第七話 どうした侯爵
お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。
地雷女と化した私、グレタは主張を続けましたとも!
「私はパン屋と一緒にサヴァラン専門店を開いた後は、喫茶店を開こうと思っているのです!コーヒーショップは男性がタバコとコーヒーを楽しむ場所というイメージが強いのですが、喫茶店とは女性も利用が出来る!ケーキや紅茶を楽しむ場所なのです!」
喫茶店やりた〜い!出ました!これぞまさに地雷発言!お前、そんな非現実的なこと言ってんなよ!喫茶店なんてもの、この世界に存在してねえだろ!女がケーキや紅茶を楽しむ?そんなもん家でやってろ!と、絶対に言い出すのに違いない!
私がどんな暴言でも受けて立つ!というような意気込みで待ち構えていると、
「女性が利用する飲食店というのが今ひとつ想像が出来ないのだが、君がやりたいというのならその『喫茶店』を是非ともやろう」
と、侯爵様が言い出した。
「この喫茶店では安陽国の茶葉は置かず、ロムーナの緑茶、紅茶、烏龍茶とハーブティーを出すことにします!この喫茶店がウケた後には満を持して!茶葉を売る専門店を開きます。安陽国の紅茶しか許さないという輩の目を逸らしながら、王国貴族をヒイヒイ言わせてやろうかと考えているんです!」
「そうなのか、わかった」
「店舗展開をするにあたり、情報戦を仕掛けたいと思います。それには、オスカル殿下とマデレーン妃殿下にインフルエンサーとなってもらいたいと思います」
「わかった、殿下にも協力を要請しよう」
どうした侯爵!そこは、
「お前のようなズブの素人がケーキ屋?喫茶店?ハンッ!一年も持たずに潰れるのが目に見えるよ!」
と、居丈高に言うところだろうに!
「ところでグレタ、一つ質問があるのだが」
キタキタキタキタ、どんな嫌味が出て来るんだ?パン屋、ケーキ屋、カフェ経営は、夢みがちな女性が考える夢見る職業だろうって?お前には似合っていないんだよ!くらいは言い出しそう!
「インフルエンサーとはなんなんだ?」
そこか・・・嫌味の応酬に備えて待ち構えていた私がガックリと項垂れると、侯爵は形の良い眉をハの字に下げながら言い出した。
「グレタ、私たちの始まりは確かに私の所為で最悪のものになったとは思うが、前にも話した通り、戦争を阻止するためには夫婦で一致団結してことに当たる必要があるんだ。不愉快に思うことも多いかもしれないが、君の協力なくしてこの戦争は止められないと私は考えている」
大袈裟過ぎる、大袈裟過ぎるよ、侯爵様。
「奥様、私からもお願い致します。奥様は侯爵家の救世主、主人は軍隊上がり、無骨で気が利かなくて、奥様がご不満に思うのも、ごもっともなのですが、是非とも!是非ともご協力ください!」
最近になって、秘書のウルリックの態度もガラリと変わった。どうやら、侯爵様も秘書のウルリックも、大きな誤解をしていたらしいのだ。
それがどんな誤解かというと、うちの子爵家が所有するストーン商会は破竹の勢いで大きくなったけれど、それは子爵家の財力と幸運が重なって可能となったことであって、中で子爵令嬢が働いているとは言っても、ほんの形ばかりのものだろうと思い込んでいたらしいんです。
ロムーナ茶を王都に売り出すために、ストーン商会に協力を要請した侯爵様なんだけど、私の父と兄は、
「(私、グレタと)結婚した方が早い」
と、言い出したみたいなの。
父と兄は私のアイデアでここまで商会が大きくなったから、私が侯爵様の嫁になればあっという間に成果を上げるだろうと(親バカ的な発想で)思ったらしいのだ。
だけど、侯爵様としては、女性が活躍出来ない閉鎖的な王国の考えに凝り固まっていただけに、
「とりあえずはストーン商会に陰ながら協力頂く形とするのなら、令嬢(私、グレタ)と結婚することによって縁を結んだ方が、敵(イザベルデ妃)を欺くにはちょうど良いのだろう」
と、考えた。私が起点となって何かをするという発想がなかったんですね。
なにしろ子爵家の令嬢グレタ(私)は二十歳、行き遅れ一歩手前状態の焦りに焦りまくっている状態だろうから、侯爵家の妻の座は喉から手が出るほど欲しいものに違いない。
侯爵はストーン商会の協力を得るため、令嬢グレタ(私)は行き遅れを阻止するために、互いにウィンウィンの状態で結婚ということになったけど、侯爵はグレタ(私)を愛する暇がないほど継承争いに巻き込まれていた。そのため、花嫁には申し訳ないけれど、不自由はさせないからちょっと待っていて欲しいという状態に陥っていたらしい。
イレネウ島での事業についての相談も、私が行くことは伝わらず、商会の人間が島に向かうとだけ話に聞いていたらしい。
そこで船に乗った私を発見した侯爵は、結婚に対して並々ならぬ執念を持ち続けている花嫁が、新婚の夫憎しで船まで追いかけて来たものと思ったらしい。まさか、私が商会一の策士だとは思っていない侯爵様は、私がロムーナを買収したいという話をした時にも、
「何を馬鹿なことを!」
と、思ったらしい。
貴族になればなるほど、女性は当主の所有物。より良い縁を結ぶための手段として使う王国では、私はかなりの異端だということを侯爵様は島に到着するまで気が付くことが出来なかったというわけです。
だからこそ、
「君のことは信用ならない」
という船の中での発言になったんだけれども、デトックス茶を開発して以降、夫は『地雷女』を大きな心で認めるほどの変わりようを見せたわけだ。
「怖い・・怖すぎるよ侯爵様!そんなに何でもかんでも『わかった』『わかった』なんて言っているけど、お店が百パーセント成功するとは限らないと思うんだけど?」
「君が言うサヴァランについてなのだが・・」
「サヴァラン?」
侯爵様は店が成功するかどうかよりも、出される菓子の方が不安なのか、さっきからモジモジしているのが気色悪い。サヴァランとは前世、日本で流行していたフランスの焼き菓子になるんだけど、私が大好きなお菓子でもあるんだよね。
「サヴァランは紅茶に絶対に合いますし!大丈夫です!」
「そういうことではないのだが・・」
最初に作ったサヴァランが激甘すぎたため、このお菓子に少しだけ苦手意識があるのだろうか?もっと甘さ控えめ商品も取り揃えた方が良いのかもしれない。
本日、もう一話更新します!!『サヴァランと紅茶をあなたに』の改訂版ですが、読んでいただきありがとうございます!王国編となり、これから女のドロドロも混えながら話が進んでいきますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです!!
モチベーションの維持にも繋がります。
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