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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第二章「寂しがりやの女神様」
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第八三話「あの悪魔の所為で色々と滅茶苦茶になっているらしい」

「……それは頭の痛い問題だな」


 ブルーメでの惨状(さんじょう)を見た翌日、ベリアルの妨害(ぼうがい)も無く入城(にゅうじょう)()たした私とシャラは、謁見(えっけん)()ではなく会議室で国王陛下(へいか)にこれまでのことを報告していた。


 陛下は頬杖(ほおづえ)をつき、もう片方の手で頭を押さえて(うめ)いている。少しお()せになられたかも知れない。


「……分かった、ブルーメの件は誤報(ごほう)を流した担当者を処断(しょだん)する、ということを()れに出し、指示に(したが)った民へ補償(ほしょう)を出そう。まぁ、その担当者は架空(かくう)の者だが」


 陛下は「出費が痛いな」と言いながら近衛(このえ)兵に指示を出している。ベリアルがいつ城へ侵入(しんにゅう)するかも分からないので、陛下は城下で何かしらのルールが変更された場合はすべて自分へ報告するようにも指示を出しているらしい。お(かげ)公務(こうむ)が大きく(とどこお)っているとか。


「リーファよ、例の魔道具(まどうぐ)は残り(いく)つだ?」

(もう)(わけ)御座(ござ)いません、陛下。私がサマエルさんに再度お渡しした分と、シャラの手持ち分しか残っておりません」

「ならば女神シャラの分を、近衛兵のギュンターへ渡してもよいか? (やつ)ならば上手く立ち回ってくれるだろう」

「……そうですね、シャラと私はサマエルさんと共に行動するでしょうし……シャラもそれでいい?」

「うん、かまへんよ。では陛下、私からギュンター様にお渡ししておきます」


 流石(さすが)は人を動かす頂点に()られるお方だ。すぐにリソースを無駄(むだ)なく配置してくれるね。


 それにしてもシャラは方言を使わずに(しゃべ)れるんだな。当たり前か。


「して、サマエルはどうした?」

「私の手持ち分を使い、城下に潜伏(せんぷく)しているベリアルを探しております。すぐに(もど)ってくると――」

「たっだいまー」


 あ、元気に会議室の(とびら)を開けて入ってきた。それにしても陛下の前でもいつも通りだよなぁ。扉の内側に居た近衛兵さんがびっくりして一瞬(いっしゅん)(やり)(かま)えちゃったよ。


「お帰りなさい、サマエルさん。結果はどうでしたか?」

「アイツ、相変(あいか)わらず大教会に居るね。ま、天使には化けられないだろうから、シスターとかに化けてるんだろうけど」

「そうなのですか? 私が初めて対峙(たいじ)した時は天使の姿(すがた)をしておりましたが」


 うん、ばっちり男性の天使に化けていたよね。まあ、その時は神気(しんき)ではなく魔力を放出(ほうしゅつ)していたので天使ではないと看破(かんぱ)出来(でき)たんだけど。


「……あ、そういう意味ですか」

「うん、そういうこと」

「……()や女神シャラにも(つた)わるように話せ」


 サマエルさんの言っていることの意味に気づいて、そういうことか、と納得(なっとく)した私を陛下が(つか)れた表情で(にら)んだ。ごめんなさい。


「王様たちにも分かるように言うとね、アタシやベリアルは悪魔なので身体から神気は放出出来ないんよ。だから天使に化けても、分かる人には分かっちゃうんだな。カナフェルちゃんとか大教会に居る天使が見たらソッコーでバレる」

「はぁ、なるほどなぁ。うちは神格(しんかく)でも放出出来るんは魔力やけどなぁ」

「身体から神気を放出するのは天使だけですね」


 シャラはカナンにおわす神由来(ゆらい)の存在ではないからね。地母神(じぼしん)だし。


「と、そうです。陛下に伺っておかなければならないことが御座いました」

「何だ?」

「陛下、急ぎ許可(きょか)(いただ)きたいことが御座います。サタナキアさんのお店にて、ベリアル探知(たんち)の魔道具の作成を依頼(いらい)しても(よろ)しいでしょうか? 先ほど立ち()りましたところ、お店にいらっしゃいましたので」


 サタナキアさんのお店ならば、私の自宅みたいに魔道具を作る環境(かんきょう)(ととの)っているからね、魔道具屋だし。最初から持ち込まずにそうすれば良かったんだろうけど、まさか途中で妨害に()って川にプレゼントするとは思わなかったからなぁ。


「サタナキアか……、あの女悪魔は正直それほど信用出来る存在とは思っておらんが……」


 陛下は露骨(ろこつ)渋面(じゅうめん)()かべた。ま、まぁ、自分の欲望(よくぼう)忠実(ちゅうじつ)な姿しか陛下はご存知(ぞんじ)無いからねぇ。


「恐らく、わたくしが依頼をすれば口止(くちど)めもして頂けると思います。今はわたくしの母上に忠実ですので、裏切(うらぎ)ることは無いかと」

「……そんなことになっておったのか……、まぁ、あやつならあの悪魔も手懐(てなず)けよう」


 遠い目をして(あき)れる陛下。そう言えば陛下は昔の母さんをご存知なのだっけ。昔やんちゃしていたらしい陛下を更生(こうせい)させたって言ってたし、色々納得出来ることがあるのだろう。


「ならばサタナキアへあと一二個作るよう依頼をしてくれ。各省庁(しょうちょう)大臣(だいじん)へ渡しておきたい。毎朝完成分を持ってきて貰えると助かる、と伝えてくれ」

承知(しょうち)いたしました」

「今からひとっ飛びでアタシが(たの)んでこようか?」


 気を()かせたサマエルさんが席を立とうとしたところを、私は手で(せい)した。


「いえ、わたくしが直接お願いします。お気遣(きづか)いを頂きありがとうございます」


 一応大事なことだし、それにお願いするのは私だからね。そこは誠意(せいい)を見せておきたい。


「して、ベリアルへの対処(たいしょ)だが、天使メタトロンが急ぎこちらに向かっているとのことだ。後五日もすれば到着すると聞いておる」

「……(ほろ)ぼすのですね」

「そうだ」


 御前(ごぜん)の天使の筆頭(ひっとう)直々(じきじき)に来るということはそういうことなのだろう。まあ、サマエルさんほどの悪魔が苦戦(くせん)するベリアルの相手ともなれば御前の天使でないと出来ないだろうしね。


◆ひとこと


陛下は「ルールを変えるという話があったら逐一俺に確認しろ」というルールで、逆にベリアルの動きを封じたようです。

でもそのお陰でとんでもなく仕事が増えているようです。当たり前ですよね。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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