第一部-5 少女
ローレン、と呼ぶ声が聞こえて、エリとローレンはその声の方へ顔を向けた。
「ガラガラの実、ローレンもいる?」
エリとローレンの前に座っている女の子たちのうちの一人が、透明な袋に入っている小さく赤いシワシワの実をローレンに見せた。
うん、とローレンは頷いてその実を何個か受け取り、口の中に入れた。
「なんか声を出してみて」
さっきローレンにガラガラの実を渡した、そばかすが目立つ女の子は、そう言ってローレンを促した。
「あまぐておいじい」
ローレンはガラガラ声でそう言った。
それを聞いてエリは、アハハハッと大笑いした。
「ぞんなにわらわないぜよ」
そう言っているローレンを尻目にエリは笑い続けた。
笑いが収まった後、エリは
「ガラガラの実、アタシにもちょうだい」
と手を差し出した。
「……うん」
そう答えたそばかすの女の子はエリにその実を一個、エリの手に乗せた。
"ねぇ、あれ見てよ" "あっ、学校だ、学校が見えるよ"
どこからかそんな声が聞こえて、エリもローレンもそばかすの女の子も窓の外へ視線をやった。
つんつん尖がった屋根が特徴的な大きな建物が、海の上に、遠くかすんでいるのをエリたちは見た。
「学校の七不思議って知ってる?」
突然そう言ったのはそばかすの子の横に座っているぽちゃっと太った女の子だった。
「知らない。ルーシーは知ってるの?」
ローレンは興味深げに聞いた。