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チュートリアルの村

「?、ここは・・・」

 気が付いたら、古びた教会の礼拝堂とおもわれる薄暗い広間の長椅子に座っていた。

 長年使われた形跡がなく、ほこりがたまっている。ところどころ割れてガタついている木窓から光が差し込む。祭壇であろうところには何もなく、壁面が朽ちており、背後の鬱蒼とした木々がそこから覗けた。

「あ~、やっぱり。」

 自分の姿を見る。「クロエ・ビロウ」のままである。まだ顔の確認をしていないけど、そんなわずかな可能性にすがっても意味はなさそうだ。黒髪ボブのクリっとしたオッドアイ(う~んイタい)を持つ美少女に違いないから。あの恥ずかしい二つ名やこのアバターを嬉々として使っていたヤツは相当重い病を患ていたのだろう。

 しかしもうすでに自分がその「クロエ・ビロウ」であることを認識してしまっている。あの激しいめまいのなか、頭の中に強制的に彼女がインストールされた。そのせいか、パニックにならず妙に落ち着いている自分に気付く。

(しかし、なんで?なんでこんなに朽ちているの?)

 先ほどと同じ場所とは思えない。まるで何百年と眠った後みたいだ。

(ただのバグってことではないんだろうねぇ)

 ダメもとで右手を動かす。...やはりログアウトできない。どうやらこの世界に入り込んだというか閉じ込められたというか。

「よし、行動だ。今度こそ外に出よう。」

 扉に手をかけ大きく広げる。...さすがに今回は何も起こらなかったが、

 目の前に廃墟が広がっていた。

(チュートリアルの村だよね?)

 まあ教会が朽ちていたわけだし、予想していなかったわけではないが、村はなかった。というか村ではなくなっていた。異常事態であることは疑いようもない。とにかくこの世界に、そして自分に何が起きたのかを知る手がかりが欲しい。まずは廃墟となった村を見て回ることに。

 見覚えのある通りを歩く。かつてはルーキーたちが希望に胸膨らませ、練り歩いていたメイン通りだ。破壊の跡、がれきや物の散乱などはあれど人影などは見当たらない。

「あっ、武器屋だ」

 頑固だが、気の良いドワーフの親父の姿が思い出される。少ない稼ぎから酒をおごらされたものだ。というかいつも誰かしらたかりまくっていたなあの親父。まあこのゲームのNPCだけど。

 中をのぞくが、めちゃくちゃに荒らされている。長剣やらハルバートやら錆びついたそれらが散乱している。

(何が起こったのかなぁ)

 まあ大規模な破壊行為が起きたことは村の様子を見れば間違いない。しかし、それが災害なのか戦闘なのか、疑問は尽きない。「ある可能性」も思いつくが、ちょっと考えられない。そもそも、ここはゲーム本番前の「チュートリアルの村」である。万が一ログインしてきたルーキーも、これでは途方に暮れるに違いない。たぶんもうそういう事態は起きないのだろうが。

 ギルドのあった場所に足を運ぶ。

 あの立派だった建物も半壊していた。正面扉があったところは大穴が開いており、向こう側が見える。そのまま穴を抜けると、大きな闘技場のような壁が目に入る。壁の裂け目から中に入る。

「なにもないね」

 そこはギルドの訓練場だった。ここでこれまたゲームのNPCである虎獣人の強面教官にしごかれ戦闘の基本を叩き込まれるのだ。そして付近の森でクエストをこなし、レベルを上げ報酬を得て装備を揃えていく。課金組はいきなり魔法付与された高価な装備を身に着け、難易度の高いクエストであっという間にレベルを上げクラスチェンジして村を出ていく。無課金組は低いクエストで数をこなしてレベルを上げるしかない。装備だって、何とか得た少ない報酬をドーワフの親父のたかりなど数ある障害から守りつつ、手にしていくのだ。実に貧乏人に厳しい世界だ。

 いや、今ここで愚痴ってもしょうがない。一通り訓練場を見まわす、訓練用の武器や防具などガラクタと化して散乱しているが、どうやら何もなさそうだ。っと足元に落ちているものに目をやる。

「うん?」

 ソレを拾い上げる。この場所に本来あるはずのないものだ。「ある可能」が頭をもたげる。

(確かめてみる必要ありそうだね)

前の話とは時間軸がずれているということが伝わればと思います。

序章部分はできるだけ2話ずつ、連日上げていきたいと思います。

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