大精霊ノーム
2ndステージでゲームの流れ通りに進めば最初に訪れることになるドワーフの国。そこで「プレーヤー」達は様々なクエストをこなしてクラスレベルを上げていくことになる。そしてある程度レベルが上がると別の国に誘導されるのがゲームの設定...。
そして、ドワーフの国でそのクエストを発生?発注?するのが「大精霊ノーム」なのである。今、そのノーム達が目の前にいる。
「ふい~極楽じゃわい」「そうじゃのう~温泉は最高じゃな」「まったくじゃ。この酒も美味いしの~」「ほれほれ何をしておる。小僧、酒を注げ」「娘よ。もっと酒を出さぬか」「そっちの男は何を突っ立っとるのじゃ、一緒に呑まぬか」「おや?その気配は?...ふむ」
温泉特有の匂い漂う露天風呂に浸かっている7人の小人。「大精霊ノーム」である。〇雪姫に出てくるあれなんだろうなぁたぶんモデルは。しかし、「実にドワーフの親玉だよな~」的な感想しか出てこないな、この状況。
ここは火の妖精族である火蜥蜴族の国である。土の妖精族ドワーフの国には土の「大精霊ノーム」が、そしてこの国には火の「大精霊サラマンダー」が居るのだ。その「大精霊サラマンダー」が居る「火の巨釜」、その近くに湧き出る天然温泉でノーム達は現在くつろいでいるのであった。
ドルムルが呆然自失で突っ立ってる。それはそうだろう。「すわっ!大精霊様の身になにが!」ともの凄い心配と「お助けせねば!」ともの凄い意気込みでここまで来たのである。まったく道中煩くてかなわなかった。まあ、ノーム達を見た瞬間に静かになってくれたけどね。そりゃそうだ。私たちが近づくや否や
「おお!お主ら!ちょうどよい」「うん?人族か?いや「プレーヤー」じゃな」「お前は「黒き槌」の者か?」「のう。酒を持っておらぬか?」「プレーヤーなら持っておるじゃろ」「早う出せ」「何を呆けておるのじゃ?」
まあ、私も挨拶代わりと芋焼酎を出したのがよくなかった。
「おお娘!これは美味いな」「うむ。火蜥蜴族達の酒に似ておるな」「火酒も良いががこれも良いな」「ほれ杯が空になったぞ、小僧、早く注がぬか」「こっちもじゃ」「娘!この酒を追加じゃ」「おい娘!ほかにも酒はあるのか?」
と、冒頭の酒盛り状態となってしまった。なんか昔、チュートリアルステージで武器屋のドワーフの親父に酒をたかられていたのを思い出した。あれ?あのドワーフ、ドルムルに似ていたような。...まあ、ドワーフみんな似たようなものだけど。そんなことより、この状態。まったく私らは何しに来たんだ?
「なんじゃ。あの山のことで来ておったのか」
ようやく話が通じた。...が、ルーは私が次々に出すお酒に唖然とし、さらにノームへのお酌にこき使われた末へたり込み、バルは我関せずとずっと座り込んだまま、ドルムルは結局ずっと放心状態で突っ立ていた。...もう帰っていいかな?
「あの山な」「おう、結界を張ったのだ」「まあ、ああするしかなかったしのう」「そうじゃ、頑張ったな」「うむ、疲れたぞ」「それで骨休めじゃ」「湯治じゃ、湯治じゃ」
やっぱり何か理由があって結界を張ったらしい。しかし、全員で一度にしゃべるの何とかならんか。うるさいし、聞き取りにくい。
「そうじゃな、お主らは美味い酒をごちそうしてくれたでな。よいぞ、何が訊きたい?」
あれ?心の声が漏れていた?ノーム達がくっつき、1体の「大精霊ノーム」となった。おぉ~、そんなモードがあったのか。...早くなれよ。
「よくない。...ボクの...ボクの酒が...」
何かつぶやいているルー。...いいじゃないか。確かにコイツの酒だったのかもしれないが、その身体じゃ飲めないだろう?そして私は飲まないしー。...さて、無視しつつ先に進もう。
「結界で何を守っているの?」
「逆じゃな守るというより防いでいるのじゃ」
まあそれはなんとなくわかっていた。
「よくないものが出てこようとしておる。それを防がねばならんかったのじゃ」
ことの起こりは、やはり5百年前である。あの大改変時に、「鉱脈の集いし山」に何かが入り込んだらしい。それは最初は小さいものだった。なのでそれほど影響はなかろうと、気にしなかった。まあ、これがいけなかったのだが。そしてそのことを何時しか忘れた。...実にノームらしい。
気付けばそれは大きくなり鉱脈に浸食をしていた。
「それでな、慌ててな。こりゃイカンとな」
いや、どんだけ迂闊なんだよアンタ。
「で、どうするの?結界のせいでドワーフ達、採石できないんだけど」
「どうしょうもないな~、結界は外せぬしな~」
「なっ!そっそれではあの山は!あの山はどうなるので!」
ドルムルが悲痛の声を上げる。
「まあ、閉山じゃな。あれのせいで鉱脈の毒が漏れ出したでな。結界は外せぬよ」
「そ、そんな~」
崩れ落ちるドルムル。...と、
「それが入り込んだ場所には行けるのか」
バルが口を開いた。...まさか。
「そりゃ行けるが、行けますが。...まさか、左様で?」
何やら神妙になるノーム。
「我ではない。だが、何とかなるであろう」
バルが私を見ながら不敵な笑顔を見せるのだった。




