セリカレギオ帝国ポルタラ子爵領
少し修正させていただきました。後のストーリーとの整合性を図るためです。筋そのものは変えてません。
チョロい嵐龍を「盟約」より解き放ち帰してやってからも結構大変だった。ノビている帝国の使者を拘束してロアノークの領主館へ戻り、ワリト・メンドーサも拘束して、そいつらを正気に戻った領主館の人たちに託し、エルシノア辺境伯に連絡をとり、...いろいろ頑張った。バルバロスが。「テレポート」しやがった分は働いてもらう。
私はもっぱらロアノークギルドの地下にあった転移陣で輸送係だ。自分が転移するのは嫌いだが、他人ならちっとも気にしない。エルシノア辺境伯の領都から結構人を転移させた。まずデビー嬢、そしてアルバ―ヒルギルドのギルマス、エルシノア辺境伯の執事かと思っていたら王国騎士団の副団長だったジルベルト・ビスカラ。彼の部下の騎士団員もぞろぞろと付いてきた。まあ、いろいろ後始末をしてくれたようだ。頑張っていた。
というわけで、しばらくセイラム男爵領都ロアノークで過ごしていた訳だ。復興も手伝った。主にバルバロスが。まあ奴の知り合い(嵐龍)の所為だからね。頑張ってもらわないと。しかし嵐龍のこと何だか知っているような気がするんだけど...クロエの方の記憶にうっすらとだけど。
「結局、あの嵐龍どういう知り合いなの?名はあるの?」
「管理者ではない故、名はない。風の谷ファリホーアに住むものという呼び名になるな。たぶんそこへ帰るだろう」
5百年前の大改変の時、そいつはバルバロスに付いていたそうだ。なんだろう師匠と弟子のようなものか?
「そんなものではない。ただ我に付きまとっておっただけじゃ。改変後も付きまとって少々煩わしかったから、1stステージのダンジョン出口の見張りにつけたのじゃ」
大改変でポータル(ゲームでいうセーブポイント)やクラスチェンジクエストなどが消滅または機能を失った。各ステージ間の移動も管理できなくなったため、「プレイヤー」や冒険者の流出入を制限する必要が出たらしい。
「じゃあ、あの嵐龍ここにいたらダメなやつじゃん。ダンジョンも知れ渡ってるし。大丈夫なの?」
「問題ない。今はもう制限しておらぬしな。それにダンジョンマスターがおる。そいつはあの嵐龍より頼りになる。それに今やこのステージは、魔石の量がそれなりに必要となってしまったでの。ダンジョンの開放はそういう意味では丁度良かったのじゃ」
そういうことならいいか。いずれダンジョンマスターにも会うわけだし。以前はダンジョン制覇がクラスチェンジクエストだった。「プレイヤー」や一緒にパーティを組む冒険者は基本それで次のステージに行ける。「プレイヤー」は単にステージクリアで「A+(ハイA)」とクラスが上がるわけだが、冒険者(NPCたち)はダンジョンマスターを倒した後にゲットできる「魔術」で別のステージで活動できるのだった。
1か月ほどロアノークで過ごした後、セリカレギオ帝国へ向けて出発した。新たな依頼を受けたわけだ。まあ、魔族の存在が明らかになったわけだから放置できないよね。私も放置できないから王国の依頼はついでだ。
(元「プレイヤー」というのが重大な情報だ。まさか生きている奴がいるとは思っていなかった。ぜひとも話が聞きたい)
どう見ても執事のジルベルト(どうやら彼は騎士団の諜報担当ということらしい)が頭を下げ、
「ありがとうございました。おかげさまでセイラム男爵領の問題を片づけることができました。引き続きよろしくお願いいたします」
う~ん、うまく使われている感じしかしないが、しょうがない。
「まあ、魔族のことは確認してくるよ。どうなるかはわからないけどね」
ダンビルの森を抜けると、セリカレギオ帝国ポルタラ子爵領に入る。捕まえた帝国の使者とやらは、ここの領主の息子だったらしい。
以前「万年ルーキー」としてゲームをプレイしていた時は、王国でCLvを上げていたので、帝国には足を踏み入れていなかった。「クロエ・ビロウ」の記憶も同じだ。東洋を意識した国に特に興味がなかったというのもある。しかし、元の世界に戻れないとなれば話は別だ。何やら郷愁を感じさせる風景が目に入ってきた。遠くに見えてきた村も中国とか日本の昔の農村を思わせる。
「これから、どうするのじゃ?」
「まあ、この子爵領の領都を目指すよ。眷族も対処していかないとね。虱潰しは難しいだろうけど」
眷族だった子爵の息子は魔族の魔力の塊を「聖回復」で消してやったら人族に戻った。
「聖回復」は聖属性魔法のスキルだ。光属性の「回復」では治せない重傷を負った身体の欠損、身体に巣食っている病魔(癌みたいな?)などを元の状態に回復というか再生する。実にチートである。魔族の魔力の塊も病魔という扱いだったのかもしれない。結果的に上手くいった。
親玉の魔族をどうにかすれば眷族化を解けるのかわからないということもあり、見つけられるのならできるだけ対処した方が良いだろう。とりあえず息子が眷族だったので、領主をはじめ上層部は確認しないと。「魅了」もされていれば解いておきたいし。
領都はトルーファンという。セイラム男爵領を出るとき、簡単に帝国の地理を頭に叩き込んできた。まあ、バルバロスに聞きゃいいんだけれど。
しばらく長閑な田園風景が続く。
(米が食えるな。まあ、「ストレージ」にストックはまだまだあるけれど、食堂では普通に日本の定食にありつけるかもしれないね)
「ちょっと寄り道していこう」
バルバロスに声をかけ、近づいてきた村で食堂を探すことにした。ちょうど昼時だ。
「グルジャノ村へようこそ。珍しいね、王国の人かね?それならよく国境の森を抜けられてこれたね」
村の門番に、声をかけられる。帝国の人々は基本東洋系の顔立ちだ。功夫でもしそうな格好に簡易な鎧をまとっている。西洋系の我々は周囲からは浮いているようにも見える。
「私らは冒険者だ。ここらにも冒険者はいるだろう?王国系の人間も普通にいると思うけど?」
ギルドカードを見せながら答えると、
「昔はいたみたいね。最近はめったに見なくなったね。ギルドのある街にはそりゃいるだろうけど、あの森には最近ドラゴンがいるね。魔獣がいなくなったんで冒険者もやってこないね。あんたらも森に行くなら無駄足になるね」
「いや、私らは王国から来た。けれどあの森にドラゴンなんていなかったよ」
空っとぼけて答えた。
「そうなのね?そのドラゴンは帝都の従魔という噂で、王国と隣のセイラム男爵領が揉めそうだからと、国境の森で守っているってことだったね、不思議ね」
なるほど、あの嵐龍そんな扱い(従魔)だったんだ。
村に入り、醤油や出汁のいい匂いをさせている定食屋を見つけた。




