第一部-1 少女
「行ってきます!」
エリはそう言って手を振った。
「いつでもお手紙、頂戴ね」
と、エリのお母さんが言った。
それに続いて、
「もう学校に行く年になったなんて。13才だものね。大きくなったわねー」
隣のおばさんは目を細めた。
「海に落ちて大きなタコの怪物に食べられないようにね!」
と弟が言った。
「うん」
エリは三人の言葉に頷いて、もう一度、
「行ってきます!!!!」
と言って歩きだした。
エリは第四島に家族と一緒に住んでいた。
第一島は役所で、第二島は学校、その他は居住のための島である。
エリが住んでいる第四島は特に大きいというわけでも小さいというわけでもない普通の島だ。
そして、他の多くの島と同じように、何十階か数えられないくらいの1つの大きなアパートが島のほとんどの面積を占めていた。
エリはそのアパートの階段を重いバックを抱えながら五つ飛ばしで下りていく。
そして、階段が途切れるとその先の階段に向かって廊下をダッシュし、そして、また、階段を全速力で下り、ダッシュし……
今が何階にいるか分からなくなる頃にはもう一階に着いていて、エリはアパートの門を抜け、水上バスの停留所に向かった。
すでにバス停にはエリと同じくらいの年齢の子たちが何人か集まって盛り上がっていた。
「おいらの兄ちゃんは学校で表彰されたんだぜ!」
「先生っていい人かな?」
「お腹すいたー」
その中に、エリは、ボーっと空を見てる顔見知りの女の子がいるのをみつけた。
二人は住んでいるアパートの部屋が離れていたため、お互い話したことが一度もなかった。
だが、エリはバックを地べたに置き、まるで親しい友人とでもいうみたいにその女の子に話しかけた。