第六七話「それって、そういうこと?」
シャラと二人で自室に戻り、替えのパジャマに着替える。窓の外は明るいけれども、今なら眠れる気がする。
「な、なぁ、リーファちゃん」
「うん?」
寝ようとしたところで声が掛かったので振り向くと、何やら緊張した様子のシャラがこっちを向いておずおずと白銀色の髪を弄っている。どうしたんだろう。
「あ、あんな? お風呂で言ったこと、覚えとるか?」
「お風呂で……?」
ど、どのことだろう。あの時は色々と必死だったからなぁ、色々と。
私が思考を巡らせていると、「あーもう!」と言いながらずいっと眼前に顔を寄せてきた。う、顔が近い。
「うちが、リーファちゃんを大好きってことや!」
「あ…………」
そうだった、シャラがその気持ちを本当か分からないから、私は彼女に掛けられた魔術をいち早く解こうと思ったんだっけ。
「そ、そいでな!」
「は、はい」
「やっぱりこの気持ちは本物やったんや!」
………………。
えーと、これってつまり…………。
「な、なんや、そんなとぼけた顔しよって。うちが一世一代の告白してるのに!」
「あ、いや、その、ごめん」
「ごめん!?」
「そ、そうじゃなくって!」
あ、危ない危ない。迂闊な言葉は死を招くぞリーファ。
一度呼吸を落ち着かせてから、私はしっかりとシャラを見据える。
「……ねぇ、シャラ。今の私は女性なんだよ?」
「か、かまへん!」
「いつか男性に戻ろうと思ってるんだよ?」
「それでもええんや! 女性とか男性とか関係ない! うちはリーファちゃんが好きなんや!」
……女神様に求愛されるなんて思ってもみなかったよ。
それにしても、なんという真っ直ぐな想いだろうか。私もこの想いに答えないといけない。
「シャラ、私は――んむっ」
唇を唇で塞がれた。
すぐにシャラの顔は離れたものの、悪戯っぽい笑みを浮かべたその表情に、私の心臓は高鳴る。
「すぐに答えて貰わんでもええねん。しっかり考えて、それで答えをくれたら、うちは嬉しい」
そう言い残し、シャラは私から背を向けるようにさっさと自分のベッドへ潜り込んでしまった。
うぅ、すぐに眠れるような気がしてたけど、これは眠れないかもなぁ……。
そんな思いを胸に、内心嘆息しながら私も自分のベッドに潜り込んだのだった。
夕方、帰って来たサマエルさんに「全部リビングまで聞こえてたよー」と言われ、私とシャラは羞恥に崩れ落ちてしまったのだった。
そしていつも通りシャムシエルはよだれを垂らしていた。なんなんだ一体。
◆ひとこと
短くてスミマセン。
アナスタシア邸は各部屋にドアがついていますが、防音装置などある訳無く。
家族全員に聞こえていたようです。合掌。
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次回は明日21時半頃に更新予定です!