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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第二章「寂しがりやの女神様」
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第八七話「こういう時のために攻撃魔術も覚えておくべきでしたね」

 ベリアルが出て行き、外から(かんぬき)()ける音が鳴り、そして部屋に沈黙(ちんもく)(おとず)れる。


 ……閉じ込められてしまったか。


 仕方ない。教会を破壊(はかい)しちゃうけど、緊急(きんきゅう)事態(じたい)だし後で(あやま)るとしよう。


「主よ、どうかそのお力で、正しき怒りを(しめ)(たま)え――」


 これから使う(じゅつ)は、絶大(ぜつだい)な力の奔流(ほんりゅう)で対象を叩き(つぶ)す奇跡である。一応(とびら)の向こうには神気(しんき)も魔力も感じないので誰も居ないし、大丈夫(だいじょうぶ)だろう。


「〈怒り(アフ)〉!」


 ………………。


 あ、あれ? 奇跡が発動(はつどう)しない?


 というか、神から神気をお借りするためのパスが切れているような……?


「……まさか」


 (あわ)てて今度は周囲の神気を探知する〈天使探知(エンジェルフィール)〉の神術(しんじゅつ)展開(てんかい)する。こちらはきちんと展開出来(でき)た。しかし――


「……神気が探知(たんち)出来ない?」


 いやいや、天使のカナフェル大司教(だいしきょう)猊下(げいか)やハロムさん、シャロームさんなどがいらっしゃる(はず)。神気を探知出来ない筈が無い。


 となれば、理由は一つだ。


「この部屋、神気が遮断(しゃだん)されてるのか……、やられた……」


 恐らくベリアルの結界か何かだろう。私が神から神気をお借りすることで奇跡を行使(こうし)することが出来ることを聞き、対策(たいさく)(こう)じたのだ。神術は自分の神気を使うので使えた、ということなんだろう。


「魔力はどうだろう? その流れを我に(うつ)せ、〈魔力探知(マナサーチ)〉」


 ……うん、魔力は感じられる。ということは、魔力は(さえぎ)られていないということだ。


 しかしこれは困ったぞ。魔力が遮られていないのはいいのだけれども、私は攻撃魔術が苦手(にがて)だ。ぶっちゃけると下手糞(へたくそ)だ。この扉を(こわ)せる自信が無い。


「風の精霊を呼んで閂を切って(もら)おうにも、ここは(まど)が無いし、うーん……」


 いっそのこと火を付けるか? いやいや。教会にはたくさん人が居るし、延焼(えんしょう)したら大惨事(だいさんじ)だし、何より逃げ(おく)れる可能性しか無い。却下(きゃっか)


「……もうこうなったら、魔術で壊すしか無いか」


 下手だからとか言ってはいられない。魔力切れになる心配は無いんだし、壊れるまで魔力弾(まりょくだん)(はな)つだけだ。


 私は深い溜息(ためいき)()くと、扉に向かって杖を(かか)げた。




「や、やっと出られた……」


 小一時間も掛けて閂を破壊し、ようやく部屋の外へ出られた。途中(とちゅう)で誰かが異常に気づいて開けてくれることを期待したのだけれども、そんなことは無かった。恐らくみんなベリアルの術に掛けられているのだろう。


 さて、シャラを見せしめにすると言っていた。となれば猊下もシャラも大聖堂に居るだろう。手遅(ておく)れになっていないことは〈魔力探知〉でシャラの存在を探知出来ていたから分かる。


 私は急ぎ大聖堂へ向かうべく、廊下(ろうか)を走ったのだった。


◆ひとことふたこと


アフ、というのはヘブライ語でまんま「怒り」で、実は天使の名前でもあります。

イキり散らかしていたモーセを半分飲み込んでしまった(神の介入で吐き出させられましたが)、死を司る天使の一人です。


いつだって後悔は先に立たないものです。

若人たちよ、リーファちゃんのようにならないためにもちゃんと勉強しておくのですよ(笑)


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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― 新着の感想 ―
[良い点] ベリアルさん、余程知恵が回るのか用意周到……!! 果たしてリーファちゃんは止められるのかな!?
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