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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第三章「悪魔の天使」
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第九九話「悪魔の事情と天使の事情、どちらも謎のままだった」

 シャムシエルのお(かげ)で巨人の死霊(しりょう)たちはつつがなく神の御許(みもと)へと送り出すことが出来(でき)た。


 〈隠された剣(クォデネンツ)〉もシャムシエルの手へと(もど)り、サマエルさんも結界(けっかい)維持(いじ)する必要が無くなったため、これで三対一となりアザゼルの圧倒的(あっとうてき)不利な状況(じょうきょう)となった。


 しかしそんな状況にも(かか)わらず、(にら)み合っていたシャムシエルから距離(きょり)を取ったアザゼルは「なるほど」と何かに納得(なっとく)したように私を見て(うなず)いている。


「どうやら、本当に神の奇跡を使えるようだな」

「……本当に、と(おっしゃ)いましたか?」

「ああ」


 ということは、アザゼルは誰かから私が奇跡を行使(こうし)出来ると聞いたことがあると言う(わけ)だ。そしてそれを(かく)すつもりも無いらしい。


「教えて下さい。貴方(あなた)は一体何のために巨人の死霊を(あやつ)っていたのですか?」

「ふむ……」


 アザゼルは右手でサーベルを(かま)えたまま、私の質問へどう答えたものかと思案(しあん)するように左手で(あご)をさすった。


「まず、巨人の死霊は俺が操っていたのではないし、知らん」

「……何ですって?」

「最初にそう言っただろう?」


 確かにそう言っていた。テキトーに答えていたと思っていたら、本当のことだったの?


「っていうかアザゼル、アンタって確か人間の奥さん(もら)って山に引き()もったんじゃなかったの?」


 え、悪魔だけど人間の奥さんを貰っていたのか。というか悪魔だし、元は天使だったのかな? だとしたら人間と恋に落ちたから悪魔に()ちたんだろうか。


何時(いつ)の話だ、サマエル。人間は三〇〇〇年も生きることはない。お前が封印されている間に俺だって山から出てくるさ」


 (あき)れた表情のアザゼルの言葉に、サマエルさんは「そりゃそうか」と(かた)(すく)めた。


「話を戻すぞ、アザゼルとやら。貴様(きさま)は巨人の死霊を操ってはいなかった。だが、彼らが東へと向かうことを守る役目(やくめ)があったのだな?」

「どうだろうな、天使。考えてみると良いさ」


 うーん、アザゼルはまともにこちらの質問へ答えるつもりは無いらしい。


 でも、シャムシエルは彼の言葉に何か気づいたようで、「まさか」と顔色を変えた。


「そのまさか、だと思うぞ、天使」

「……そういうことか」


 シャムシエルがアザゼルの言葉ですべて納得したかのように、構えていた魔剣を力無く下げてしまった。え、どういうこと?


「シャムシエル、どういうことですか?」

「……すまない、リーファ。私には答えられない」


 (つら)そうに(くちびる)()むシャムシエル。またそれか。


 昨日、ミスティさんが来た時からシャムシエルは何処(どこ)かおかしい。この天使は何かを隠している。というか、話す権限(けんげん)を持っていないのかも知れない。


 もしかして、とは思うが――。


「悪魔アザゼルよ、まさかとは思いますが、貴方はシスターミスティと関係がある存在(そんざい)なのですか?」

「……ほう、中々に(かん)(するど)いな、この聖女様は」


 (おどろ)き、感心したように私を賞賛(しょうさん)するアザゼル。当たりだったか。


 となれば、あの巨人の死霊は、何者かがミスティさんを狙って放ったという流れだったのか?


 しかし、シスター一人を始末(しまつ)するためにあんな大掛(おおが)かりなことをする必要があるのだろうか? それも悪魔の護衛(ごえい)を使って?


「考えているな、聖女よ。それは貴様に与えられた試練(しれん)とでも思え」

「試練……?」


 何を言っているんだ、この悪魔は?


 その言い方は、まるで悪魔じゃなくて――


「そろそろ頃合(ころあ)いだ。聖女リーファ、堕天使(だてんし)サマエル、そして能天使(パワーズ)シャムシエルよ。俺はまたお前たちの前に(あらわ)れるだろうが、今回のようには行かないと思え」


 そう一方的(いっぽうてき)に言い(はな)って、アザゼルは背中(せなか)の一二枚の(つばさ)から魔力を放出し、一瞬(いっしゅん)で西の方へと飛び()ってしまった。


「何だったんだ一体」


 憮然(ぶぜん)とするサマエルさん。うん、全くもって同じ気分です。


 ただ一人、事情を知っているらしきシャムシエルだけは、何かを(こら)えるように剣を持たぬ方の(こぶし)(ふる)わせていた。


◆ひとこと


悪魔は人間を誘惑するだけで、それは試練ではないですよね。

では試練を与えるのは……何でしょうね?


--


次回は明日21時半頃に更新予定です!

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