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僕を聖女と呼ばないで!  作者: 水無月
第二章「寂しがりやの女神様」
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第五七話「だからそういう大事なことはちゃんと教えてよ!」

「うちを助けてくれたんはあんさんですか? おおきに、ありがとう」


 シャラさんは先程(さきほど)までの(いきお)いは何処(どこ)へやら、特徴的(とくちょうてき)(しゃべ)り方で静々(しずしず)と私に頭を下げた。なんとも悪魔さんらしくない悪魔さんである。いや、天使たちが異端(いたん)だから悪魔として(あつか)っていただけで、正体は地母神(じぼしん)なのか。


「いえ、お気になさらないでください。貴女(あなた)無事(ぶじ)でよかったです、シャラ様。わたくしはリーファ。このエーデルブルート王国にて聖女として(みと)められている者です。どうぞよしなに」

「まぁ……こないに可愛らしい子に助けられて、うち幸せもんやわぁ。うちのことは様付けなんてせんでもええってばぁ」


 きゃあきゃあと両(ほほ)に手を当てて(よろこ)ぶシャラさん。な、なんか女の子に好意的(こういてき)なあたりサタナキアさんの時を思い出すけど、いきなりキスしてくるような方じゃなくてよかったよう。


「シャラ、(あらた)めて謝罪(しゃざい)させてくれ。あん時ぁお前を封印しちまって済まなかった。俺たちにとっては異端とは言え、今ではお前たちのような優しい地母神を封印したことが間違(まちが)っていたと思っている」

「メタトロン……。ええねん、昔には昔の価値観(かちかん)があったんやさかい、うちは気にしてへんて」


 わー、ホントに温和(おんわ)な地母神様だよ。三〇〇〇年以上も封印されていたというのに当事者のメタトロン様に対してもニコニコ笑ってる。(うつわ)が大きいというかなんというか。


「せやけど……もうあの頃の町は()ぅなってもうたんやなぁ。最後にお別れ言えんかったんは、えらいさみしいこっちゃなぁ……」

「シャラ……」


 聞けば、シャラさんは当時ここに住んでいた人たちのために、()れ地に畑を作ったり井戸を()ったりと尽力(じんりょく)していた、地域に根付(ねづ)いた地母神様だったらしい。


 しかし、次第(しだい)近辺(きんぺん)の人々までもがシャラさんを(あが)めるようになってしまい、異端として天使たちに目を付けられ封印されてしまったんだとか。


「ここにおった人たちは、何処に行ってしもたんやろなぁ……」

「……三〇〇〇年以上も()っているんだ。その子孫(しそん)は何処にだっているだろうさ」

「……そうやな……きっと……、そうやろな……」


 町のあった方角(ほうがく)(なが)めながら、シャラさんが(つぶや)く。突然仲良くしていた人間と別れなければならなかった彼女の心の内を思い知ることなど、私には出来ない。


「……さて、辛気臭(しんきくさ)いのは終わりや! うちを封印から目覚めさせた経緯(けいい)とか聞かなあかんさかい!」

「そうですね……、サマエルさん、〈知恵の実(アーダムスアプフェル)〉を使って頂けますか?」

「はいはいリーファちゃん、いいよー」


 サマエルさん独自(どくじ)の魔術〈知恵の実〉により(つく)り出されたリンゴを食べると、その周辺環境(かんきょう)の一般常識(じょうしき)や言語を(おぼ)えられるというとんでもない力を持っている。


 以前この魔術を教わろうとしたのだけれども、術式(じゅつしき)複雑(ふくざつ)すぎることとかなりの魔力を必要とするため、私にも師匠にも習得は出来なかった。魔力量は生来(せいらい)のものとは言え、あの術式を発明し、そして暗記(あんき)構築(こうちく)出来るサマエルさんははっきり言ってとんでもない。


「なんやの? この実を食べればええの?」

「そそ、シャラちゃん。それ食べたらあっちの人間たちの言葉も分かるようになるからね」

「はぁー、便利(べんり)なものがあるんやなぁ」


 早速(さっそく)サマエルさんが()れ馴れしく「シャラちゃん」とか呼んでいる。流石(さすが)のコミュニケーションスキルである。


 シャラさんがリンゴを食べ終わったところで、私たちは「町の(あと)へ行ってみたい」という彼女の言葉に(したが)い、道すがらに今までの経緯を説明した。


「なるほどなー、うちやサマエルさんが『(けもの)』っちゅう魔王の封印に使われとった、と」

「で、その『獣』を無事神の御許(みもと)へと送り返したのがリーファちゃんなのさ」


 何故(なぜ)(ほこ)らしげに(むね)()らすサマエルさん。まぁいいんだけど。


「はい。そして、最早(もはや)封印自体が意味を()さなくなりましたので、シャラさんの封印も解除してしまいましょう、ということになりました」

「そうなんやぁ……。ちゅうことは、もう一人も?」

「……いや、残る一人のベリアルは封印解除させないつもりだ」


 あ、やっぱりメタトロン様はベリアルを封じたままにしておくつもりなのか。


「なんで?」

「シャラは温和な性格だから良いんだがな……、ベリアルはそうもいかん。狡猾(こうかつ)で、害しか無い存在だ」

「そうなんや……」


 メタトロン様の説明にもシャラさんはあまり納得(なっとく)していない様子だった。自分も封印されていたということもあるけれど、もともと優しい性格だからなんだろう。


「ところで、シャラさん。封印中に何者かから接触(せっしょく)を受けた覚えはおありですか?」

「封印中に? どういうこと? リーファちゃん」

「シャラさんを先程まで(みだ)していた魔力片(まりょくへん)ですが、封印前に仕掛(しか)けられたとは思えないのです」


 あの魔力片はちょっと調べた限り即効性(そっこうせい)のものだった。だからもし封印前に仕掛けられていたとしたら、封印時にも先程のように我を忘れていた(はず)で、メタトロン様が気付かない(わけ)が無い。だから、封印中に接触されたとしか考えられないのだ。


「そやなぁ……、確かに封印中、誰かの声が聞こえたような気ぃするわ」


 やっぱりか。


 しかし、封印は神の奇跡で行われている。どうやって彼女に接触したというのか。


「……まさか、わたくしの他にも、神の奇跡を行使(こうし)出来る存在が?」

「もし神の奇跡を悪用している存在が居るとなると厄介(やっかい)ですね。早急に全能天使(パワーズ)以上でシャムシエルと同じような勇者化、聖女化の奇跡を行使した者を洗い出させましょう」

「……お願いします、ラグエル様。そこから現代に生存している者を洗い出せば、ある程度は(しぼ)れる筈です」


 ……ん? ということは、私以外にも居るってことか、天使経由で神に力を(さず)けられた存在が。でもかなり私のような存在はレアケースなんだろうなぁ。


「……よく考えましたら、そのような存在が見つかったとしても生存しているとは(かぎ)りませんね。わたくしのようなケースは(まれ)でしょうし、偶然(ぐうぜん)同じ時代に生きていらっしゃるとはあまり思えません」

「そんなことは無いと思うぞ、リーファ。神の純粋(じゅんすい)神気(しんき)に当てられれば、ある程度(ていど)寿命(じゅみょう)が延びるだろうからな」



 ………………。


 え? なんかとんでもないこと言ってるぞ、このポンコツ天使。初耳だよ。



「あ、あの……、シャムシエル? わたくしはもしかすると、奇跡を行使し続ける限りは永遠に生き続けるのでしょうか?」

「不死ではないしゆっくりと()いもするので永遠ということは無いが、今のペースで行使を続ければエルフより長命(ちょうめい)になるかも知れんな」



 ………………。


 えぇ…………、なんでそんな大事なこと(だま)ってたんだよう……。


◆ひとことふたこと


作者は生まれも育ちも関東なので大阪弁を調べるのに苦労しております(笑)


この世界のエルフは千年単位で生きます。

リーファちゃんの未来はいずこ。

ちなみにルシファーくんのお妃様もエルフです。

なのでサマエルが後妻になれる可能性は絶望的です。合掌。


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次回は明日21時半頃に更新予定です!

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