第十四話 その愛の行方
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私こと、侯爵夫人となったグレタは、生前、結婚に憧れて憧れて憧れ続けて、必要もないのに毎月、結婚情報誌を購入し続けていたのです。痛いにも程がある私だったけれど、胸を張って言えることは、三十歳を越えてからの私は『結婚願望』があり過ぎる、いつでも何処でも結婚したいと考えているような女だったのよ!
その死ぬほど憧れた『結婚式』を終えて披露宴会場へと移動をした私は、
「本当は私がお兄様と結婚するはずだったのよ!それを貴女が横取りしたの!絶対に許さない!」
と、侯爵の義理の妹であるヘレナ嬢に言われて、突き飛ばされて、庭園に転がっている岩に頭を強かに打ち付けて、前世の記憶とやらを思い出したってわけ。
新郎である侯爵様に手首を掴まれた私は、
「君を・・愛する暇がない」
宣言をされた時には『このパターンですか!読んだことある!読んだことありますけども!』と、心の中で絶叫した。
私が読んだのは『君のことを愛することはない!』と断言するパターンだったけれど、そんな台詞から始まる物語を無料でネット上に掲載されている小説の中で、30パターン以上は読んだでいたと思います。
「グレタ、私は君のことを愛する暇がないと言っていたのだが・・」
「しつこい」
「いや、これだけは聞いて欲しい」
夜になり、後はもう寝るだけという状態になった私の元へわざわざ私やってきた侯爵様は、これ以上、どんな侮辱を浴びせるつもりなのだろうか?イレネウ島に移動してきた初日の夜、警戒感を露わにしながら、私が与えられた部屋までわざわざやって来た侯爵の次の言葉を待っていると・・
「私は商談のためにイレネウ島に渡る予定が以前からあった為、君を愛する暇がないと言ったのであって、貴族の義務を放棄するつもりは決してない」
と、侯爵は突然、貴族の義務と言い出した訳ですね。
「え・・えええ〜?」
そういやそうだった〜、今いる世界で貴族の端くれとして生まれた私には、貴族の義務とやらが生じる人生を送ることの意味を十分に理解しているのでした〜。
長女であろうが、次女であろうが三女であろうが、貴族の娘として生まれた限りにおいて、家の為に結婚し、嫁いだ先の家の為に子供を産み、血を守り、次の子孫へと繋げていく義務があるのです。
例え相手に愛人がいようが、恋人がいようが、真実愛する人がいると宣言していようが、貴族の義務とやらで子供を産まなくちゃいけないという事は理解していますとも。
貴族として生まれれば、政略結婚は当たり前。このヴァールベリ王国では王家の離婚率が高いことから、貴族の離婚率もえらい高い。当主夫妻は子供(嫡男)が産まれればお役御免とばかりに、愛人を互いに作るのも当たり前。
うちの両親も家同士の事業の締結に伴って結ばれた完全なる政略結婚だったんだけど、子供を五人も産んでいることからも分かる通り、夫婦仲は非常によろしかったりするのです。父も母も愛人などは作らず、お互いだけを大切に思い合っているとは思う。
「君がどう思っていようが、君が私の正式な妻であることに間違いはない」
そう言って侯爵は私の腰を引き寄せると、私の頬を掌で包むようにして、唇を重ね合わせてきたわけですわ。軽いものではなく、ねっとりとした甘いキス。
あー〜、通常、夫婦のすれ違いから誤解が解けるまでにエライ時間を要するし、誤解が解けたら解けたで、妻に嫌われたくない、妻に反感を買いたくないという理由で、夫婦としての一歩を踏み出すのに、やったらと時間を費やすものではないのでしょうか?
物慣れた侯爵に衣服を脱がされながら、貴族の義務として仕方なく?ということなら、相手は誰でも良い的な感じなのかな?と、考える。
私がベッドに仰向けになると、侯爵は自分の着ていたものを脱ぎ始めた。
実は私、転生する前からマッチョに弱いのよ。腹がバキバキに割れている人、大好物なのです。なにしろ転生する前は、婚活の荒波を乗り越えられずに沈没した身。
マッチングアプリで知り合った、上場企業で働く洒落た服装の、話も面白い男性(既婚者)に騙されるわ、腹がバッキバキに割れた消防士(彼女あり)に騙されるわ、細マッチョのインストラクター(婚約者あり)に騙されるわ。なんで皆さん、愛する人(本命)がいるっていうのに、付き合っている人は居ないんですっていうていで近付いてくるのかしら?
遊ぶのに丁度良い?後腐れなさそう?しっかりしてそうだから、俺が居なくても生きていける?そうですか、そうですか。まあね、いっすよ。女風俗に通って金を費やすよりかは、無料だもんね?無料だよ、無料。
既婚者相手だと慰謝料請求されるかもしれないので、本命が居ると分かった時点で、すぐに縁切るしね。
前世の記憶を思い出した私は、今世では男性経験ゼロだとしても、前世ではくだらない経験だけは積み上げてきた覚えがあるわけで。
私が求めているのは生まれ変わる前からただ一つ、私だけを見つめ、私だけを愛し、私だけを求めてくれる人。残念ながら、前世も今世も、そんな人は現れるようなことはないみたいだけど。
「グレタ、私の子を産んでくれ」
妄想でも言われたことないセリフを耳元で囁かれ、はじめての痛みに驚き、甘い吐息を吐き出しながら、
「え・・これ、いつまで続くの?もう終わりよね?終わりよね?」
と、何度思ったことか!
義妹のことはええんかい!とか、義妹との間に出来た子を、私の子供として申請する展開じゃないんかい!とか、裕福な子爵家と侯爵家の縁が続くことを考えたら、やっぱり私に産ませた方が問題ないってことなんかい!とか、そんなことをぐるぐる考える。
今でも軍部に片足を突っ込んだままの侯爵は、安陽国との戦争が始まれば、指揮官として船に乗り込み、大陸の端にある国まで軍隊を率いて移動しなければならないだろう。
当主不在の間は親族で侯爵家を守るとしても、侯爵家の直系はステランのみ。分家の一族は有象無象にいるわけだけど、これに全てを任せるとなるとお家騒動に発展する。そんなわけで一番問題がないのが、まずは正妻がステランの子供を授かること。
結局、南極、誰が子供を授かるって?
神の前で妻として宣誓の誓いをあげた正妻である私ってことになるんですよね!
というか、軍人の体力、舐め切っていた〜!
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