第一部-2 少女
「学校、楽しみ?」
「うん、楽しみ…だけど…」
女の子は短いポニーテールを揺らしてそう応えた。
「アタシ、めっちゃ楽しみ!!」
「でも、やっぱり私は、ちょっと不安かな…」
「なんで?寮のことが不安なの?」
「そうじゃなくて、えっと、第一島の役所のほうで爆発があったのは知ってる?」
「そんなこともあったような…」
エリはその事件のことを思い出していた。
確かに、その事件があった三ヶ月前はしばらくその話題で周りは持ち切りであった。
「こんなことが起こったのは、ママも生まれて初めてだっていってたし。その事件で、何人か死んじゃったらしいから、やっぱり怖いよ。犯人も捕まっていないみたいだし」
「でも不安になる必要はないよ。学校で爆発が起きることなんて絶対ないから」
「そうだといいけど…」
女の子は少し俯きがちにそう言った。
「そんな暗い話はもういいでしょ。それより、アンタの髪型可愛いね」
女の子は自分のポニーテールを触りながら、
「ありがと。」
と言った。
「君のツインテールも可愛いよ」
そう言われてエリは
「えへへ」
と言って照れ笑いをした。
柔らかい風がその女の子とエリの間を通り抜けた。
その風が魚くさい匂いを運んできたので、エリは鼻をつまんだ。
「ねぇ、見て。バスが来た」
誰かがそう言って、みんな一斉に水上バスのほうに顔を向けた。
「「「わぁ」」」
期待に満ちたような、そんな声が何人かの口から漏れた。