火の巨釜(おおがま)
私たちは今、火蜥蜴族の国にいる。正確に言えばリザードマンの国の「火の巨釜」、「大精霊サラマンダー」がいる処だね、のそばにいる。もっと正確に言うと「火の巨釜」のそばの温泉にいる。もっともっと正確に言うと露天風呂に...ってもういいか。まあ、前に「大精霊ノーム」が浸かっていたあの露天風呂に入っているのだ。
ちゃんと、みんな水着を着用しているよ。まあそうしないとルーが納得しなかったからだが。別にバルは古龍だしルーは元私だし、隠すほどのことはないと思ったのだが、なんかダメらしい。ルー的に。...まあいいけどね。私も以前、バルに露天風呂突入された時、狼狽えたことがあったしね。
「火の「大精霊サラマンダー」の処に行ってほしい」と、土の「大精霊ノーム」に頼まれたというのもあるが、元々のゲームの進行も次はリザードマンの国へ誘導される流れだ。当然、その流れに乗った形である。実はそのお使いの内容は大したものではない。ノーム達がこの間、英気を養おうと露天風呂に向かったとき、まあ私たちと会った時だよね、浸かる前にサラマンダーに挨拶に行ったのだ。その時サラマンダーに、英気を養うならとリザードマン達の造る酒を貰ったそうだ。なのでそのお返しにドワーフ達の酒、火酒だね、を渡してほしいとお願いされたのだ。ついでに私の持っている酒もあげてほしいと頼まれたのだが(その時のルーの暴れっぷりは、...まあかわいいものだったが)。そんなお願いなので、そう急ぐものでもない。で、まずは温泉というわけだ。
「火の巨釜」のそばの温泉、とは言ったがここから見えるような処にその巨釜があるわけではない。温泉に浸かっている私らの周りは、見渡す限りぺんぺん草も生えない溶岩のごつごつした岩肌が続いている。この露天風呂もその溶岩の窪みに自噴しているものだ。まあ、ドワーフ達が風呂の表面を滑らかにしてくれていたので、私らは快適そのものに浸かっているけど。そして、周囲に誰一人姿を見かけることはない。さらに言えば、リザードマンの国に入って、この露天風呂に至る現在までリザードマンの誰一人、出会っていない。彼らはどこにいるのか、そして「火の巨釜」はどこにあるのか。
まあ、そう勿体つけること程のことはないよね。それは地下にある。地底世界である「光耀の大空洞」、そこにリザードマン達は居て、「火の巨釜」もそこにあるのだ。
「火の巨釜」のある「光耀の大空洞」、火蜥蜴族の国のある地底世界。それはとにかくデカい。いやデカいという表現はあれだな。洞窟とか鍾乳洞とか想像していてはダメです。そんなレベルじゃない。世界ですから。とてつもなく広い。まあ国ひとつ入っているいる訳だからね。そして高い。天井が見えない。っていうかもう空だよね。光耀の名のごとく、明るいのだ。空が、いや天井が。それだけでもう洞窟じゃないとイメージできたと思う。そんな場所。
そんな大空洞のほぼ中心に「火の巨釜」はある。巨釜というぐらいだからこれもデカい。そうだね、阿蘇のカルデラぐらい?だから大体直径20kmくらいだ。そして実際の阿蘇カルデラと同じように外輪部の中全てが溶岩でドロドロ、なんてことはなく、中央付近にある火口のようなところ、まあ直径100mくらい?、そこが溶岩ドロドロになっていて、サラマンダーはそのドロドロの中にいる。私らのそばには国の偉い人と思われるリザードマン達がいる。国に入るときに、ノームから渡されたキラキラした宝石のような丸い石を見せたら、ここまでスムーズに案内してくれたのだ。徐々に私たちの周りの人数も増えたけど。
「ほう、わざわざそれはご苦労であったな。あのノームにお返しなんぞする殊勝なことができたとはな」
火口みたいなところから出てきて、ノームからのお返しの酒を受け取ったサラマンダーは機嫌がよさそうである。その姿は、リザードマンの親分みたいなものだから、蜥蜴がシュッとした人型であり、顔がシュッとした感じである。...伝わらないか。大精霊に性別なんてものは本来ない(ノームはどう見ても親父だけど)が、美女である。というか美少女か?小学生くらい、ルーより少し幼い感じで生意気盛りの女の子にしかみえない(...これで伝わるか?)、赤い髪は長く、当然全身も赤い、着ている鎧も赤い。溶けないのだろうか?
「それにお主からの酒も非常に楽しみだ。じっくり味わせてもらうぞ」
ルーのジト目を受けながら差し出した酒も好感触だ。...っと、そこでサラマンダーがニヤリと笑うと、
「そうじゃ。お主、伝説の「プレーヤー」であったな。ふむ、ちょうどよい、闘技大会を開くぞ」
うん?どうしてそうなった?...いや、ここはリザードマンの国だからか。
「ボクは出ないぞ」
まあ大事な酒を取られ続けて落ち込んでいるからね。やる気ないよね。
「我も見合わせる、お主が出ればよい」
バルも続く。いや、私も出るなんて言ってないだけど。...が、そんな私を置いてきぼりに、
「おおっ!」「あの「最強最恐のプレイヤー」と闘えるとは!」「これは盛り上がりますぞ!」
周りにいたリザードマン達が盛り上がり始めた。あぁやっぱり。
争うことを好まないといわれる妖精族だが火蜥蜴族はちょっと特殊だ。争う、いわゆる一方的な暴力による搾取や問題解決などは当然リザードマンも好んではいない。しかし、きちんとしたルールのもとに戦う、?、いや競うかな?が大好きな種族なのだ。要は脳筋族なのだ。力自慢、体力自慢、肉体自慢だらけである。当然、体術、剣術、法術(精霊属性魔法ね)で戦う(競う)ことも大好きだ。とにかく熱い、暑苦しいくらいだ。
なんかもう断ることのできない流れが出来上がったしまった。...なんか、ゲームでのクエスト発生みたいな?
「それではサラマンド・フェスタの開催じゃ!」
「大精霊サラマンダー」の雄叫びに、周りのリザードマン達も一斉に雄叫びをあげるのだった。




