サラマンド・フェスタ
闘技大会「サラマンド・フェスタ」、「大精霊サラマンダー」の一声で開催が決定したわけだが、その日のうちに国中にその話は行き渡り、そして二日後、大会初日を迎えることに。早っ!...この国の奴ら、いろいろとおかしいでしょ。
「火の巨釜」の一角にある円形闘技場、大会の会場だ。今日と明日予選が行われ、一日空けて、四日目に本戦が開始というスケジュールである。私はまあ、シードということで本戦から出場だ。と、言うことをリザードマンの国の剣術部門の武官長より説明を受けた。名を「三叉槍のイクスタルズ」という。...剣術どこ行った?
「こちらの特別観覧席を用意させていただきました。予選ですが大会の雰囲気をお楽しみください」
と、円形の闘技場を囲むように設けられた観覧席の一角に私らを案内してくれたイクスタルズは、
「私も大会に参加しております。対戦できることを願ってますので」
何やら決意を秘めた感じで言い残してその場を後にしていった。
そんなこんなで予選出場者の入場を告げるアナウンスが響き渡る。一日目の予選出場者がぞろぞろと闘技場に姿を現した。50人くらいだろうか。闘技場自体が広いので50人居ても狭く感じることはない。国立競技場を円形にした感じで想像してね。
さてこの予選であるが、その対戦方法は実に大雑把だ。要はバトルロイヤルである。この50人が一斉に戦い、残った5人が本戦出場となる。二日目と合わせ予選を勝ち抜いた10人とシードの私、そして先ほどのイクスタルズの12人が、トーナメント方式で本戦を戦うことになる。ちなみに前回行われた闘技大会の優勝者はイクスタルズだ。だからシードなんだろうね。
予選の出場者を見回す。大抵はリザードマンだ。大抵はといったのは、ドワーフとマーマンが幾人か混じっていたからだ。物好きはどの種族にもいるものである。マーマンとは魚人族の男たちを指す。女の方はマーメイドだね。水の妖精族である。ドワーフは土色系、マーマンは青色系なので分かりやすい。まあ姿形も違うので色以外でも判別は簡単にできるのだが。リザードマン達も赤色といえば赤色ではあるが、当然皆同じ色というわけではない。ピンク色やらオレンジに近い色やらそれなりにいろんな赤系統の色の奴らがいる。こちらは男もいれば女もいた。皆それぞれ得意な武器と防具で身を包んでおり肌の露出は少ないので、そんなにカラフルな様子なわけではない。まあ防具も多少色は入っているけど。
これから戦うわけだが、殺し合うわけではないので武器は皆刃引きや穂先を丸めたものを使用することになる。術も斬撃系や刺突系などは禁止で闘技場に張られた結界でそういった術は無効化される。
そして、有効打などを浴びて続行不可能になった者は闘技場の外に転移させられ、治療を受けることになる。まあ予選敗退だね。そういった予選のルールなどをつらつらと説明するアナウンスが流れていく。
ようやく予選開始だ。
鐘を合図に試合が始まった。50人それぞれが等間隔に散らばっていたが、開始と共に一斉に皆が動き出す。共闘して戦うもの、単独で挑むもの、それぞれがそれぞれの思惑で戦いが始まったのだが、...いやもうね、これ徒の喧嘩だから。
斬ったり刺したりがないので要は叩き合い、殴り合いである。そして、流石に鍛えている彼らは叩かれたぐらいで簡単には沈まない。術の方も火弾や水弾、泥弾ぶつけて動きをけん制するぐらいだから、やはり子供の雪合戦みたいなノリにしか見えない。なんていうか泥仕合である。
しかし、ドン引きで見ている私らを余所に他の観客たちは盛り上がっている。...何故だ?なんだろう、彼らは単にお祭り騒ぎとして楽しんでいるだけなのだろうか。それが証拠に、予選を戦っている彼らも皆、実に生き生きとしている。
「なるほどフェスタだね」
思わずそうつぶやくと、
「楽しんでいただけてますかな?」
いつの間にか後ろに来ていたイクスタルズが声をかけてきた。まあ気配はわかっていたけどね。
「しかしこれ、決着つくの?」
ルーが素直な疑問をぶつける。
「確かに長期戦ですね。体力勝負の面もあります。とはいえやはり勝ち抜くには高い技術も必要です。打撃もするのも、受けるのも体力を使いますし、術も数を打てばやはり疲れますからね」
とイクスタルズの答えに、ルーが再び口を開き、
「それじゃあ手を抜いた者の勝ちにならない?」
「いえ、そのような者は逆に皆に狙われます。気配を消したところで、それを見破れぬ者はそもそもここに出場しておりませぬし」
「じゃあ、やっぱりお祭りだね」
との私の言葉に、
「フェスタですから」
身も蓋もない結論を言いやがった。よく見ると観客の方でも小競り合いをしている。...これはちゃんとした大会と言っていいのだろうか?
突然、それまでの乱痴気騒ぎとは明らかに違う響きとともに、誰かが叫ぶ。
「なんだあれは!黒い!黒い竜だ!」




