始まり〜魔王城にて〜
雷鳴が鳴り響く赤黒い空の下で二つの閃光とともに金属と金属が擦れる音が鳴り響いていた。
気を抜けば引き込まれてしまいそうな光の中
「壊すことしかできなかったお前のその力を、守りきることができなかったその力を…俺が使わなくて済むような世界にしてやる。だから、もうこんなことはしなくていいんだ!」
ふと、そんな声が鳴り響いた。
その言葉を発した光…勇者は正面で剣を強く握りしめる闇…魔王にそう言った。
だが魔王は
「私はたくさん物を壊しすぎた。だから私はその手を取る資格がない。たとえその手を取っていいと貴様が言ったとしても…私は壊してしまったものたちのためにもここで命を使い果たさなければならないのだ。」
「だがっ…。けれど、それがお前の覚悟とけじめの示しなのか…」
そうなのだろう。とまるで他人事のように魔王は言った。
何かを言いかけた勇者は爪が手に食い込んでしまうほど強く手を握りしめ、
「やはりお前はお人好しすぎるんだよ…」
と吐き捨てるように言い残し、刹那に体にまとう光を強くした。
「俺はお前を忘れない。お前のそのどこまでも他人思いなところを次の人生があるならば、その手をこまっている奴らに差し伸べてやれよ…」
「…」
勇者の言葉に対し、静かに剣に力と輝き…魔力を宿して、
「ああ。貴様のような存在になれることを願うさ。」
刹那、二つの閃光は衝突しやがて魔王の光は途絶えた。
はらはらと舞い散る剣のかけらとともに魔王は「なれるかな…君みたいに…」
と小さな弱音のような言葉を無意識に呟いていた。
そして勇者は、
「なれるさ…お前なら」
そう強く返したのだった。
その後、魔王はどのような風の吹き回しなのかは定かではないが転生した。