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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第一章「聖女はじめました」
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第七話「幼馴染にバレかけました」

 翌朝、僕とシャムシエルは朝食を()った後(すみ)やかに家を出立(しゅったつ)した。


 とは言っても、直接山の遺跡(いせき)に向かうのではない。「結界に異変を感じたから、まず村に行きなさい」と師匠に言われ、近くのシュパン村へ向かっているところだ。遺跡の方へは師匠が向かっている。


「そのシュパン村までは何時間かかるのだ?」

「そんなにかからないよ。二〇分程度かな? 僕もつい最近まで村にある小さな学校に通ってたんだ」


 そう言って〈刻示(ウォッチ)〉の魔術を展開し現在の時間を見る。えーと……今は七時過ぎか。もう村はそれなりに活動を始めている、(はず)だ。


「学校? 学校とはなんだ?」

「そっかー、昔は学校なんて無かったんだねぇ。えっとさ……」


 他愛(たあい)も無い会話をしながらも、村へと急ぎ足で向かう。村に近づくにつれて徐々(じょじょ)に畑や民家が見えてきたため、シャムシエルが物珍(ものめずら)しそうに(あた)りを見回している。


 しかしこれは……ちょっとおかしいね。


「シャムシエル、ちょっとだけ寄り道するよ」

「む? 何故(なぜ)だ?」


 シャムシエルの質問へ答えを返さず、通り過ぎようとした民家に近づき、戸を叩く。


「やっぱり、返事は無いか。すみませーん、レオンさん! 入りますよ!」

「リ、リーファ? 勝手に入るのは……」


 シャムシエルの制止も無視して玄関を開ける。


 そこにはやはり、外に逃げようとしたのか玄関手前で倒れている若い男性の姿があり、背後のシャムシエルが小さく息を()む音が聞こえた。


 急ぎレオンさんの(みゃく)を確かめる。……うん、息はある。けど、魔力が枯渇(こかつ)しているな。すぐにどうこうなる訳じゃないけど、何度も()われたら後遺症(こういしょう)が残るかもしれない。


「大丈夫、気を失ってるだけだ」

「これはいったい……?」


「たぶん僕たちは家の結界に守られていたか効果範囲外だったから影響を受けなかったんだろうけど、何かしらの魔力を吸い取る仕掛(しか)けが発動したんだと思う。師匠はそれに気付いたから、村を見てこいって言ったんだ」


 畑に誰も居ないから気づけたよ。この時間はレオンさんも畑仕事をしている筈だからね。


「シャムシエル、急ごうか。村が危ない」


 レオンさん宅の玄関を閉めて、僕たちはシュパン村へ向かって()け出した。




 村の広場に向かったけれども、そこは不気味(ぶきみ)なほどに静まり返っていた。力を()われた小鳥が地に落ちているので、ここも影響を受けているんだろう。


「これは……くそっ、かなり大()かりな仕掛(しか)けの(はず)だ。僕は()(かく)、師匠にも気づかれずに仕掛けたなんて……」

「この規模(きぼ)から(さっ)するに、犯行に(およ)んだ人物はあの(おさな)い魔族一人では無いな。それも相手は手練(てだ)れの魔術師だろう」


 気付かれずに魔術を仕掛けるには、かなり高い隠蔽(いんぺい)技術が必要になる筈だ。恐らく相手はそういったことに特化(とっか)した魔術師なんだろう。あの時ルピアの拘束(こうそく)()いたのもこの魔術師だろうか。


 見つけるのに五分もかかってしまったが、広場に仕掛けの一つがあった。焼け石に水かも知れないけど、再使用されないようにシャムシエルの神術(しんじゅつ)で仕掛けを封印する。その間に僕は仕掛けで吸い取った魔力を送っている大元の探知を行うことにした。


「う……うぅ……、そこの人、無事なんですか……?」


 〈魔力解析(マナアナライズ)〉の術式(じゅつしき)を展開しようとしたところで、聞き覚えのある声が背後から投げかけられ、振り向く。そこには(かた)まであるプラチナブロンドとターコイズブルーの瞳を持つ大人しそうなハーフエルフの女の子が、民家の(かべ)(ささ)えにして立っていた。


「リリ!」

「え……? どちら様ですか……?」


 幼馴染(おさななじみ)のリリは、顔面蒼白(そうはく)になりながらも名前を知っている僕の顔を思い出そうとして首を(かし)げていた。魔力を吸われて記憶障害になっちゃったのか? とか一瞬思ったけど、そう言えば僕、以前とはかけ離れた姿になってたんだった。


「えぇっと、僕のことは後で説明するけど、君は動けるの?」

「は、はい……、私とお母さんは、何とか……。他のみんなは倒れちゃってます……、一体何が……?」


 そうか、ハーフエルフであるリリとエルフであるリリのお母さんは人間より魔力量が高いから、力を吸い取られた後でもすぐに回復して動けるようにはなったのか。


「リーファ、仕掛けの封印は終わった。……その子は?」

「え、リーファ……?」


 シャムシエルさん、今それは余計(よけい)な一言でした。記憶にある僕と目の前の同名の僕とで姿が一致(いっち)せずにリリが混乱してるよ。


「き、君は取り()えず家まで送るから、家で休んでいてほしい。魔力を吸われただけだからみんな生きてはいるし、一先(ひとま)ずは身体を休めてね?」

「は、はい、わかりました……」

「シャムシエル、この子を家まで送ってあげて。僕は探知を続けるから!」

「え? あ、あぁ、分かった」


 狼狽(ろうばい)している僕に困惑しているようだったけど、シャムシエルは指示に従いリリに肩を貸して彼女の家の方へと向かって行った。あ、危なかった。弱ってるリリに余計な心労(しんろう)を掛けるところだった。


 僕は再度仕掛けに向かって〈魔力解析〉の術式を展開する。シャムシエルが封印したのは仕掛けを発動する部分なので、力を吸い取る部分から流れを追うことは可能だ。


 糸のような(くだ)のような術式のルートを辿(たど)る。流れは……やはり山の方へと向かっている。近づくにつれて他の術式からの経路(けいろ)も集まっているのを感じるし、これはビンゴだろう。


「仕掛けの術式を破壊するのはやめておこう。魔術返しみたいなものがあるかも知れないし、慎重(しんちょう)()して師匠と一緒に調べてからだ」


 シャムシエルが戻ってから、僕たちは急ぎ山の中腹(ちゅうふく)にある古代遺跡(いせき)へと向かった。


◆ひとこと


はい、出てきましたエルフ(ハーフですけど)。

この世界では天使からエルフも過去に悪魔扱いされていました。

なんでかって? 天使と人間を作った神様が作った存在じゃないから。

いわゆる異端の存在って奴ですね。


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次回は明日20時半頃に更新予定です!

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