃を意のままに動かすのは簡単なことだった。


 ルイーザ王妃はオルランディ帝国の皇帝から溺愛されているし、ヴァールベリ王国の国王ウェントワースの愛する王妃でもある。皇帝も国王も愛するルイーザの言うことには、想像を超えるほどの価値がある。イザベルデは王妃の言葉を利用して、王国内で大きな派閥を作り出すことに成功したのだった。


「イザベルデ妃殿下、どうやらルイーザ王妃陛下の暑気あたりは深刻なようで、最近では寝込んだまま起きるのもままならなくなっているとのことでございます」


「ふーん、とりあえず、医者の方は大丈夫なのよね?」

「そちらは全く問題ありません」


 王家の人間を診ることになる御典医は三人ほどいるのだが、王妃のお気に入りとなっている医者をイザベルデは懐柔していた。王妃にはごく少量ずつミディを摂取させたつもりだったけれど、体に麻薬の成分が蓄積する関係から、いつ、体調を崩すか分からない。そこがこの麻薬の使い勝手の悪いところでもある。


 もしも具合が悪くなったら『暑気あたり』であると医者が言い出すように手を回しをしている。王妃が重度の症状を呈するようになったら、毒を与えて殺すようにも指示を出している。


 麻薬を与えているのが帝国から連れてきた侍女であるため、王妃を毒で殺した後には、

「私を独身のまま身近に置き続けた王妃様が憎かったから」

 という理由で、侍女を犯人として祭り上げる予定にもなっている。

「とっても使い勝手が良かったんだけど・・」

 ハアッとため息を吐き出したイザベルデは、侍女に王妃への見舞いの品を用意するように命じたのだった。


 今日は複数の伯爵夫人を招いてのお茶会の予定だったのだが、その予定を変更して王妃様への見舞いに行こうかと考えた。王妃宮の人間は帝国人の侍女が意のままに使っているため、いくら王妃の具合が悪くとも、イザベルデの見舞いは受け入れてくれるのに違いない。


 いつもに比べれば茶会に集まった貴婦人は少ないように見受けられたが、イザベルデはそんなことを気にしない。

「妃殿下、あの・・その・・サンライフはお読みになりましたか?」


 一人の貴婦人から意を決したような様子でそう問いかけられたため、イザベルデは楽しげに瞳を細めた。商人のサム・クラフリンには『伯爵夫人の夜の楽しみ』の作者にマデレーン妃を貶めるような小説を書かせるように命じていたことを思い出したのだ。


 恐る恐る窺うようにこちらを見る貴婦人たちの姿を見て、イザベルデは満足そうに笑みを浮かべた。


 『伯爵夫人の夜の楽しみ』はレッドメイン伯爵家を糾弾するきっかけにもなった小説である。中年太りした伯爵夫人の過激な性への執着に対する描き方が凄かったし、赤裸々に語られるSでMの世界が、隠れた読者(主に貴婦人たち)の心をガッチリと掴み取ることになったのだ。


 エロあり、陰謀あり、下剋上あり、ざまあみろありの展開で、読者が夢中になっている間にレッドメイン伯爵家は完全に傾いた。ペンを持つ作者の力は恐るべきものであり、イザベルデは今回もマデレーンに向けて発揮されたのだと判断したのだ。


 イザベルデは文章を読むのが元々好きではないので、クラフリンに頼んだ小説がどういったものとなったのか確認すらしていないのだが・・

「私はサンライフという(三流)新聞を読むことはないのですけれど、火のないところに煙は立たないと言いますものね」

 とイザベルデが言うと、目に見える形で貴婦人たちが動揺を露わにした。


 最近、国民の人気が高くなっているマデレーン妃を失墜させるために、三流新聞に載る小説を利用したらどうかと考えたのだが、貴婦人たちの反応を見るに、今回も読者を興奮させるような過激な内容となっているのだろう。


 今回はマデレーンが主人公なわけだから一体どういった内容となっているのだろうか?結婚前に恋仲だった騎士と再会し、焼け木杭に火がついたように恋に溺れるマデレーン・・ではありきたり過ぎるか。奇想天外な展開を好む作家だから、イザベルデでも想像出来るような内容にするわけがないし・・


 クラフリンに新聞社に圧をかけ小説を掲載するようにと命じていたことを思い出したイザベルデが、侍女に命じてサンライフの小説を読めるようにしてもらおうと考えていると、

「申し訳ありません、私、所用がございまして」

「誠に申し訳ありません、私も・・」

 と、言い出した貴婦人が数名、席を立っていく。


 最終的に残った八名の貴婦人を連れて王妃様へのお見舞いに出向くことになったのだが、去っていく貴婦人のことなど、イザベルデは気にもかけずに席から立ち上がることになったのだ。


本日、もう一話更新します!

サヴァランと紅茶をあなたに』の改訂版ですが、読んでいただきありがとうございます!イザベルデ編となり、これから国の駆け引きと女のドロドロを混えながら話がどんどん進んでいきますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです!!


モチベーションの維持にも繋がります。

もし宜しければ

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