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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第二章「寂しがりやの女神様」
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第六四話「見ることに慣れてしまったけど見られるのはご勘弁」

 私は急ぎ近くの兵士の(みな)さんを起こし、その中でも封印の事情についてご存知(ぞんじ)のお(えら)いさんに経緯(けいい)を話して、自宅へ(もど)ってからリビングの魔道具で王都ヘルマーへ連絡を取った。


「……なるほど、事情は分かった、リーファよ。カナン神国(しんこく)へも至急(しきゅう)こちらから連絡をしておく」

「よろしくお願いいたします、陛下(へいか)。封印を()かせてしまったこと、(まこと)(もう)(わけ)ございません」

仕方(しかた)あるまい。ベリアルと言えば狡猾(こうかつ)を絵に()いたような存在(そんざい)と聞いておる。我々が想像(そうぞう)もしないような手段を()ってくることが想定できていなかったことに原因がある」


 国王陛下はまだ明け方という時間だというのに、すぐに通信に出て頂けた。メタトロン様があれほど警戒(けいかい)していた相手だということだし、陛下もこれは重大なことだと判断されたのだろう。


「して、女神シャラは?」

「はい、陛下。ここに()ります。迂闊(うかつ)にも(あやつ)られてしまったこと、何とお()びをすれば良いか……」


 シャラは下山途中(とちゅう)に目を()ましたけど、自分が山で何をしていたかまるっきり(おぼ)えていないようだった。いつもの明るい表情も、今は(しず)んでしまっている。


「それはよい。リーファよ、女神シャラがこれ以上操られぬよう奇跡で浄化(じょうか)など出来ぬか?」

「……はい、調べてみます。わたくしもこのまま彼女がベリアルに良い様に操られるのは我慢(がまん)なりませんので」

「うむ、(たの)んだぞ。では、追って対応を連絡する」

「はい、よろしくお願いいたします」


 私は通信を切ると、小さく嘆息(たんそく)した。最近はのんびりできていたと思っていたけれども、思わぬ大きなトラブルが舞い込んできたものだ。


「……ごめんな、リーファちゃん」

「え? ……わっ! シャラ!?」


 シャラはぽろぽろと涙を(こぼ)していた。聞くまでも無く、自責(じせき)の念に()られているのだろう。


「うち……うち、二度もリーファちゃんを危険な目に()わせてしもた……」


 一度目はシャラが封印されていたライヒェ荒野(こうや)でのことだろう。この優しい女神様は他人が傷つくのが我慢ならないのは一緒(いっしょ)()らしていてなんとなく分かってきている。それを自分が知らぬ間にやってしまっていたのだから涙を流してしまうのも(うなず)けるというものだ。


 私はそっとシャラを()()め、嗚咽(おえつ)()らす彼女が落ち着くまで待ってあげた。


 太陽はすっかり昇り、窓から朝の光が差し込む。寝不足だけど、今日はまだやる事がありそうだなぁ。


「あれ~? リーファちゃんとシャラちゃんがよろしくやってる? 二人とも泥だらけで抱き合ってどうしたの?」

「と、(とうと)い……」

「……え?」


 気付けば、起きてきたサマエルさんとシャムシエルがこちらを(のぞ)いていた。シャムシエル、だからとうといって何なの。それとよだれを()らすな。




 サマエルさんたちに事情を話そうとしたのだけれども、「取り()えず先にお風呂(ふろ)へ入ってきなさい」と言われてしまい、シャラと二人脱衣(だつい)場で服を()いでいるのであった。


 しかし、シャラの精神操作(そうさ)か……精神操作系の魔術は苦手(にがて)だけど、そうも言ってられない。これ以上家族であるシャラがベリアルに好き放題(ほうだい)やられるなど我慢ならない。どうしたものか……、母さんに相談してみようかな?


「あ、あの、リーファちゃん? それ……」

「え? ……わぁっ!?」


 考え事をしながら下着を脱いだところで、顔を(かく)しながら私の股間(こかん)を指さしたシャラの様子でやっと気づき、(あわ)ててしゃがむ。ま、またついてる!? そうか! さっきシャラに神気(しんき)を分け与えたから聖女の身体を(たも)てなくなってるのかーっ!


「リ、リーファちゃん、どないして……その……そこが男の子に戻っとるんや……?」

「あ、あはは……、力を使いすぎるとこうなっちゃうんだ……。ごめん、シャラ。先に入ってていいよ。私はここで待ってるから」


 慌てて私は服に手を()けるけれども、シャラは一糸(いっし)(まと)わぬ姿(すがた)で、その手をそっと(つか)んだ。


「え、ええよ? 一緒に入ろ?」

「え、でも……」

「ええんや、……うちを一人にせんといて……」

「あ…………」


 小さく(ふる)え、(くちびる)をわななかせるシャラ。


 そうか、シャラは操られるのが(こわ)くて、一人にはなりたくないのか。


「……わかったよ。でも、あんまり見ないでね?」

「あほう、それはこっちの台詞(せりふ)や」


 少し元気が出た様子(ようす)のシャラは、悪戯(いたずら)っぽく(した)を出したのだった。


◆ひとこと


お風呂シーン多いな!(笑)

まあTSモノのお約束、みたいなものということで。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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