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閑話:ポルタラ子爵シーハン・ルー

 クロエにより無事人族に戻ったポルタラ子爵シーハン・ルーは、未だに1人で貴賓室にいた。既にクロエ・ビロウとバルバロスは帝都へ向けて出発している。

(昼食にクロエ様にごちそうして頂いた「カレーライス」は非常に素晴らしい味だった。あれが昔語られていた香辛料(スパイス)により作られていた伝説の料理なのか)

 そして食後に振舞われた「コーヒー」と「チョコレート」これも伝説の味である。宰相閣下がクロエ・ビロウを待ち望んでいたことが十分にわかる出来事なのであった。


 フランギスタル王国は、この世界の創造神アーガルドの最初に降り立った地として歴史に刻まれている。創造神はまず人に力を与えるため教会よりも国よりもまずギルドをつくったとされている。それまでこの世界は魔獣を含む魔物にあふれた地であった。人はまず冒険者になり安住の地を広げていった。冒険者とはギルドで冒険者登録をした者を指す。そしてそれを支えるため医療機関としての教会ができ、行政機関としての王侯貴族ができた。そして教会と王国貴族たちにより王国ができ、王国はこの世界の中心となる。

 一方セリカレギオ帝国は、王国より東方の更なる未開の地へと旅立った冒険者たちにより作られた国だ。今でこそ帝国貴族などと称しているが、もとは安住を嫌い更なる未開へと挑んだ冒険者たちである。仲間を集め魔獣を倒し、領地を広げ地方の豪族となり、群雄割拠の末が帝国の起こりだ。そしてさらに東の海の向こうにある獣人族の国との貿易により栄え、今の帝国の形が作られてきた。珍しい香辛料やコーヒー豆、カカオ豆など、帝国の扱うこれらから作られる数々の商品により、神の国である王国と向こうを張っていたのだ。...5百年前までは。


 大改変の後、すぐには大きな影響が起きたわけではない。当初は「プレイヤー」と呼ばれていた一部の冒険者が大騒ぎしていただけであった。しかしその「プレイヤー」達により「転移陣」や「魔動車」など魔石を大量に使う魔道具が発明される。それでも獣人族の国には「転移陣」が設置されなかったため(たぶんイルカ獣人たちが反対したのだろう)、帝国の貿易は安泰だったのだが、徐々にその取扱量が減っていくのであった。獣人族の国で珍しい香辛料やコーヒー豆、カカオ豆などが産出できなくなってきたのだ。そして、2百年前王国でダンジョンが発見された頃には、これらの扱いが完全に途絶えたのだった。今では、獣人族の国とは養殖の海産物や家畜、農産物と人族の工芸品(服飾や生活用品、魔道具など)のやり取りをする程度となってしまう。


 そう、帝国と王国のバランスはこの2百年で崩れてしまったのであった。そして帝国は元より武力によりできた国だ。王国に牙を向けるのは容易なことである。そこに待ったをかけたのが宰相閣下であった。

 最初に眷族になったのがこのポルタラ子爵の先々代のジアン・ルーである。

(思えばおかしなことなのだ。人族が数百年も生きられるわけないのに。誰も疑問に思わないなんて)

 その頃の帝国ではこの先々代ポルタラ子爵がセイラム男爵領に争いを仕掛けたことを契機に全面戦争への機運が高まっていた。宰相閣下が、ジアン卿を眷族化し出鼻をくじくことにより、小競り合い程度へと鎮静化を図っていった。そして遺伝なのかジアン・ルーの直系は眷族として受け継がれていく。

(しかし、それも私の息子で終わりになる)

 私の代まで小競り合いを繰り返してきた相手、セイラム男爵は血の気の多かった先代たちに比べ、今代になると戦に消極的になりだした。その辺の内情を探るべく数年前に息子を使者として男爵領へ差し向けた。そして、息子の暴走で失敗と言える結果を迎えたわけだが。

(しかし、最終的には宰相閣下の目論見を大きく外すことにならず済んだことは僥倖であった。聞かされた内容は驚愕ものであったが)


 1か月ほど前、シーハン・ルーは帝都に呼ばれ、宰相閣下から「クロエ・ビロウ」、あのおとぎ話の恐怖の大王「最狂戦士」がセイラム男爵領へ現れたことを聞かされた。息子が失敗するわけである。5百年以上前の伝説の人物にかなうわけがない。

(また、宰相閣下はあの大改変の前つまり5百年以上生きておられたらしい。まあ魔族であったわけだが)

 そして、クロエ・ビロウが大改変以前は「黒炎龍姫」最強最恐のプレイヤーと呼ばれていたことも教えられる。つまり、「プレイヤー」人族である。

(彼女が5百年間生きていたとは思えない。しかも、伝説とは真逆の神の使いかと思えるほどの立ち振る舞い。なにかそこに理由があるのだろう。宰相閣下に対する彼女の反応がそれを物語っている)

 むしろ脇にいた緑髪の青年、

(「バルバロス」と呼ばれていた。恐らく守護者様なのだろう)

 彼の反応、そちらの方がより過激であった。すぐにでも帝都に転移しようとしていた。

(宰相閣下は時が動くと申されていた。それが帝国にとって良い方向に動いてもらいたいものだ)

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