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晴海(サニーオーシャン)上貿易船

「おおっ、中々いい眺めだね」

 甲板に出て眺めると、水平線を望む形で海原が広がっている。天気も快晴だ。貿易船は超は付かない大型客船並みの船だ。結構でかい。帆船であり、プロペラ船でもある。まあプロペラ回すのは魔石だからね。節約の意味もあるのだろう。今は帆を張り風の力で進んでいる。バルバロスの(スキル)を借りればすごい速さで進みそうだ。...そんな船旅嫌だけど。

「ふん、(われ)が飛んで運べば良いのに時間をかけおって」

 バルバロスが不機嫌だ。「テレポート」の魔法陣は獣人族の国のある大陸にはないそうだ。そして「転移陣」もないとのこと。バルバロスがドラゴンの姿になり空を飛ぶことはできるが、そんな目立つことはご免である。そういうわけで、船で時間をかけて行くことになる。バルバロスは不満だが私に問題はない。

 今は波も穏やかだが、一昨日、昨日と酷い時化だった。長時間に渡りかなりの揺れだった。船員たちですらかなり参っていた。なので、よほど物好きじゃなければ「プレイヤー」も海を渡ろうという気にならないだろう。しかし、結構渡ったものはいたそうだ。(ケモ)耳の所為なのだろうか。モフモフの魅力と言いうものは恐ろしい。

「バルバロスがドラゴンになったら大騒ぎになるだけだよ。私はそんな旅御免だ。いいじゃないか船旅」

「まったく、余計な依頼を背負い込みおって。カジワラとやらが言っておったろう?大改変を起こした犯人はどこかでお主を待っておるのじゃ。其奴(そやつ)を見つけに行くのが先決だろうに」

「はっ、それが目的なのはバルバロスだろう?私の目的じゃない。まあ、なんでこんなことになったのかは知りたいから、会うつもりはあるけどね。カジワラの依頼をこなすのもいいじゃないか。帝国と獣人族の国のためにもなる」

「まあ確かにそれを認めぬわけではないがな」

 さすがに現在の両国の窮状に対して思うところはあるようだ。バルバロスが大人しくなった。まあ私も世直し行脚をしたいわけじゃないけど、成り行きだからね。


 セリカレギオ帝国宰相カジワラから「スキル譲渡」により「事象改変」スキルを受け取り、本人を魔族(バンパイア)から人族に戻した。カジワラは「事象改変」スキルの返却を断った。この先にステージに行くのなら必要となることもあるだろうからと。そして、私は彼からもう一つ依頼を受けている。その関係者がこちらに来た。

「こちらにおいででしたか。風も波も穏やかで、確かに外へ出るに最高ですな」

 この男をカジワラから紹介されてから既に1週間が経っている。獣人族の国「アフロユーフラ獣神国」の公爵だそうだ。テュリス・テティ卿、なんとイヌ獣人ではなくオオカミ獣人だった。

 この1stステージ、設定として創造神アーガルドが降り立ったフランギスタル王国やセリカレギオ帝国のある大陸と今現在晴海(サニーオーシャン)を渡り向かっている大陸がある。それがアーガルド神が遣わした神獣が降り立ったといわれる大陸であり、アフロユーフラ獣神国の成り立ちでもある。...細かいな運営(ゲーム)の設定。

 そして「神獣フェンリル」、その血を受け継ぐものが獣神国王族の祖先である。だから王族はオオカミ獣人で、コイツも王族の血筋というわけだ。秋田犬じゃなかったね。白狼(フェンリル)だったのね。...どうでもいいけど。

「あとどのくらいで港に着くの?」

 公爵に尋ねる。

「半分は過ぎましたからな。あと2、3日程度でしょうか」

 そうか半分過ぎたかと思いながら海を見やると水柱が上がった。イルカ獣人の護衛が海の魔物を仕留めたのだろう。常にかけている「探査」でそれを確認する。魔物は群れを成している。だが、戦い慣れているイルカ獣人達の敵ではない。次々仕留められていく。魔物の襲撃は大体1日1、2回は起きているので、見慣れた光景だ。

 と、海の底から大きな魔力反応が近づいてくる。

(この大きさ、魔獣だな)

 イルカ獣人も気付いたようだ大声をあげる。

「クラーケンだ!」

 船員たちが慌て始める。

「最大船速!転がらないようにしっかり掴まれ!」

 魔石がくべられたのだろう。スクリューが音を立てて回り始める。風属性や水属性魔法のスキル使いもいるのだろう。滑るように船が加速する。しかし、クラーケンの速度がやや上回るようだ。徐々に近づいてきた。

「さすがに大きいね。この船と同じ位かな?」

 そうすると大体150メートルくらいだ。それが本体の大きさだから触手を含めると約倍になる。やはり高ランクともなると海の魔獣は陸よりも大きさが半端ないな。イルカ獣人の護衛達も既に甲板に上がっている。魔道具で障壁を張り、捕鯨砲のような銛を撃つ大砲が用意された。...ちょっと心もとない。

「なぜ、クラーケンが?この航路に?」

 甲板の手すりにつかまりながらテティ公爵が声を震わせ疑問を叫ぶ。この航路は海の比較的底の浅いラインを結んでいる。確かに、魔素が濃い海の深い底にいるクラーケンがこの航路に出現するのはかなり珍しいのだろう。...濃い魔素ねぇ~。

「つまり、高い魔力につられて現れたってこと?」

「そうなるな。我々の魔力に反応したのやもしれぬ」

 バルバロスが他人事のようにつぶやく。

「そういえば、帝国に来るときに「魔力隠蔽」少し緩めてたね」

 敢えて存在をわからせるため、魔力をそれほど隠していなかった。全開にするとビビられるだけなので適度に存在感を出していた。まあ、バルバロスと2人でいれば、クラーケンも反応するか。

「しょうがない。何とかするしかないようだね」

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