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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第二章「寂しがりやの女神様」
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第八四話「諸悪の根源を見つけました」

 陛下(へいか)との会議が終わった後、私たち三人はサタナキアさんの魔道具(まどうぐ)屋「子猫たちの楽園(エデン)」を(おとず)れていた。


 しかし悪魔が楽園とは何の冗談(じょうだん)なんだろう。子猫は恐らく女性のことを()すんだろうなぁ。


「きな(くさ)い空気を感じてはおりましたが、そんなことになっていましたの」


 私の説明を聞いたサタナキアさんは、ふぅ、と小さく溜息(ためいき)()いた。内密(ないみつ)の話であるため別室に通されている。


 ちなみにシャラとサタナキアさんははじめましてではない。封印解除した後に王都へは寄っているので、サタナキアさんにも面通(めんどお)ししている。


「きな臭い空気、ですか?」

「そうですわ。ベリアルの件については知っておりましたけれども。わたくしのお店にも『ベリアルを(かくま)っていないだろうな?』と(おっしゃ)る兵士がいらっしゃいますし。失礼しちゃいますわ」

「そ、そうですか。それは確かに失礼ですね」

「ええ、男性の悪魔など匿うワケありませんのに」

「………………」


 言うと思ったよ。


「それで、サタナキアさんに魔道具を作って(もら)えんかと(うかが)った次第(しだい)なんや」

「そうですわねぇ、お話を伺った(かぎ)機構(きこう)はもの(すご)く単純なものですけれども。他の業務(ぎょうむ)御座(ござ)いますし、一日五個が限界(げんかい)でしょうか」

「それで(かま)いません、助かります」


 一日五個も作って(いただ)けるのなら十分だ。それまでベリアルが大きな行動を起こさなければいいけどねぇ。


 具体的(ぐたいてき)な魔術の術式(じゅつしき)をサタナキアさんに説明する。ベリアルの情報を指し(しめ)す重要な術式なので間違(まちが)えないよう、きちんと紙に書いた。


「一度(ため)してみましょうか。(もと)める者を指し示せ、〈探示(チェイス)〉」


 サタナキアさんが術式を展開(てんかい)すると、小さな魔力の矢が生まれる。予想通り大教会の方角(ほうがく)を――


「……リーファちゃん、これ、大教会の方を向いてないよ?」

「……そうですね」


 サマエルさんも気づいたらしい。大教会はここから南に位置(いち)している(はず)なのに、指しているのは真逆(まぎゃく)の北だ。しかも結構(けっこう)矢が(せわ)しなく()れている。


「サマちゃん、魔道具をお出し頂けます?」

「はいはい」


 サタナキアさんに言われ、サマエルさんが(ふところ)から魔道具を取り出し、魔力の矢に並べる。同じ方向でぐりぐり動いてるから、教えた魔術が間違っているワケではなさそうだ。となると……?


「……これは、近くに居ますわね。この方向、動きですともしや……」


 サタナキアさんは何かに気づいたような表情を()かべると、サマエルさんの魔道具を手に取り立ち上がり、「ついてきてくださいまし」と私たち三人に向かって手招(てまね)きした。




「毎度あり。いつもお(つか)い出来て(えら)いね、ミヒャエラちゃん」

「いえ、早く教会のお仕事に()れないといけませんし、これくらいは」


 サタナキアさんをはじめとする私たち四人は、「子猫たちの楽園」の店内をそっと(うかが)っていた。


 店内では女性店員のラーラさん(まあこの店には女性しかいないんだけど)と、右目を(おお)うように包帯(ほうたい)()いている一三歳くらいのシスターの少女が談笑(だんしょう)していた。


 少女がラーラさんにお礼を言って店を出ていったところで、サタナキアさんが「間違いありませんわね」と小さく(つぶや)いた。


「……あのシスターがベリアルですわね」


 なるほど、あの少女が、か。サタナキアさんは魔道具が指し示す方向と少女の動きを逐一(ちくいち)見ていたので、きっとそうなんだろう。


「サマエルさんの仰っていた通り、シスターに化けているようですね」

「でしょ?」


 しかしミヒャエラとは皮肉(ひにく)な名前を名乗っているものだ。名前の元となったであろう熾天使(セラフィム)のミカエル様は「神に()た者」という意味を持っていた筈。間接的に我らが主を(おとし)めているのだろう。


「あの包帯は何なんやろうな?」

「ああ、アレはアタシが負わせた手傷(てきず)だねぇ。まだ治っていないところを見ると、アタシの毒は十分に()いているみたいだね」


 え、手傷ってレベルじゃない重傷じゃないですか。しかも毒? 流石(さすが)「神の毒」という意味を持つ名前の堕天使(だてんし)だ。


「サマエルさん、いいお仕事をなさいますね……」

「でしょー? さて、ベリアルが化けた姿(すがた)は確認出来たけれども、今後もあの姿を取っているワケじゃない。魔道具は素直(すなお)に作っておいた方がいいね」


 確かに。右目に()わせた手傷が化けた姿でも治らないと分かったので次に何かに化けても同じ傷を(かか)えているのだろうけど、治ったら見分けがつかなくなるしね。


 その後サタナキアさんへ(こま)かい話を伝えた後、私たち三人は城へと(もど)ったのだった。


 途中(とちゅう)でベリアルが何か行動を起こしていないか確認したけれども、まだ大教会に居るみたい。右目が治らないと迂闊(うかつ)に動けないからだろうな。


◆ひとこと


「神の毒」という名前のサマエルですが、実はかのモーセに目潰しを食らって右目が見えなくなっています(笑)

ベリアルの右目を潰したのも、それと掛けているわけですね。

本作のサマエルも右目が隠れて居ますが、これは〈魔法の弾丸〉を繰り出す奥の手となっています。中二病バンザイ。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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