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紅茶とサヴァランをあなたに 【改訂版】  作者: もちづき裕
第三章  イザベルデ編
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第五話  ペンは剣よりも強し ②

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

「ちょっと待って」

「嘘だろう?」

「これって本当のことなのかよ?」


 翌朝、三流新聞『サンライフ』は一面の記事を号外として無料で市民に配り、詳細を知りたければ新聞を購入して確認して欲しいという流れにしたところ、売れた、売れた、馬鹿みたいに売れた訳ですよ。


 最近、お貴族様愛用の『白粉』とやらが下々の方にまで降りてきて、驚くほどにバカ売れしていたって訳ですよ。白粉は女性を美しく見せる重要なアイテムになるんですが、これを大量に塗りまくっている職種がこの世の中にはおります。


 本国(安陽)では鉛中毒が問題となって売れなくなってしまった鉛入りの白粉だけれど、それを紅茶と一緒に運んで来た安陽の商人が安値でヴァールベリ王国に卸して大儲けしたって訳です。


 ヴァールベリ王国はロトワ大陸の西方に浮かぶ島国です。大陸で売って『鉛中毒』が問題になれば複数の国々から非難を受けることになるけれど、島国限定で売れば、問題が大きくなっても商売を切り捨てれば問題ないとでも思ったんですかね?


 なにしろ安陽の紅茶をヴァールベリのお貴族様は競い合うように飲んでいるし、紅茶のない人生なんて許せない!認めない!状態に陥っているので、たかを括っていたのでしょう。


「乳児の死亡も勿論、大問題となるのだが、商売女を相手にお楽しみの男性は要注意だ〜?」

 号外を貰った男性たちが、驚き慌てないわけがないのです。

 どうして商売女を相手にすると問題になるのかは、新聞を購入の上でご確認ください。サンライフはエロが大好きな読者が好んで読む三流紙なので、自分自身にクリティカルヒットをするような文言を並べ立てた訳ですね。


 つまりはどういうことかと言うとですね、白粉に鉛が含まれている関係で、乳房に塗られた白粉を母乳と一緒に飲んだ乳児が鉛中毒を起こして死亡しているっていう訳ですよ。乳房に塗られた白粉を口中に含んで・・もう分かりますよね、分かってくれると思います。


 自分の体を綺麗に見せたいという女性は、かなり広範囲に渡って白粉を叩いていたりする訳です。それをナメナメしちゃった人は、乳児だろうが大人だろうが、鉛を口中に含むことになっちゃう訳です。


 ちなみに乳児の場合は中毒症状が重篤化して死に至る訳ですけれども、これが大人の場合だったならば・・

「大人の鉛中毒の症状は・・頭痛、倦怠感、脱力、手足の震え、骨や関節痛の増強による歩行障害、口中の金属味による食欲不振、嘔吐、腹痛、人格の変化だって!」

 こんな症状が出る訳ですね。思い当たることがある人は、新聞を握り締めながらブルブルと震え出したらしいです。


「冗談じゃないわよ!子供に危険な商品を売るだなんて!一体どういうつもりなのよ!」


 身に覚えのある男性諸君は恐怖に震え出したのと同じ頃、子を持つ母親たちは怒りに震え出したって訳ですよ。鉛中毒で子供が死ぬかもしれない?はあ?一体どういうこと?と、いっ時は呆然自失となりますし、その後には燃えるような怒りが湧いてくることになるわけです。まずはみなさま、自分の手持ちの白粉をゴミ箱に投げ捨てることから始めたそうです。


 おい!まじかよ!白粉ってかなりヤバい商品じゃねえかよ!どうしてくれんだよー!と、みんなが怒り心頭となっているところに来て、次の日の『サンライフ』の記事がすごかった。


『我が社の『白粉』に関する特集記事を読んで、何故、もっと早く教えてくれなかったのだと思う人も多かったことと思う。我々が勇気を持ってもっと早くにペンを持てば、救える命も多かった。体に不調をきたす人が増えていくのを事前に防ぐことも出来ただろう。だがしかし、我々にも大きな事情があったのだ。それは何故かと言うのなら『白粉』販売の後ろには大きな陰謀が隠されていたからなのだ』


『皆は覚えているだろうか?毎日、当誌で連載していた『伯爵夫人の夜のお楽しみ』を。あれもまた、悪徳貴族を追い詰めるための告発文のようなものであり、多くの貴族が連載をやめるようにと我が社へと圧力をかけてきた。その圧力が再び、我が社を襲ってきたと想像して頂きたい』


『鉛入りの白粉を広めることで一体、誰にどんな利益が生じるのか?その利益の先にどんな悪事が待ち構えているのか?我々は取材を続けるうちに、国と国が絡んだ大きな陰謀を知ることになってしまったのだ』


 もう、ここから大体の人がワクワクしてきますよね。


『鉛入りの白粉で乳児を死亡させることで、ヴァールベリ王国の人口は一時的にでも減ってしまえばどうなるのだろうか?』

『鉛中毒を発症している成人男性の年齢の推移を見て、想像することは出来ないだろうか?被害を被っているのは、いざ、我が国が戦争となった時に戦地へと戦いに行く男たちとなるのではないか?』


 この都市伝説的な胡散臭さが『サンライフ』っぽいな〜と思うんだけど、

『我が国に戦争を仕掛けようとしている国が、何年も前からヴァールベリ王国に潜入し、何年にも渡って暗躍しているのは間違いない事実。一体、誰が白粉を我が国に持ち込んだのか?誰が鉛入りを我が国に広めようとしたのか?我々の命を懸けた取材はまだまだ続く・・』

 みたいなね〜、こういう胡散臭さが『サンライフ』らしいのよ!


 サンライフには『白粉』の追跡調査を毎日、記事として載っけてもらうことにして、

「いつだよ!いつ、暗躍している国が分かるんだよ!」

 早く結末が知りたい購読者を引っ張り続けることが出来るだろう。


 普段だったら『サンライフ』なんていう三流紙、お貴族様たちなんか歯牙にもかけないんだけど、内容が『乳児の死亡』となるだけに、

「平民の読む新聞だから〜」

 などと呑気なことを言っている場合ではなくなった。


 貴族の第一の命題って何だか分かります?

 実はこれ、私も夫に直接言われてもいます。


 貴族にとって兎にも角にも一番大事なこと、貴族の責務とも言われていること。それは『子作り』ですのよ。家を守るため、正統なる血を守り継承し続けるため、子供を作るということは、貴族にとって非常〜に重要なことなんです。


 その非常に大事な子供がですね、赤ちゃんの時点で、美しく見せるというだけのアイテム『白粉』の所為で、死んじゃうかもしれないんですよ。


 その『白粉』をナメナメした経験がある貴族男性もそりゃ多い訳でして、え?中毒症状、それヤバない?みたいになって、表面上は冷静を保っていても心中は大パニック状態になった訳ですよ。


「グレタ様、グレタ様?」

「うん?なにかしら?」

「エスタード紙の編集長をされるトム・グラント様が奥様に面会をしたいと申し出ておりますが、如何なさいますか?」


 家令のジョアンを振り返った私は、

「陰謀説がエスタード紙を刺激しちゃったかしら?」

 と、アンネに言うと、

「奥様の陰謀説がどこまで読者を引っ張れるか、楽しみにしていますから!」

 と、アンネがにこやかな笑顔で言い出した。


 ちなみに陰謀説が(どこの国なのか表沙汰にしないまま)何日間引っ張れるのかということで、ストーン商会とサンライフ紙の記者の間で賭け事が行われている状態なのだ。私は二ヶ月は引っ張れると思っているんだけど、一番高いオッズは号外後、十五日目となっております。


サヴァランと紅茶をあなたに』の改訂版ですが、読んでいただきありがとうございます!イザベルデ編となり、これから国の駆け引きと女のドロドロを混えながら話がどんどん進んでいきますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです!!


モチベーションの維持にも繋がります。

もし宜しければ

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― 新着の感想 ―
[良い点] 毎日の更新本当にありがとうございます。 いつもいつもとても良いところで終わるので次の更新が待ち遠しくて仕方がないです。 これからも応援しています。
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