世界樹
なにやらルーをじっと見つめていた泉龍が、突然「聖回復」を自分に掛けた。すっかり元通りの姿になった後、人型へと変身する。青みがかった白銀の長い髪、アイスブルーの瞳をした貴婦人然とした美人がそこにはいた。
「あの時より何やら面白くなくてのう。あの姿のまま過ごしていたのだが。いやいやこれほど面白いものが見れるとはな」
すまし顔でこたえる。自身を回復した理由が「面白いもの」とはね。どうやら名も戻したようだ。う~ん、やはりルーの中身を知っていたらしい。会話を交わしたわけではないが、ルーの態度を見る限り何やらそれが面白いものであったのかもしれない。
「名まで戻して、何をするつもりなのだ」
バルが泉龍「エナリオス」に問いかけた。
「ふむ、言うまでもないと思うておったがバルバロス、お主たちだけでのこのこと出向いて、エルフども、ましてやドライアドやシルフと話が通ずるとでも?」
静かなる答えに、バルは黙るしかなかった。
妖精族を勝手にキャラ付けするならば、ドワーフは豪快、リザードマンは脳筋、マーフォークは繊細、と概ね分けられる。そして、エルフは「天然」である。何というか話が通じない。なんか解釈が明後日の方向へ行ってしまうのだ。貴族と庶民の話がかみ合わないみたいな。常識が通じないみたいな。...そんな感じ。
そして、木の「大精霊ドライアド」は無口天然系、風の「大精霊シルフ」は奔放天然系である。エナリオスの心配は当然であった。バルでは絶対に話が噛み合わないだろう。厚顔不遜キャラだもんね。もちろん私もムリ。絶対向こうのペースに巻き込まれる。で、何しに来たんだっけ?となること請け合いだ。
「世界樹」はエルフの国がある「大森林」のほぼ中央に聳えている大樹である。まあ、大樹というレベルじゃないけどね。幹は太く高く、枝ぶりも含めてその全貌を見ることができない。空に遠く霞んでしまっているからだ。2ndステージを支える柱のようにも見える。そして、「大森林」も広い。樹海?、いや密林?それらが混在したようなアマゾンのような青木ヶ原のような(規模はアマゾンだね)...そんな感じ。
今、私たちはその「大森林」の中にいる。正確には、「世界樹」から100kmくらい離れたところにいる。もっと正確に言うと...もうこのネタは良いか。要は「世界樹」を中心に半径100kmくらいで「大精霊シルフ」が張っている結界の前にいるのだ。ここに来るまでにも、エルフの気配はそれなりにしていたのだが、エナリオスの姿を認めたのか、遠くから見守っているようであった。
「「テレポート」が使えれば良かったにのう。難儀なことよ」
エナリオスの嘆きが、私へ向けられるが知らん顔をする。しかし、バルのように問答無用でないところはポイント高い。
「最早防御する懸念は無くなったのだ。結界を消してしまえばよかろう」
バルが言うや、
「これだから、バルバロスには任せられぬと思うたのじゃ。結界を消し飛ばした後、シルフにそれをどう伝えるのじゃ?」
まあ、結界を消し飛ばすなんて敵対行為をした後に話し合いになるとは思えないよね。とはいえ、私もそれぐらいしか思いつかなかったので黙っている。
「ウンディーネが、シルフに話を通しておる。まあ時間はかかるだろうが待っておればここに来るであろう」
やはり、普通に正攻法だね。まあ、本番は「大精霊シルフ」と対面してからだろうけど。上手く「世界樹」にたどり着けるのかな。
「やっほ~い!名を戻されたんだね!「エナリオス」様!」
しばらく待っていると上空から陽気な?暢気な?声が降ってきた。
「久しいな。まあ予も思うところがあってな。名を戻すことにした」
「ボクは元気だよ!」
うん?これは噛み合っているのか?しかしエナリオスもシルフも笑顔で応対している。
風の「大精霊シルフ」、鮮やかな緑色の髪は短めで、ライムグリーンの瞳はクリっとしていて、背中から透明な蜉蝣のような羽をはやしていて今も宙に浮いている。見た目は中学生くらいの可愛い女の子に見えるが、確か設定では男の子だったような。そして見た目は中学生ぐらいだが、大きさは小さい。手のひらに乗れるぐらいだ。〇ィンカーベルみたいな感じ。
「そうか、元気で何よりだ。ところでドライアドに会いたいのだが。案内を頼めるか」
「うん、こっちだよ!」
あれ?あっさり解決?あれで噛み合っていたのか?なんだろう、地雷を踏みそうで迂闊に話しかけられないこの感じ。...黙ってついて行くに限るねこれは。
そして近づいてくる「世界樹」は、まあデカいのだった。幹というか壁?いや崖だよね。10kmはあるからね。もう幹の端なんて見えやしない。前を行くシルフが振り向くと、
「そういえば、君たち誰?」
いまごろかい!ウンディーネはどんな話をコイツにしたんだろう。
「予の連れだ。気にしないでくれ」
「うん、いい天気だね」
エナリオスとシルフのやはり嚙み合わない会話で疑問は解消されたのだろうか。そのまま、ドライアドがいるのであろう上空へと昇り始めた。私たちも「空中機動」にてついてい行く。
やがて、大きな洞が見えてきた。




