誕生〜静寂な森の中にて〜
静寂な森の中にそよ風が差し込む何気ない日常の中に、ポツンと一軒だけ目立ちそうで目立ちにくいあまりパッとしない家が何やら騒がしそうにしていた。
「あなた、ついに生まれたわよ……私たちの子供が……。」
「ああ……ついに生まれたのかっ!我が家の宝が!」
「そうよ。私譲りの綺麗な指とあなた譲りのたくましいお目目を持って生まれてきたわ……」
そんな何気ない幸せを絵に描いたような夫婦の会話が聞こえる。
そんなごく普通の家庭の中で、
(ここはどこだ?こやつらは何を言っているのだろう?聞いたことがない言語だな……)
だいぶ、いや、やばいくらいのイレギュラーなことを考えている子供がいる。
「なあ、マリア。この子の名前は何にするか決めたかっ?」
「ええ。あなたは?」
「もちろんだともっ!」
と子供には御構い無しで自分たちの世界に入っていく。
「この子の名は……」
「この子の名前は……」
「「タイム、タイム・E・ハトオリーブ」」
「……どちら様でしょうか?」
「「……」」
「……」
「いや〜この子も名前を機にいいってくれたみたいよ?あなた。」
「え?いや……それどころじゃない気が……」
「あ な た ?」
「はっハイィィィィ!」
仲睦まじそう?な夫婦によって生まれた新たな生命。
その名を「タイム」という。
この生物個体の人生が今開幕した。
「タイム……お前はこんなに怖く何ないでくれよ……」
「何か?」
「イエナニモッ!!」
「……どうなっているのだ?ここは?……」
タイムの両親、母マリアと父クオーツがやっと静かになり、生暖かい静寂に身を委ねる中、
タイムはというと……
(我は確かにあやつ……勇者によって殺されたはずだ。
だが我はこうして息をしている。
一体なぜだ?)
と、「お前子供じゃないだろ」と言いたくなるようなことを考え始めた。
(全く訳がわからない。しかし、もっと訳がわからないのは……)
また唐突に自分の手や体を確かめると、
(なぜかまるで赤子……いや、まさに赤子だ。となると、あまり信じられんが……転生か?……)
さすが前世が魔王である。情報が少ない中でもその考えは的を射ていた。
イレギュラーなな赤子。前世では第102代目、歴代第3位ほどの実力を持った魔王だった。
しかし、相手が悪かったのか歴代第1位の勇者に殺されてしまい、仲間の元へ帰るはずだった魔王は過去の記憶を持ったまま転生した。
(仮に転生していたとして、なぜ我は前世の記憶が残っているのだ?
確か転生時には前世の記憶が消滅するはずだったような……。
いや、今はそんなことはいい。
前世の記憶を持って生まれ変わってきたのだ。
あやつとの約束を今、果たそうではないか。
タイム・E・ハトーブとしての人生を……我……いや、
俺の第二の人生、リスタートだ。)
こうしてタイム・E・ハトーブの人生は幕を開けた。