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ポルタラ子爵領主館

 ポルタラ子爵の使者がきた翌日の朝、迎えに来た馬車に乗り、領主館へ向かう。魔動車ではなかった、やはり魔石の扱い量の差によるものなのか単に帝国では普及していないだけか。ちなみに今日も迎えに来た使者は、「魅了」されていなかった。眷族でもない。

 領主館は昔の中国のお城のような感じである。でかい。結構な幅の堀を抜け、城壁を抜け、やがて馬車が停まる。

「ようこそいらっしゃいました。ご案内いたします。こちらへどうぞ」

 執事のような格好、白髪をオールバックにした初老の男が、案内に立つ。こいつも「魅了」されていない。

(変だな?「魅了」されている奴がいない?息子が眷族だったのに?こちらのことはわかっているようだし、先手を打たれているのか)

 まあ、そもそも罠だったとしても、嵌る気満々で申し出を受けたわけだし、向こうの出方を窺うだけだけど。

 館の内装は、和風である。なんか旅館?昨日泊まった宿もそうだけど、外は中華、中は和テイストなのである。応接室だろう案内された部屋は、畳敷きではなかった。土足OK、ソファーに座る。さすがに高級な内装だ。


「お待たせしました。ポルタラ子爵のシーハン・ルーです。ご足労いただき感謝します」

 出されていたお茶(緑茶だ。たぶん玉露)を飲んでいると、昔の日本の軍服のようなこげ茶の詰襟を着た40代くらいの男が部屋に入り挨拶をした。セイラム男爵領で見た帝国の使者の親だと一目でわかる似た顔立ちだ。髪色も同じ紫紺で、こちらは短く刈り込んでいる。

 そして、こいつは「眷族」だった。やはり子がそうなら親もそうだったわけだ。人払いがなされ、3人だけになる。

「私らが、何しにダンビルの森を抜けてこちらに来たのかわかっているみたいだね」

 と静かに問うと、

「そうですね。王国のセイラム男爵領では我が息子がご迷惑をおかけしました。誠に申し訳ないことです」

 まあ、あれから1か月経っているわけだし、情報を得るのに十分な時間だ。そういう意味では、むしろこちらが動くのを待っていたといったところか。

「そちらの息子さんがしでかしたことは、そのうち王国より正式に話がいくと思うよ。それに私らは関与しない。別に個人的に何かされたわけじゃないしね。ちなみに息子さんは人族に戻しておいたよ」

「それはお手間かけました。来ていただいた用件の一つはそのことです。実は私も人族へ戻してもらいたいのです」

 ほう、そうきたか。館の人達が「魅了」されていないのはそういうことか。

「へえ~、それは帝国に叛意を示すことになるんじゃない?」

「とんでもないです。叛意というよりむしろ帝国の総意とお考えいただければ。それが用件のもう一つなのです。是非この後帝都へと赴いていただき宰相閣下にお会いしていただきたいのです」

 う~ん、総意と来たか。なんだろう。帝国は王国を敵視していたのでは?ダンジョンから産出される魔石による国力の差が原因だったはず。これまでの流れ、この問題は解消されていないのではないか?

「確かにこれまで帝国は王国に対し、少しでも魔石の交渉を有利にできるよう国境周辺の貴族に圧欲をかけたり、懐柔したりと敵対行為と取られてもおかしくはないことをしてきました」

「しかし、まあこれは一つの時間稼ぎでもあったのです。帝国内にはもっと過激な強硬派もいたので、それらを抑え込むというか適当に目をそらす目的もあったのです」

 なるほど、全面戦争を回避するため適度なガス抜きで帝国内の王国に対する不満を逸らしていたと。で、

「その問題の解消と眷属や魔族に何の関係が?」

「魔石の問題は置いておくとして、今回王国に魔族および眷族の存在が知られました。このままでは王国との交渉にもなりません」

「しかし、眷族を人族に戻せるあなたが帝国に来られた。たぶん王国の依頼を受けてということもありますが魔族や眷族の対処するためだと思います」

 つまりは王国にある帝国の懸念をひとまず解消したいと。

「魔族を人族に戻せるか分からないよ?お宅の息子を眷族から戻した時は体内の魔力の塊を「聖回復(セイクリッドヒール)」したら偶々上手くいっただけだし」

 それに、魔石不均衡の問題はどうするつもりだ?強硬派を粛清でもするのか?しかし、それを含め宰相閣下とやらは何か考えがあるらしい。

「実は宰相閣下はあなたが現れるのを、待っていたのです。私も驚きましたが、あなたは「クロエ・ビロウ」、「黒炎龍姫」最強最恐のプレイヤーと云うではないですか」

 宰相閣下。魔族となった元プレイヤー。タクヤ・カジワラといったか。そいつが私が現れるのを待っていたと?まるで5百年前の出来事を知っているような。私が「はじまりの教会」からこの世界にとばされた理由がわかる?

「そういうことなら、ぜひ会う必要があるね」

「よし、帝都アルトウルス近くの森にも魔法陣があるぞ。早速...「嫌だといったろう!」

 最後まで言わせず、バルバロスにかみつく。こいつは何で学習しないんだ?それに目の前の子爵を人族に戻してもいない。

「いえ、トルーファンギルドでも転移陣の準備させていただいておりますが」

 子爵も空気読めないな。

「だ・か・ら!嫌だっていっているでしょ!普通に街道を行かせてもらうよ」

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