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今宵、曇り空の下で

作者: 茶谷紅哉

後輩と二人で買い物をしている途中、突然後輩がこんなことを言ってきた。


「先輩、七夕はパーティする派ですか?」


初耳。そんな派閥があるのか?


「七夕ってパーティするようなイベントなんだっけ?」

「一年に一度しか出会えない二人が出会う日なんてめでたい日にパーティしないことあります?」

「そんな自分たちのことでもないのにわざわざ……」

「でもクリスマスだって他人の誕生日ですよ」


確かに。そういわれてみると七夕パーティも別におかしくはないのか?


「笹を飾って、短冊吊るして、美味しいものを食べるんですから、クリスマスとそんな変わらないですよ」

「じゃあ今食べたいもの言ってみろ」

「ケーキが食べたいですね」

「ケーキが食べたいだけじゃねえか」


ケーキが食べたいだけだなと見切りをつけ、手際よく今日の食材を入れていく。


「なんかいつもより高いお肉入ってませんか?」

「まあ、誰かさんがパーティやりたいっていうからな」

「ありがとうございます!ゴチになります!」

「食費はワリカンって話じゃなかったっけか」


まあいいけど。

レジで支払いを済ませ、袋に入れて店を出れば、外は変わらずの曇り空だった。


「今年もまた星は見えそうにないですね」

「ああ、そうだな」


でも、二人きりで過ごしたいときに人の目があるのも邪魔だろうし、そんなもんでいいんじゃないのか。


「先輩、家に帰るならこっちの道じゃないんですか?」

「ケーキ、買って帰るんだろ?」

「せんぱい……!」


二人きりで過ごすパーティだってきっと楽しいんだから。

「そういえば、昼に食堂で短冊とにらめっこしてたけど、今年は何書いたんだ?」

「それが……実は今年は書いてないんですよね」

「そりゃまたどうして」

「今の生活で割と満足してますし……それに、一番大事なお願いは去年叶えてもらったので」

「そういえば俺も去年の願い事は叶ったなぁ」

「そういえば、結局先輩の書いたこと教えてもらえなかったんですけど、結局何だったんですか?」

「んー、誰でもいいので恋人がほしいです、かなぁ」

「誰でもよかったのに私にあんな情熱的な告白してきたんですか」

「それはお前のことが他の誰よりも好きだからだよ」

「なっ……それは、ありがとう、ございます」

「これからもずっと一緒にいてくれよ?」

「嫌になっても離してあげませんからね」

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