第一部-8 少女
エリがバスを降りると、先に降りていたローレンが、
「学校、大きいね」
と、エリに向かって言ったので、エリは学校を見上げた。
尖がった屋根は空に吸い込まれてしまいそうなほど高く伸びていて、横幅は人が百人が手をつないで並んでも、まだ長さが余るように感じるくらい長かった。
その迫力にエリは圧倒された。
「第五島と第四島の新入生はこれで全員だな。私についてきなさい」
高くもなく低くもない平坦で感情のこもっていない声が響いて、エリはその声がしたほうに振り向いた。
だが、エリの周りにいる人の頭が邪魔をして、エリはその姿を見ることができなかった。
周りが動き始めたので、エリはみんなの歩みにあわせて進んだ。
コンクリートで舗装された、坂と階段が交互に組合わさっている道を、みんなおしゃべりしながら歩いた。
日差しが強かったので、明日は日焼けで肌がヒリヒリ痛むだろうとエリは思った。
「もう無理。疲れちゃった」
ルーシーがハアハアと息を切らしながらそう言ったとき、
「新入生たち、学校にまもなく着くぞ。この階段をのぼったらだ」
「うぉーっ!」
何人かの男の子がそう叫んだ。
階段を上りきると視界が急に開け、大きな広場に出た。
広場にはきれいに刈りそろえられた木や草花が植わっていて、その向こうに学校の門が見えた。
「右側に見える白い建物は図書館で、左側にたくさんある塔は君たちがこれから過ごす寮だ」
みんなが学校の門の前に着くと、門は独りでにギィーっと開いた。