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第八話  サヴァランとババ

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 どっぷり新婚旅行みたいな五日間を過ごした私たちは、小型の高速船(帆船なのでメチャクチャ揺れる)に乗って、一路本国を目指すことになったわけ。船酔いが酷いアンネは個室に一人放置して、私たちはどうやってお茶を販売していくかという経営戦略を船の中で練ることになったんだけど・・


「奥様、私も何故、サヴァランに奥様がこだわるのか気に掛かるところではあるのですが・・」

「え?サヴァランが駄目だった?」

「いや、駄目だというわけでは決してないのだが」


 何故、侯爵と秘書はさっきらモジモジしているのだろうか?

 ここはきっちり説明しなければならないと覚悟した私は、紙に焼き菓子のフォルムを描きながら説明をすることにしたのだった。


「我々の敵であるイザベルデ妃は現在、王国に紅茶の文化を広めることで、大きな勢力を国内に作り出しています」


 元々、お茶というのはヴァールベリ王国では薬のように飲まれていたものなんだけど、イザベルデ妃がポルトゥーナ王国から茶道具とお茶の習慣をわが国に導入したってわけで、そこからお茶が大好きになったヴァールベリ人は競うようにして安陽国からもたらされる紅茶を購入していったわけです。


 紅茶の購入で財政が傾く中、遂には破産する貴族まで出てくる始末。紅茶を購入する代わりに銀の輸出をしていたヴァールベリとしては、鉱山の採掘量の減少を経て、正当な手段で購入なんかしないで安陽を征服しちゃった方が良いんじゃないの?という過激な意見が出てくるようになったんですね。


 お茶の為に遥かに遠い西に位置する国を占領支配するなんてことを言い出すのは、紅茶に夢中な上にイザベルデ妃を崇拝する人々で、

「王都では安陽の紅茶しか飲むことは許されない!」

 とまで豪語するほどの過激なグループと化していたんですね。


 この一派に阻まれる形でロムーナ茶の販売は頓挫する形となったわけだけれど、そんな王都で『ロムーナのデトックス茶!麻薬の症状も治療する優れもの!今ならお買い得でーす!』なんて喧伝しながら売りに出すつもりは全くない。


「サヴァランの優れているところは、イザベルデ妃がわが国に持ち込んだポルトゥーナの焼き菓子ババと非常に似ているところなんです」


 バターと卵をたっぷりと使った焼き菓子ブリオッシュにレーズンを加えたものをババと呼ぶ。ポリトゥーナの王族は代々この焼き菓子が好物であり、ラム酒入りのシロップに浸して食べるのだ。


 ポルトゥーナ王国から嫁いできたイザベルデ妃は、紅茶と共にポルトゥーナの焼き菓子を流行らせた。その為、貴族たちはお茶菓子としてババを用意するのがマナーの一つとされている。


「ババに良く似た焼き菓子を王都で売りに出しても、妃殿下を尊敬しているので、妃殿下が推奨するババ(焼き菓子)は恐れおおくて作ることは出来ないが、それに似た物を作ることでこの熱い思いを表現しているのです!とか何とか言えば、うるさい連中を黙らせることは出来ると思うんです」


 ババはラム酒入りのシロップに浸すことになるのだが、サヴァランは紅茶入りのシロップに浸すことになる。もちろんこの紅茶にはデトックス茶(初期作品を再加工した駄物)を使うことにする。


 王都の人間は、まずはサヴァランを食べることによって悪いものを排出して、より健康になっていくってわけですね。


「サヴァランを流行させるには、第一王子夫妻にインフルエンサーとなってもらいます。そして、十分にサヴァランを流行させたところでデトックス茶を販売します。美味しいお菓子はたくさん食べたい。だけど、たくさん食べればお腹の肉はあっという間に増えていく。カロリーを多く摂取した女性たちは、肥満、むくみ、顔の吹き出物に悩むことでしょう。そこで登場するのがロムーナ茶です。平民だけでなく、貴婦人たちにも流行させてヒイヒイ言わせてやりたいと思っておりますの」


「奥様・・そのサヴァランなんですが、イザベルデ妃の持ち込んだババに良く似た焼き菓子だということはよく分かりました。そこで質問なのですが、何故、サヴァランという名前がついているのですか?」


「え?確か〜」

 日本で流行した時に、確かテレビで特集していたのよ。

「この美味しい焼き菓子を評価した評論家の名前がサヴァランという名前だったから、だからこそ『サヴァラン』という名前がついたのよ」


 ズルーッと何故、侯爵と秘書がずっこけたのか、この時の私は知りもしなかったのだ。まさかこのサヴァランという名前が、タクラマ神聖国で使われる言葉で『あなたを愛します』という意味になるなんて知らないし、今までの失態を必死になって挽回している侯爵様が、実は私から『愛しています』なんていうメッセージを受け取ったものと勘違いして挙動不審となっていたなんて、そんなことを私がカケラほども気が付くわけがない。


「そうか・・評論家の名前がサヴァランだから、サヴァランという名前の菓子なのだな」


「そうです。あま〜いあま〜いフルーツとか紅茶のシロップに突っ込んだ焼き菓子で、上に生のフルーツを載せたり、甘く煮た果物や、クリームをどっぷりと上に載せても良い、アレンジ自由の焼き菓子なんです。そのカロリーは天井知らずとなるため、肥満の元とも言えるでしょうけどね」


「愛の菓子が肥満の元か・・」

「何か言いました?」

「いや・・別に良いんだ」

「そうですか?」


 なんだか様子がおかしいけれど、

「まあいっか」

 と、思うことにした。なにしろ王都に戻ったら、真実愛する人(義妹ヘレナ)がいるわけだし、すぐ様正式な妻は放置して、本邸で何ヶ月も待ち暮らす愛しい人の元へ戻るだろうと思い込んでいたから、正直に言ってどうでも良いと考えていたのかもしれない。


『サヴァランと紅茶をあなたに』の改訂版ですが、読んでいただきありがとうございます!王国編となり、これから女のドロドロも混えながら話が進んでいきますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです!!


モチベーションの維持にも繋がります。

もし宜しければ

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