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紅茶とサヴァランをあなたに 【改訂版】  作者: もちづき裕
第三章  イザベルデ編
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第十七話  聖女降臨

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 オスカルの要請でルイーズ王妃のお見舞いをすることになった私こと、侯爵夫人であるグレタは、

「あ・・これアカン奴だわ〜」

 と、即座に判断することになったわけです。


 一体、どれほどの長期間ミディを与えられ続けたのか分からないんですけど、麻薬が切れた状態の王妃は、ほぼほぼ末期の状態だったんですね。私、イレネウ島のありとあらゆる麻薬中毒患者を収容所に捕獲した関係で、麻薬の軽度、重度は見ただけで分かるようになりました。これは間違いなく、アカン奴だと言えるでしょう。


 禁断症状で暴れる王妃様はベッドにシーツで縛りつけられるような状態だったんですけど、緑茶を飲ませると、落ち着いていられる時間がだいぶ伸びる・・だいぶ伸びるんだけど・・王妃様の体の負担を考えたら早急に対応する必要があるって判断したわけです。


「頼む・・妃を・・妃を助けてくれ・・」


 落ち込む国王陛下は奥様のことを相当に愛しているのでしょう、妃が禁断症状を発してから使い物にならなくなって公務を放棄しているのだそうです。


「「「グレタ様!何とか出来るのならお願いします!何とかしてください!」」」


 なんてことを色々な人から言われたんだけど、私には無理そう。これはもう・・聖女様を呼びましょう!あの娘の調薬技術は暴れる麻薬中毒のお兄さんも一発で黙らせる力を持っているほどだものね!


「グレタ様ー!」

「グレタ様ー!」


 王家が所有する最高に早く移動出来るという帆船でイレネウ島からやって来たマリーとソフィーの姉妹が母親に抱えられるようにしながらこちらに手を振っている。麻薬の密売組織に夫を殺されたケイシーだったけれども、最近になってようやっと元気になったようで、二人の娘が王都へ移動をするならと一緒について来てくれたようだった。


 実は元気になってみて分かったんだけど、二人の母であるケイシーにも癒しの力があったらしくって、

「グレタ様、私は娘たちほど力がありませんが、こちらで麻薬患者のお世話をするのなら、少しでもお力になれたらと思ってやって来ました」

 と言って深々と頭を下げたのだった。


「ケイシー!有り難う!お母さんも一緒の方が二人も安心するだろうから、一緒に来てくれて良かったわ!」

 私はケイシーの手を握りながら喜びの声を上げました。


 イレネウ島にはミディ(麻薬)の粗悪品が大量に売り捌かれる形となったんですよね。当時、王家は国庫の足しにするためにという理由で、イレネウ島を売却したところでもあった為、島民の間には王家に見捨てられたという気持ちと、これからどうなってしまうんだろうという不安感があったわけです。そこを上手く利用されたということになるのですが、収容所に麻薬患者を集めてみたら、それは驚くほどの人数となったわけです。


 その麻薬患者の面倒を見てきたケイシーは、どんな患者さんでも自分なりのお手伝いは出来るだろうと考えてくれたんですね。侯爵様ご夫妻にはお世話になっているし、親子三人で安心して暮らせるのも侯爵様ご夫妻あってのことと、考えてくれたみたい。


 侯爵様たちがお世話になっている人が麻薬の中毒症状を呈しているため、マリーとソフィの力を貸して欲しいと伝え聞いた時には、

「私たちで頑張って回復させてあげましょう!」

 と、あまり深いことは考えずに、お役に少しでも立てるように頑張ろうという意気込みを見せてくれたわけです。


 そう、私は馬車で移動中に、誰を治療するとかそういったことは一切伝えていなかったことに気が付いたわけですよ。


「わあああ!お城だーー!」

「本当だ!あれはお城だーー!初めて見たー!」


 子供たちは次第に近づいてくる白亜の城を見て興奮の声をあげているけれど、ケイシーの顔がどんどん真っ白になっていく。

「あの・・グレタ様・・娘たちの力を是非とも貸して欲しいということですが・・一体誰が麻薬で苦しまれているということになるのでしょうか?」

 そこで恐る恐るといった感じでケイシーが問いかけて来たのだけれど、こういうことは誤魔化しても仕方がないと思って、ズバッと言ってしまいましたとも。


「外には絶対に漏らしては駄目なのだけれど、お城に入る前に言っておくわ」

 ケイシーが生唾を飲み込む音がここまで聞こえてくるわ!

「あのね、言っていた麻薬中毒患者というのは・・実はヴァールベリ王国の王妃であるルイーズ陛下なのよ」

「・・・」

 ケイシーはそのまま白目を剥くと、その場で失神してしまった。

 うん、そうだね。元々、体が弱い人だし、心的ショックで気絶とかは平気でしてしまうかもってことをすっかり私は忘れていたわ。ごめん。



     ◇◇◇



 王妃様の容態を確認した妻のグレタから、

「これから聖女を降臨させます」

 と、言われた時には、何を言っているのかと呆れかえっていたのだが、

「侯爵様ー!」

「侯爵様!お久しぶりですー!」

 停車した馬車からマリーとソフィーが飛び出すように降りて来て飛びついてくるのを抱き上げながら、そういやこの二人(特にマリーが)がイレネウ島の酔っ払いから、

「聖女様!有り難う!有り難う!」

 と、言われていたのを思い出した。


 癒しの力を持つ六歳のマリーは、父親亡き後は母と妹を養うために森から取ってきた薬草を煎じて薬として、それを酔っ払いに売って小金を稼いでいたという時期がある。とにかくマリーの二日酔いの薬は良く効くということで、

「聖女様!薬を!」

「聖女様!俺にも薬を売ってくれ!」

 と、冗談混じりに言われていたのだ。


「ステラン様〜!ちょっと助けてください〜!」

 馬車の中からグレタの助けを求める声が聞こえてきたので、二人を抱きかかえたまま馬車を覗き込むと、二人の母であるケイシーが白目を剥いて倒れている。


「誰を治療するか教えたら、こんなことになってしまったのよ!」

「君ときたら、本当にそういうところがあるよな!」


 私の妻は常軌を逸した優秀ぶりを発揮する女なのだが、大概、巻き込まれた周りの人間は振り回されて散々な目に遭うことになるのだ。妻の家が所有するメゾンしかり、風船職人しかり。今ではサヴァラン工場の従業員が疲弊に疲弊を重ねていることだろう。


 ただし見返りが多いのが魅力的でもあるため、

「グレタ様ときたら・・いつでも何処でも・・本当に仕方ないですねえ」

 と、自分の妻が言われているのを私は何度も聞いている。


 侍従を呼んでケイシーは一旦、侍女に預けて休ませるように命じると、馬車から降りて来た妻が言い出した。


「マリー、ソフィー、申し訳ないんだけど私はこれから患者さんの面倒を診なくちゃならないんだけど、二人は疲れちゃった?ケイシーと一緒に休む?」

「ソフィは大丈夫だよ!」

「大至急で回復させたい人がいるんでしょう?」

「それじゃあ、二人には一緒に来てもらおうかな!」


 六歳児と四歳児を休ませもせずに王妃様のところに連れて行こうとする強引さ、うちの妻にはそういうところがあるんだよな〜。


サヴァランと紅茶をあなたに』の改訂版ですが、読んでいただきありがとうございます!イザベルデ編となり、これから国の駆け引きと女のドロドロを混えながら話がどんどん進んでいきますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです!!


モチベーションの維持にも繋がります。

もし宜しければ

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