魔王
魔王は3rdステージのクラスチェンジクエストの相手だ。厳密にいえば魔王のダンジョン、魔王城の魔核を得ることだ。私も、そしてルーもこのクエストを達成している。...それもソロで。
「魔王はかつて...とはいっても5百年ほど前まではというべきかな、3rdステージの魔族で唯一の王だった」
伯爵が語りだした。
「しかし、それよりはるか昔より魔族たちにとって唯一の王だったわけではない。その辺の話はロータウンのギルマスから話は聞いてはいないかね?」
確かに聞いたな。だからロータウンのダンジョン全ての魔核を揃えることになったわけだし。
「昔はギルドがダンジョンを大規模攻略することで、しばらく王が起てなくするって話?」
私が答えると、満足そうに伯爵は頷く。
「その通り。大規模攻略されると私も復活するのにかなりの時間を要していたからね」
「ということは、あなたは王だったということ?」
すかさずルーが口を挟む。
「じゃあ、王なのに?伯爵?」
「かつて私は王で、ただドラキュラと名乗っていた。そこへ「審判者」が現れた」
伯爵がバルを見つめる。バルは、
「我もその頃の状況を見てきたわけでない。が、情報としては共有しておる。「魔王」はその時生み出された」
そう返すと、
「生み出されたか、上手い言い方だね。...実に面白い。そう「審判者」により「魔王」は生み出され、以降私は「伯爵」、ドラキュラ伯爵と名乗ることになったということさ」
つまりは、「魔王」は「管理者」、いやゲーム運営者がと言ってよいだろう、が設置したゲームシステムという訳だ。まあ、そういうゲームのシナリオだと片づけることもできるけど、...もうすでにここはゲーム世界ではないからね。
いずれにせよ魔王が意図的だろうが何だろうが発生したことにより、それまでの王は降格を余儀なくされたわけだ。...しかし、あくまで実際の実力は王と変わりない。...なはずだったが
「魔王が私達王、いや「ダンジョンボス」か、より上位の実力であるのならそれも受け入れられた」
「だが、何時しか、そう「プレーヤー」と呼ばれる者共がダンジョン攻略に現れてからか、いやそれより少し前あたりからか、魔王の力が下がりだした」
「それに呼応するように私たちの力も低下しだしたのだ、実に面白い。...何故だろうな?」
伯爵はバルを見つめたままだ。つまりシステムに組み込まれたがゆえにレベリングを受けたということか。そして伯爵はそれを受け入れられなかったということなのだろう。隠遁したわけだから。
「伯爵を名乗り、ダンジョンボスとしての役割を果たそうと、王であることを捨てたつもりはないのでね」
そうしてダンジョンから離れたという訳か。よくシステムから切り離せたものだ。...ということはここは、3rdステージではないのか?
「厳密に言えば、完全に切り離してはいない。影響を最小限に抑えた結界によりこの空間は存在している。なので当然君たち二つ名持ちのことも見知っている」
「そうして呪縛から逃れることで徐々に私は力を取り戻した。それでもかなり時間はかかったがね。それが今から5百年前だ」
「目的を果たすため出向くつもりだった魔王城は、ちょうどカジワラに先を越されたのだが、その時は久しぶりに単独攻略者の「プレーヤー」が現れたか、実に面白い、ぐらいの印象だった。別に目的を果たすのは次回を待てばよいだけだったのでね。歳月を経ることは私にとって苦痛でも何でもないからね。...しかし、それは「大改変」が起きなければの話だ」
大改変でこのステージから魔王の魔石や魔王城の魔核などが消えた。まあ実際は2ndステージに転移していたのだが、その影響で3rdステージでは魔王はもちろん魔王城も復活しなかったわけだ。
「魔王が復活しない故か、ダンジョンボスの力が上がりだした。しかし、長らく「プレーヤー」が活躍していたため低下したハンターたちは、大改変で多くのプレイヤーが去ると徐々に攻略が難しくなっていたね。そんな頃だな魔族になったカジワラを見かけたのは...実に面白い」
1stステージに戻れずに、2ndステージで「事象改変」で魔族となったカジワラは、取り敢えず死属性のスキルを得るため3rdステージに戻ってきたそうだ。そしてこの場所に招かれたという訳だ。
「そうして最近、魔族達はダンジョンそれぞれに王が起つまでに力が回復してきた。私がいろいろと手を貸してきた成果だが、まだかつての力とまでには至ってはいない。もっとも魔人族のハンターなどは、未だ力が戻っていないがね。結界の弊害だろう...実に面白い」
「結局のところ、魔王を完全に消さないと元には戻らないということなんだ。このステージから転移したというだけでは、不十分なのさ」
「ここまで話せば、わかるだろう?」
「渡してもらおうか。魔王の魔石と魔王城の魔核を」




