セリカレギオ帝国帝都アルトウルス
「おっ、見ろバルバロス。帝都が見えてきたぞ」
進んでいる街道の行く手に、帝都であろう大規模な街並みがが見えてきた。
「まったく時間ばかりかけおって。我に任せればとっくにアルトウルスに入っておったものを」
まだ文句言ってやがる。「テレポート」なんかで移動してたまるか。それにしてもバルバロスの様子がおかしい。確かに5百年前の手がかりであることは間違いないが。...それだけか?
「ねえ、別にその宰相のカジワラとかいう奴が大改変の犯人というわけじゃないでしょう?なんでそんなに気が急いているの?」
「別に焦ってなどおらぬ。しかし、その男が何かを握っているとは思っておる。それが知りたいだけじゃ」
まあそういうことにしてやろう。帝都に入る人の列に並んで順番を待つ。さてこの帝都は通過してきた領都が昔の中華風の雰囲気だったのに比べ実に日本の江戸時代の雰囲気である。目の前の外壁の門は日本の三大楼門と肩を並べるような立派な構えだ。外壁も白壁に日本瓦の屋根が続いている。遠くに見える天守閣は帝城のアルトウルス城だろう。松本城だっけ?あの烏城と呼ばれているのに似た感じで、負けず劣らずというか、規模は断然にこちらが大きい。黒鉄色に輝いている。木造ではなさそうだ。
などと門の間から街並みを眺めながらつらつら考えていると、順番がきた。いつものようにギルドカードを見せる。門番の衛兵も明治の軍服のような感じの服を着て刀を下げている。剣ではないどう見ても日本刀だ。そしてカードを確認するなり、
「しばらくお待ちください。帝城よりお迎えが参ります。今、連絡いたしますので。どうぞこちらへ」
門の脇にある待合室のような場所へ案内された。どうやらポルタラ子爵から報告が来ていたのだろう。宰相のカジワラとやらは待ち構えているらしいな。
「なんか、いきなり会うことになりそうだね」
「都合がよいではないか。向こうがお膳立てをしてくれるのだ」
出されたお茶を飲みながら、そんな会話をする。お茶は普通の緑茶だ。煎茶だね。茶請けの饅頭がうまい。温泉饅頭だ。帝都に温泉あるのかな?
「お待たせしました。どうぞこちらに」
迎えに来たのは日本のSPみたいに黒のスーツを着た2人の男性だ。黒い眼鏡でもかければエージェント・〇ミスだね。外に出るとほんとに眼鏡かけやがった。そしてさすがに帝都だね、魔動車が用意されていた。
魔動車に揺られ、石畳の舗装路を行く。江戸村と明治村を掛け合わせたような街並みだ。大正ロマンな舞台となりそうな。そんな感じ。やがて大きな堀を2つほど抜けて帝城に着く。エージェントに先導され、城の中ほどにある高級感あふれる応接室へ通された。ここでしばし待つようだ。
「ようこそお越しくださいました。帝国の宰相を務めておりますタクヤ・カジワラです。いらしていただいたということは、話はポルタラ子爵よりお聞き及びと思います」
帝国宰相を名乗るタクヤ・カジワラは50過ぎの日本人そのままの外見だった。白髪の混じった黒髪を七三分けして、サラリーマンよろしくというか日本の首相よろしくスーツ姿だった。人払いがなされ、宰相、私、バルバロスの3人になる。
(これが元プレイヤーか。まさかゲームでこのアバターを使っていたわけではないと思うけど、年を取ったということか?あれ?魔族だよね?)
目の前の男は確かに魔族だ。
「私の外見が不思議ですかな?」
カジワラが声をかける。
「そうだね。魔族の外見は年取らないと思っていたからね。プレイヤーが魔族になるとアバターの外見、年取れる特典でもあるの?」
カジワラは少し相好を崩し、
「そんな特典はないですよ。大改変の後、ちょっと人族の寿命ではこのステージに戻れませんでしたのでね。このぐらいの外見になったときに魔族になったというだけです」
カジワラは、5百年前の大改変時3rdステージにいたそうだ。つまり「AA(ダブルA)」クラスであった。プレイヤーは人族である。寿命がある。「AA」クラスの寿命は200歳くらいであろうか。彼は150歳くらいまでは数えていたそうだが、このままでは寿命までに1stステージに戻れないと不死魔族となったそうだ。ちなみにゲーム内時間と現実の時間とは当然流れが違う。ログインしてこちらで1年過ごしたらログアウトして現実も1年経過していたら、普通に餓死している。まあ敢えて断りをいれる必要はないだろうけど念のため。しかしログアウトできない今の世界ではこの時間の経過は体感通りでリアルである。それだけ長い時間をかけてもここへ戻りたかったということなのだろう。
「人族より魔族にどうやってなったのだ?そのような事象の変更が可能など我は知らぬ」
バルバロスがカジワラの話に割って入る。
「そうですね。そのことも話しませんと。私を人族へ戻してもらうためにも」




