くにさかいの大草原
気に入らないが、ダンジョンのボスフロアの最奥にある魔法陣に乗らないと2ndステージへは行かれない。そう、私の嫌いな転移である。いくら2ndステージのストーンサークルに結界が張られていて何も入り込むことができないとしても、確認できない状況というものはやはり気に入らない。まあしかし、無事に2ndステージに来たようだ。ストーンサークル内に溢れていた光が収まってきた。「くにさかいの大草原」が目に入ってくる。...っと、
「なっにっ~!」
でかい叫び声が襲ってきた。まあ、気配は「探査」でわかっていたけどね。なのでゆっくりとそちらを振り向くと、
「あぁぁ!お前はっ!俺っ!」
「なぁぁ!あなたっ!私っ!」
同時に叫び合った。そこには、こちらを指さす私、いや俺の元のアバター「万年ルーキー」がいた。
「え~。本当なの~。ないわ~。そりゃないわ~」
「万年ルーキー」の姿をしたヤツが納得いかないのか文句を垂れる。まあ気持ちはわかるが、その言動にめちゃくちゃ違和感がある。
「その口調やめてもらえない?変だよ」
というか、俺のアバターでその口調は耐えられない。
「変とは何?あなただって私からすれば変よ。私のアバターで勝手なこと言わないでくれる?」
言い返された。
「...せめて男の子の口調にしてよ。私だってこのアバターの記憶のせいで口調そこまで変じゃないはずでしょ?」
「そうだね、わかったよ。ボクも周りから変な風に見られるのは本意じゃないしね。...これでどう?...あなたこんなしゃべり方してたの?」
「...まあそうだよ。見た目どおりの子供っぽいしゃべり方だろ?」
あれっ?なんだろう?客観的に見るとただのマセガキにしか見えない。こんなんだったっけ?いや、まだあいつ自身慣れてないだけだ。そのうち馴染む...ハズ。
「ふ~ん、まあいいや。だけど、「事象改変」とやらがあるんだろう?ボクとあなたが元に入れ替われば良いだけじゃないの?」
「そんなことは許さぬ」
バルバロスが割って入ってきた。
「えっ、どうして?」
何を不思議がってやがるんだコイツは。
「当たり前だよ。アンタにこのアバター返すわけないでしょう。「最強最恐のプレイヤー」復活なんてとんでもない」
私が言明する。それでなくても中身が違うのだと納得してでさえ、チュートリアルステージからずっとバルバロスが目を光らせていたのだ、正真正銘の「最強最恐のプレイヤー」なんかにしてみろ、ここで大バトルが巻き起こるにきまっている。というかそんなもんに巻き込まれたくない。それにコイツの中身がわかってからのバルバロスの殺気はひどいことになっている。
「とりあえずコイツを消してしまえばよいのじゃ」
バルバロスが息をまく。
「それは勘弁してくれ。このアバターは私なんだから。せっかく見つけたのに」
私が慌てる。コイツも慌てる。
「わっ、わかったよ。このままでいい。なぜそんな物騒な二つ名を得るまでの事をしたのか説明もしたし、これまでにそのアバターにかけた金額や時間など言いたいことはあるけれど。...それでどうなるんだい?ボクの扱いは。このまま解放とはいかないんだろう?...まあ解放されてもボクも困るんだけど」
「そうだね。私たちと行動を共にしてもらうよ。ログインした経緯も似たようなものだし、そもそも元自分のアバターが知らんとこにいるというのも落ち着かないし」
私がこたえると、
「それでいい。ボクも同じ気持ちだ。じゃあボクのことは「ルー」と呼んでくれ、キミも「万年ルーキー」とも元自分の名前で呼ぶのもヤだろうし。...で、キミは「クロウ」と呼ばせてもらうよ。ボクも自分の元の名前で呼びたくないし」
「万年ルーキー」改め「ルー」が提案してきた。
「了解、それでいいよ。じゃあバルバロスは「バル」にしよう」
私がバルバロスにいうと、
「我が呼び名を変える必要はなかろう。...じゃが、まあそう呼びたいならそう呼ぶがよい」
仲間はずれになりそうなのがヤなのか渋々ながら認めた。うん、短くなって呼びやすくなった。
「で、クロウ。これからの予定は?」
ルーの早速の言葉に、
「そうだね。このステージのセオリー通り、ドワーフの国を目指そう」
「アーガルドハーツ~レジェンドオブレガシー~」、この世界の元のゲーム名であるが、このゲーム、1stステージはジャンルでいえばMMORPG(大規模多人数同時参加型オンラインRPG)のような感じで、ギルドで選択したクエストをこなしレベル上げを行い、ステージクリアを目指すものであるのだが、2ndステージではなんというかADVの要素が加わるというか、まあNPCとの関わりストーリーを誘導されるというか進めていく感じの要素が増えるのだ(まあ、1stステージもバルによって私は誘導された感じではあるのだが)。
だから本来であれば、このストーンサークルを出たところで、精霊獣に襲われているドワーフのNPCを助けてその者に請われてドワーフの国へ向かうという展開になるのがセオリーなのだ。...まあ実際は精霊獣を返り討ちにしたルーがいたというわけだが。
そりゃ確かにこのイベントは、そもそも2ndステージ初見のパーティー用なので2回目のパーティーには起こらない。...というかもうゲームじゃないんだから、お約束の流れはそもそもないんだろう。1stステージだって設定崩壊してたわけだし。
それでも、初見パーティーのように大体のストーリーをなぞっていくのも悪くはないはずだ。ということで提案したわけなのだが、その発言がフラグになったのか、
ドワーフらしき人影ががこちらに向かってくるのが見えてきた。




