第一部-9 少女
扉が開いた先には、大きな部屋があった。
木の床はどこまで続いているか分からないほど長く、天井はめまいがするほど高かった。
その部屋の中にぽつんと、ひょろっとした男の人が立っている。
全身黒色でだぶだぶのスーツから、細長い手足が伸びていて、落ちくぼんだ目はギラギラと輝いている。
「副校長殿、新入生の皆さんです」
感情のない声の主が報告した。
「ご苦労、エウレカ、下がっていい。新入生たち、中に入りなさい」
みんなは恐る恐る足を踏み出した。
床がギシギシ鳴って、ほこりが小さく舞った。
「百五十七地区立学校に入学おめでとう」
副校長先生が挨拶をした。
「まず、ここが遊ぶ場ではないことを話しておかなければならない。百五十七地区立学校は将来の仕事につながる技術を学ばせるためにつくられた。ここで必死に技術を習得した者は、皆立派な漁師や農民になっている。だが、真面目に授業を受けずにチャラチャラと過ごしていた奴らの中には、食うのに困っているのもいると聞く。
新入生の歓迎会がまもなく始まるが、浮かれずに、これから百五十七地区立学校の生徒の一員になるという自覚を持ちなさい」
副校長先生は一瞬、隣にいる男子とコソコソしゃべっているビキにチラッと目線をやった。
「ついてきなさい」
副校長先生について生徒たちは右に曲がり、細い通路を歩いて、教室と思われる部屋を横切っていった。
やがて、何百人ものざわめきが聞こえてきたーー学校中がもうそこに集まっているに違いない。