クエストクリア(ひとつめ)
「だ・か・ら・!「テレポート」は嫌だといっているだろう!」
何で学習しないかな。コイツ(バルバロス)は。いや、もはや狙っているな。私が嫌がることを楽しんでやがる。ルーも思いっきり頷いている。そうか、お前も嫌か。そういえばこのアバターの記憶もそうだったな、...おぉ、同志だ。...抑止力にはなりそうもないけど。
ここは「鉱脈の集いし山」の中である。正確には坑道だね。もっと正確に言うと廃坑にになった坑道だね。もっともっと正確に言うと5百年以上前に廃坑になった...しつこいか。まあ、その坑道の中を大精霊ノームを先頭に、私、ドルムル、ルー、バル、の順で奥へと進んでいるところだ。
「本当に何とかなるのですかのう?」
ドルムルがくどいほど私に訊いてくる。
「だから、わからないって。なんなのかも知らないのにって何度も答えているでしょ」
なので、その縋るような目で私を見ないでほしい。
「それに何とかなるって言ったのはバルだよ!バル」
バルを睨みながらそう強調する。まあ、バルが私に何をやらせたいのかはわからんでもないが。
それにしても坑道というのは初めて入ったが、映画などで見たまんま迷路だね。途中で掘るのをやめた脇道や明らかに奥へ続いでいる分かれ道などいろいろある。1stステージにこんなのがあれば間違いなく魔素溜りが出来て核になり魔獣を生むダンジョンになるんじゃないか?1stステージでは鉱石は山を削って採っていたから大丈夫なんだろうけど、いや魔素溜りぐらいであのダンジョンコアはさすがにできないか...まあその辺はゲームの設定だ、ってだけどね。まあクラスチェンジクエスト以外のダンジョンができない様な配慮がなされているんだろう。...たぶん。
しかし、さすがに大精霊、そんな坑道を迷うことなく進んでいく。
「おっと、間違えたかの」
間違えやがった。しっかりしろよ。
「結界を張ったでな。ちょっと分かり辛くなっておるのじゃ」
言い訳しやがった。
そんなこんなで、少し迷いながらも到着したようだ。
「ここじゃ」
坑道の行き止まりで、「大精霊ノーム」がそう告げる。
「これっ、?、魔石?」
ルーが疑問に思いつつそうつぶやく。まあ、見た目はそう見える。
黒い塊が、脈を打つように膨張と収縮を繰り返していた。一見魔石のように見えるが、こんな脈動する魔石なんて見たことがない、...?いや、待てよ。
「不死魔族か?」
「そのようだな」
バルも頷いた。そう、ノームは言っていた。異変は大改変時だったと。その時は、影響がないほどの小さいものだったと。
「そうか、不死魔族の粒か!」
不死魔族とは、魔族の中で不死性を獲得している種族のことで、バンパイアやリッチなどがいる。まあこいつらは不死ではあるが倒せないわけではない。要は死んでも甦るのだ。だから不死。不死身とは違う。
たいていの種族は、死ぬと魔石になる。まあ妖精族は精霊石になるけど。しかし、不死魔族は死ぬというか倒されるといわゆる一つの塊の魔石にはならず、小さい魔石の粒のようなものが彼方へと消える(逃げていく?)。まあつまり、不死魔族を倒すには、その小さい粒にならざるを得ないぐらい魔力を奪いつくす必要があるわけだ。そして逃げたその粒は辺りの魔素をため込みながら何年もかけて徐々に大きくなり復活する。なので不死と言ってもその甦りは、とても気の長いことなのである。まあ、バンパイアやリッチなどはそもそも寿命がないし、めちゃめちゃ魔力も多く再生能力高いし、ステータス的にも強敵だからそう簡単にくたばらないので、そんな粒などそうそう見ることなどないのだが。
「3rdステージで大改変時たまたま倒された不死魔族の粒が、ここにとばされたってこと?」
ルーは理解できないようだ。
「まあそうだね。実は1stステージで火竜が獣人族の国に大改変でとばされていたんだ。だから、あり得ないことではないよ」
まあ、ノームからすれば不死魔族の粒なんて想定外だろうし、気にしなかったのも無理はない。
「こ、これが不死魔族の塊?核?で?、ではどうなるですのじゃ?なるん?ですの?じゃ?」
ドルムルが混乱している。
「なるほどのう。大改変でステージを超える転移があったとはのう。不思議なことが起こるものよのう」
ノームは感心しきりだ。
「だけど、それじゃこのステージでこれがこんなに大きくなるのおかしくない?」
ルーが疑問を呈する。まあそうだね。このステージ魔素ないもんね。
「たぶん推測だけれど、この坑道で「プレーヤー」だったタクヤ・カジワラが「事象改変」を使ったんだろうね」
なんでこんなところで、カジワラが人族から不死魔族になるため「事象改変」を行使したのかはわからない。まあ、そう考えれば腑に落ちるというだけだ。大精霊が存在を忘れるくらい長い間動きがなかった小さな塊に起きた変化。その変化を齎す現象が起きた若しくは齎した者が居たはずである。現にこの黒い塊から「事象改変」の残滓を感じるし。そうでなければ精霊を魔素に変換して取り込むなんてできないだろうし、実際今は結界の所為で精霊が周りになく停滞している状態だ。
「「事象改変」?なんじゃそれは?」
ノームが食いついてきた。やはりドワーフの親玉、好奇心が強い。
「奇跡の業ですじゃ、大精霊様。この方は奇跡をお持ちですのじゃ」
ドルムルが私にキラキラした目を向けながらそうこたえる。...なんか期待されている?
「前の状態に戻せばよかろう」
バルが私に呟く。まあ、そうだよね。坑道をこれ以上掘り進めてはダメだと止めた先に、大きくなった黒い塊(核)があり、そしてそれは既に鉱脈の毒に到達しているわけだし。「ワープ」のような空間属性スキルなどでこのまま外す訳にはいかない。...また「事象改変」の出番か。こりゃSLvカンスト目前だな。...ステータス確認できないけど。
「うおおお~!」「あの塊がみるみる小さくなりおった!」「鉱脈も元に戻っていきよるぞ!」
ノームとドルムルの合唱がうるさい。そうして、小さくなった粒を取り出し、結界に閉じ込め「ストレージ」に放り込んだ。




