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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第二章「寂しがりやの女神様」
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第七〇話「何処かの誰かに化けた悪魔を探す方法はそこにある」

 ベリアルに対する考察(こうさつ)を説明しながら、夕方にはシュパン村の入口に到着(とうちゃく)することが出来た。ちなみに(ねん)(ため)二人は「約束の地(カナン)におわす主の御名(みな)において真実を~」のくだりでベリアルでは無いことを確認しておいた。一々(いちいち)これをしないとあの悪魔が()けていないと分からないのだから疑心暗鬼(ぎしんあんき)になってしまいそうだね。


「リーファちゃん!」


 と、村の入口にある畑で作業をしていたらしいシャラがこちらに気付き、()けてきた。アロイスさんが馬を()めてくれたので私も下りる。


 シャラは下馬(げば)した私に思い切り()き着いた。体力が落ちているせいか、ちょっとよろめく。


「リーファちゃん……無事で良かった……!」

「シャラ、心配をおかけしてしまい(もう)(わけ)ございません。それとわたくし、お風呂(ふろ)に入れていないのであまり抱き着くのは……」

「あほう! 何緊張感(きんちょうかん)無いこと言うてんねん!」


 はい、すみません。


「……畑、随分(ずいぶん)(ひど)有様(ありさま)になってしまいましたね」

「うん……」


 休憩(きゅうけい)小屋に向かう途中(とちゅう)にあった畑は容赦(ようしゃ)なく()()らされたせいで、結構(けっこう)被害(ひがい)になっているようだ。リリと手塩(てしお)にかけて育てていた新しい作物(さくもつ)であるトマトも、一本しか残っていない。畑はここだけではないとは言え、これでは今年の収量(しゅうりょう)にも影響(えいきょう)する。


「……イザーク様?」

「は、はい、何でしょう、聖女様」


 私は微笑(ほほえ)みながらも、有無(うむ)を言わせぬ(あつ)()けてイザークさんに(せま)る。彼は顔を引き()らせて後ずさった。逃がさんぞ。


「イザーク様の隊に踏み荒らされた分は、隊の皆様(みなさま)補填(ほてん)して頂けるのですよね?」

「な、え、そ、それは……」

「アロイス様の方を見ても駄目(だめ)です。命令を受けたとは言え、方法はあった(はず)ですよ? 畑を踏み荒らす必要があったのですか? 畑のお世話をされている方々に申し訳ないとお思いにならないのですか? 貴方(あなた)がたの普段(ふだん)のお食事が、どのようにして作られているのかお考えになったことは無いのですか?」

「…………はい、申し訳ございません。すぐに検討(けんとう)させて頂きます」


 (たた)みかけた私に何も言い返せずがっくりと項垂(うなだ)れるイザークさん。勝った。


「せ、聖女様……。流石(さすが)です……!」


 ……アロイスさんは、ちょっと(だま)っててくださいね?




 再度馬に乗せて(もら)い、私は森にある自宅へと帰り着くことが出来たのであった。四日ぶりの自宅で早々(そうそう)にお風呂へ入りたいけど、まずはアロイスさんと一緒(いっしょ)に国王陛下(へいか)への報告(ほうこく)。通信()しとは言えまさか陛下と会話することになるとは思っていなかった騎士様は終始(しゅうし)がちがちに緊張(きんちょう)していた。


 そしてアロイスさんとイザークさんが()って行った後、私はリビングで全員からお説教(せっきょう)を受けていた。アンナまでもが仁王(におう)立ちしてぷんすこ怒っている。かわいい。


「リーファちゃん、なんて無茶をするの? もしかしたら処刑されていたかも知れないのよ?」

「う……だって、あの時何とかしないと母さんが連れ去られると思って……」

「お母さんなら(つか)まりません、全員なぎ倒します」


 いや、それも駄目でしょ! 母さんは(わり)とすぐ力で解決しようとするから困るわ!


「まーでもリーファちゃんのお(かげ)でベリアルが暗躍(あんやく)していたことが分かったよねぇ。これからああいうことが度々(たびたび)起こるんだろうなー」

「そうですね。全くもって狡猾(こうかつ)な悪魔です。強大な力を持っているとはいえ、まだ正面(しょうめん)きって戦ってくれればやりやすいのですが」


 今のところ化けているベリアルを看破(かんぱ)するには神の御名を出して問いかける他に方法は無い。何か(やつ)の現在の姿(すがた)居場所(いばしょ)を特定できる何かが有ればいいんだけど。


「……ん?」

「どないしたんや、リーファちゃん」


 いや、あるな。現在の姿は()(かく)、居場所なら分かるかも知れない。


「これを……こうすれば……たぶん…………」


 私は天井を(あお)ぎ、脳内(のうない)術式(じゅつしき)構築(こうちく)した。前に少しだけ解析(かいせき)したアレを改良(かいりょう)すれば、なんとか……。


「……我が求める者を指し(しめ)せ、〈探示(チェイス)〉」


 私が術式を展開すると、指先に(あらわ)れた小さな魔力の矢が、目の前に居るアンナの方を指した。


「……んぅ~?」

「東……うん、たぶん上手くいってるかな」

「リーファちゃん、それって〈探示〉の魔術ね? もしかしてベリアルの位置を?」

「うん、そうだよ、母さん。以前シャラに使われていた魔力片(まりょくへん)仕組(しく)みから位置(いち)を追ったんだ」


 魔力の矢はアンナを指したのではない。ベリアルが居る方向を指し示しているのだ。


 以前シャラの精神に根差していた魔力片だが、私はアレを少しだけ解析していたのだ。時間が無かったためベリアルに何のメッセージを飛ばしているかなど中身の解読(かいどく)までには(いた)らなかったものの、送信先ははっきりと把握(はあく)していた。


「はぁ~、大したものやな、リーファちゃん。その魔術って他の人にも教えることは出来るんか?」

「出来るし、たぶん魔道具化すれば手軽(てがる)に見つけられるようになるけど、どこからベリアルに情報が()れるか分からない。本当に信頼(しんらい)している相手以外には渡さない方がいいだろうね」


 せっかく作った探知道具も、存在(そんざい)を知られてしまっては対策(たいさく)されるかも知れない。ある程度(ていど)の数を陛下にお渡しして裁量(さいりょう)(ゆだ)ねた方がいいだろう。


 さて、そう決まったら(いそ)いで魔道具を作らなくては。(しばら)(いそが)しくなりそうだなぁ。


◆ひとこと


処刑されていたかも知れない、と言っていますが、エーデルブルート王国では悪魔にも裁判を受ける権利があるのでそう簡単に処断はされません。

リーファちゃんだったら間違いなく途中で無罪放免でしょうね。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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